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2018 J3第20節 ガイナーレ鳥取vsアスルクラロ沼津【2つの修正点】

はじめに

今回はアスルクラロ沼津戦を観戦して気になった以下2つの要点に着目し、レビューを行う。

1. ロングボールの有効性と使いどころ
2. ビルドアップにおける3バックの広がり幅

各チームのメンバーは以下の通り。鳥取は[3-4-2-1 (3-4-3)]、沼津は[4-4-2]のフォーメーション。

1. ロングボールの有効性と使いどころ

ロングボールはカウンター、サイドチェンジ、ポスト役への配球、後方のスペースの利用などを目的として使用される。

筆者は当初、相手のDFライン後方のスペースを利用する、またDFラインを後退させる目的で、鳥取が最終ラインからのロングボールを多用しているように感じていた。しかし、最近試合を観戦する毎に実はそうではない可能性を感じたのだ。

沼津戦で終始気になっていたのが甲斐のロングボール。まずは以下の図をご覧いただきたい。

この図は、ともに最終ラインの甲斐からトップのレオナルドへロングボールを蹴る瞬間を切り取ったもの。両図でどこが問題かといわれれば、この状況で中央へのロングボールを選択した甲斐の判断にある。

なぜなら、この場面において沼津はブロックを築き、自陣に引いて守っている。よって前線はスペースが狭く高精度な浮き球を配球しなければこぼれ球を相手に回収されやすい。そして、沼津の守備ブロックに対し、鳥取はパスをつないで前進するため前線に多くの選手を配置している。したがって、このような状況で簡単にボールを失うとカウンターを受けるリスクが増大する。

また第二に、ターゲットになっているレオナルドは浮き球の競り合いで反則級に競り勝てるタイプではない。よって、今のシステムでは前線に直接浮き球のロングボールが収まる可能性は低い。

現状、同様な形で供給されたロングボールの成功率は手元の集計で1/5であり、少なくとも今節だけで4回は攻撃機会を失った。よって、今のチーム事情からすると甲斐からレオへのロングボールは有効性が低いどころか相手の対応を楽にさせてしまっていると言える。

では、甲斐の右足に使いどころはないのか? そのヒントが隠された場面がこちら。

最終ラインの甲斐から、空いていた沼津右SB脇のスペースにポジションを取った左WB魚里へ直接ボールが渡った。このプレーが直後の西山の同点ゴールに繋がる。

甲斐の強みは、インステップで低い弾道の速いロングボールを蹴られるキック力。つまり、相手が守備ブロックを中央に絞った場面で左右の空いたスペースへ一気にボールを供給する。または、片方のサイドに相手の守備ブロックを寄せ、一気に逆サイドのスペースへサイドチェンジする。本来はこのような場面で彼のキック力を活かさなければならない。

したがって、今後の甲斐には、収まる可能性の低い中央へのロングボールを控えてもらうこと。その代わり、空きやすい左右のスペースやWBへ直接供給する場面で自身のロングボールを活かすことが強く要求される。

また、最初に紹介した2つのロングボールの場面では、プレーの選択肢によっては得点機会を作り出せた可能性があった。甲斐に関してはボールを扱う技術は比較的優れているため、ロングボールのキックフェイントからグラウンダーの縦パスを通すなど、技術を逆手に取れる認知力・判断力を兼ね備えた選手になれればさらに飛躍できると感じた。

2. ビルドアップにおける3バックの開き幅

次に、3バックの開き幅について以下の疑問を抱いていた。

印象的だったのは次の場面。

この場面では、ボール保持者の井上黎が大外レーンに位置していたため、サイドへのパスに角度が付かずWBの魚里が半身の体勢を取れない。その結果、背後から右SB尾崎のプレスをもろに受けてしまい、ボールを前進させることができなかった。また、直後に狭いエリアでバックドアを狙うもファウルを取られ相手ボールになってしまった。これは悪い例。

一方、左右CBの振る舞いの良い例を挙げる。ちょうど[3-4-3]vs[4-4-2]の教材がTLに流れてきたのでご紹介。羊さんが提示されている映像は、J2第30節の千葉vs東京Vにおいて東京Vが最後方からのビルドアップから同点ゴールを決めた場面である。

[4-4-2]の千葉に対し、[3-4-3]の東京Vは左右のCBが千葉SH手前までドリブルで前進し正対。ボール保持者の左CBはSHの対応を見てWBに渡すプレーを選択した。(※のちほど確認したところ、実際は[4-2-3-1(守備時: 4-4-2)]の千葉、[4-3-3]の東京Vとのこと。千葉のアリバイ守備には目をつむりつつ、基本的な運び方は同じなのでこのまま話を進めます)

この時、ボール周辺の状況とパスを受けるWBの身体の向きにご注目。CBがSHと正対しハーフスペース上でボールを運ぶことでSHをピッチ中央寄りにピン止めしていることがお分かりいただけるであろう。この結果、大外レーンに位置する左WBはフリーかつ半身の状態で前方を向きながらボールを受けることができ、直後の展開から同点ゴールへ繋げた。

鳥取の左右CBにも、対[4-4-2]ではここで紹介したビルドアップ方法が最低限要求されるのではないだろうか。須藤監督が別の意図を持ってそうさせているのであれば話は別ですが、鳥取の場合は[3-4-3]の利点を最大限に生かせる形になっていないので疑問に感じた次第。

まとめ

以上をまとめると、次の結論が得られる。

1. 甲斐はロングボールの正しい使いどころを今一度理解すること
2. ビルドアップ時、3バックの幅はペナ幅程度に抑え[4-4-2]を攻略

実際の試合ではいくつか修正点がありながらも、多くの決定機を創り出せている。まずは以上2つの要点を修正し、さらにチーム状態が向上していくことを期待したいです。