紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫) (日本語) 文庫
佐藤優さんのイギリス留学時代を描いたもの。自伝的小説。
佐藤さんは、外務省に入省後、ロシア語を学ぶために、イギリスの陸軍関連の語学学校に留学している。なぜロシア語を学ぶのにイギリスに行ったのかと言うと、当時は冷戦下だったので、ロシアに留学すると身になるような教育を施してくれなかったのだ。
彼はイギリスでホストファミリーの家に下宿し、ロシア語の学習を行う。
この物語の中でイギリス的であると感じたのがホストファミリーの話である。ホストファミリーは中産階級の下の方で、両親ともに大学に行っていない。
ファミリーにはグレン君という子供がいるが、佐藤さんとの会話を読む限りでは優秀で大学に行ける能力があると思う。しかし、家族や友人の影響で大学進学に非常に悩んでいる。
佐藤氏に相談を何度かするが、結局大学には進学していない。
イギリスという国はSocial mobilityが低く、そうであるが故に国としての勢いを失ってしまった、と感じた。
また、佐藤さんはノンキャリ採用であるが、同じくイギリスに留学しているキャリア官僚である武藤さんから何度となく忠告(友達としてのアドバイス)を受けている。当時の佐藤さんからすれば、聞き流していたアドバイスかもしれないが、武藤氏の指摘しているポイントは官僚機構で成功するには必要なポイントばかりだった。
人情的には佐藤氏のパーソナリティーが好きであるが、組織というものはやはりそういうものなのだろう。非常に残酷ではあるけれど。
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