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瀬島龍三日本の証言: 新・平成日本のよふけスペシャル 単行本 – 2003/2/1

僕が中学生か高校生くらいの頃に、笑福亭鶴瓶さんとウッチャンナンチャンの南原清隆さんが司会を務めていた番組があった。時代は、90年代後半か2000年代前半だったと思う。

番組の名前は、「平成日本の夜ふけ」だったと思う。

野中広務さんや佐々敦之さん、後藤田正晴さんがTVに出られて、二人からのインタビューに答えていた。これらの例からも分かるように、いわゆるバラエティーには通常出ない大物がTVに出演しており、屈託なく二人の答えているので、非常に興味深く、視聴率も良かったと思う。

中央線

その中でも、ひと際目立っており、記憶にも残ったのが、この本にもなった男、瀬島龍三である。

人呼んで、昭和の参謀。

戦前は大本営の作戦畑で戦争の作戦立案を行い、戦後はシベリアで11年間もの重労働を行った。シベリアから帰還後、当時はまだ小さかった伊藤忠商事に入社し、副社長、最後には会長まで上り詰めた。(なぜか社長にはなられていない)

伊藤忠引退後の80年代は中曽根首相の下で、国鉄、電電公社、日本専売公社を民営化し、増税なき財政再建のために、国へのアドバイスを行った。

「どんだけすごいの、この人?!」と思わずにはいられない。

普通の人だったら、大本営参謀だけでもすごいし、シベリアから帰還しただけでもすごいし、伊藤忠で偉くなっただけでもすごいし、政権にアドバイスして日本を改革しただけでもすごい。それが全てを成し遂げているというのだから、本当にすごいと思う。

中でも面白かったエピソードを三つほど書き記す。

①日の出はヤマガタ
真珠湾攻撃の作戦命令である、陸軍の暗号「日の出はヤマガタ」を考案した。内閣の偉い方から、本土決戦をすべきか否か問われ、続けるべきでない、と回答し、終戦に一定程度の役割を果たした。

戦争時はいわゆる大本営参謀参謀の若手であり、会社でいう係長クラスだったと思う。瀬島さんが戦争のすべてに関わったような批評があるけれど、それは当たらないと思う。

渋谷駅周辺

②中東戦争の短期終結を予想
アラブ側有利で、長期決戦にもなると思われた第三次中東戦争だが、瀬島さんは短期で終了することを予想して、しっかりと当てている。もちろん、商社はトレーディング部門を持っているので、大きな利益を伊藤忠にもたらした。

③目刺しの土光さん
臨調の参謀として、政治との調整や、マスコミ対策を一挙に請け負った。日本人は昔から偉い人が清貧に頑張るところが好きという特性に目をつけて、NHKに取材させ、「目刺しの土光さん」として売り出す。

国鉄と公社の民営化の際は、田中角栄の力も借り、黒字の電電公社をNTTとして民営化させた。また、屋山太郎さんに国鉄労組批判の記事を書かせ、マスコミキャンペーンを張り、国鉄も分割して民営化した。

瀬島さんは、陸大トップ、天皇から恩賜の銀等をもらった等の話ばかりが際立っているが、とにかく人の意図を組むのがうまい人だと思う。それに話が理路整然として、コミュニケーションの達人だと思う。

最後に瀬島さんが本文を守れと説かれているが、これは本当に守っていかなければならない言葉だと思う。
今の役割(本分)を徹底的に果たすことによって、見えてくるものがあると思う。



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