Community-led Growth:コミュニティがテック企業の成長に不可欠なワケ
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Community-led Growth:コミュニティがテック企業の成長に不可欠なワケ


Community / kəmjúːnəti [名] 
The condition of sharing or having certain attitudes and interests in common (共通した考え方や利害を持っている/共有している状態)
                         — Oxford dictionary


スタートアップ界隈の方であれば、昨今Marketing/Sales-led Growthに代わるコンセプトである、Product-led Growth(PLG)について耳にしたことがある人は多いでしょう。

PLGとは、プロダクト自体を顧客獲得の主軸として位置づけ、ユーザーに見つけてもらい、導入してもあり、使ってもらうというGTM戦略のことです。PLGの概要について知りたい方はこちらをご参照ください↓

一方で、PLGだけでは、プロダクトの認知向上や利用促進に関しては弱く、プロダクトを選択からオンボード、活用までのプロセスをユーザーによるセルフサーブで完結するのは厳しいです。人々は生まれながらにしてアドバイス欲しがる生き物であり、プロダクトを探す前から判断のためのインプットを求めるからです。

我々は友人や同僚、インターネット上の他人といった周りのコミュニティから何を食べるべきか、どのような服を着るべきか、どこに住むべきかについて常にインプットを得ています。ソフトウェアを買うことについても同じことが当てはまります。

Community-Led Growthについての概要や実現するための施策についてまとめてみました。

<ざっくりまとめ>
● Community-led Growth(CLG)とは、企業がユーザー同士の交流を積極的にサポートし、プロダクトの枠を超えてコミュニティという価値を提供することで事業を成長させるGTM戦略。
● コロナの影響やソフトウェアの細分化・均質化といった時代の流れの中で、企業はユーザーを引きつけるために、意図的にコミュニティをブランド構築の主軸と捉えるように。
● コミュニティは顧客のリテンションだけでなく、顧客獲得チャネル、プロダクトへのフィードバックメカニズムなどにも効く。
● CLGを実現するには、ユースケースを学ぶなどの共通の目的を持つユーザーたちが繋がれる「プラクティスのコミュニティ」を創れるかがカギ。


Community-led Growthとは?

Community-Led Growthは、企業がユーザー同士の交流を積極的にサポートし、プロダクトの枠を超えてコミュニティという価値を提供することで事業を成長させるGo-to-Market戦略です。

そして、これらのユーザーは企業に代わって営業をしてくれる(いわゆるチャンピオン)ようになり、コミュニティをさらに強化するフライウィールを生み出すことになるのです。

このCLGのコンセプトは、エンドユーザーが決裁者となっている今の時代の流れを汲むもので、PLGとも非常に相性が良いです。

Community-led Growthは新しい考え方なのか?

結論から言うと、コミュニティを重要視すること自体は新しい考え方ではないと思います。

古くはロータリークラブ、宗教団体のように、コミュニティは常に何らかの形で存在していました。Peloton社CEOのJohn Foley氏は、「日曜の朝に教会に行くような体験が、未だに私たちには必要だと信じている」と以下のYouTubeで話しています。

今日だと、Appleは製品の発表イベントや手の行き届いたサポートフォーラムによって、カルト的なフォロワーたちを熱狂させ、Salesforceはまるで音楽フェスかのようなDreamforceカンファレンスを数十万人の参加者を集めて毎年開催し、GitHubは開発者同士のコードの開放を可能にし、アイデアや発見があるコミュニティを形成しています。

一方で変わったのは、企業が人々を引きつけるために、意図的にコミュニティをブランド構築の主軸と捉えるようになったこと。コミュニティに投資し、ユーザーがブランドとだけではなく、ユーザー同士で交流することを促進するようになっています。

企業がここまで重きを置くようになったのは、なぜなのでしょうか?

なぜ今コミュニティなのか?

教会だけでなく、会社や学校なども、地域の人々を繋ぐ強い触媒として機能してきましたが、そういった伝統的な「場」との関係性は近年薄れてきています。

しかし、共通の関心事や目的のために人と繋がりたいという欲求は、人間の心に常に存在します。コロナによって隔離を強いられたこの1年は、私たちの集団的なつながりへの渇望をさらに強めたのは間違いないでしょう。

また、現在ソフトウェアの世界はかつてないほど細分化されてきており、似たり寄ったりの機能を提供するツールが数えきれないほどあります。ユーザーは選択肢の多さに辟易し、情報収集や意思決定のコストを下げるために友人や仲間、インフルエンサーを頼りに情報を手に入れようとするようになっています。

従来のコンテンツマーケや広告などのリード獲得手法が飽和状態であるのも相まって、ソフトウェアの細分化・均質化やコロナといった時代の大きな流れは、多くの企業がコミュニティの力に注目する要因となっています。

どのテック企業もCommunity-Led Growthを考えるべき理由

“Come for the tool, stay for the network”
「ツールのために来て、ネットワークのために居続ける」

これは2015年に a16zのパートナーである Chris Dixon が提唱したGTM戦略で、ソフトウェア企業が役に立つプロダクトを提供することでユーザーを獲得し、ネットワーク≒コミュニティを提供することでユーザーを維持することができるという考え方です。

Instagramを例にとると、レトロフィルターのために来た後は、ソーシャルの交流のために使い続ける、というのはイメージが湧きやすいかと思います。

時は流れて2021年、Chris Dixonの名言は以下のようにアップデートされました。

“Come for the community and tool, stay for the community and tool”
「コミュニティとツールのために来て、コミュニティとツールのために居続ける」

今日の企業は、コミュニティはカスタマージャーニーの後半のみに活用範囲を制限するにはあまりにも強力な武器であることに気づき始めています。

コミュニティを前面に打ち出せば、単なるリテンション施策だけではなく、顧客獲得チャネル、プロダクトへのフィードバックメカニズム、ブランド差別化にも効く可能性があります。それぞれ見ていきましょう。

① 顧客獲得:ユーザー主導のオーガニック成長

コミュニティの成長は、事業のTOFU(Top of the funnel=流入ファネルの最上層)に加わるオーガニックチャネルになります。コミュニティの成熟に伴って、獲得コストが実質的にゼロになるケースもあるでしょう。

以前書いた記事を書いたNotionでは、熱量が高いユーザーがコミュニティを形成しており、地域ごとの「アンバサダー」として選ばれ、より現場に近いマーケティングチームのような役割を果たしています。

このようにユーザーがプリセールスとして動いてくれることで、営業チームはエンゲージメントの高い潜在顧客のパイプラインを手に入れられます。

② 継続率:オンボードからカスタマーサクセスまで

コミュニティのメンバーは、ネットワークのノード数が増えるほど新しい知見を得るチャンスが増え、より高い価値を感じるようになります。ユーザー同士がサポートし合うことで、顧客をオンボードして、継続してもらうためのカスタマーサクセス機能への依存度も下げることができます。

また、知見を共有できる仲間のネットワークを捨てるのはユーザーにとって非常にスイッチングコストが高く、結果的に継続率は大きく向上します。

私たちの投資先であるHasuraは、何年にもわたってオンボード、ガイドのためにDiscordを利用してきました。ほとんどの顧客はこのDiscordコミュニティから来ており、コミュニティの拡大は同社の目を見張るようなリテンションとARRの成長につながっています。

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③ フィードバック:プロダクト改善のインサイトに

コミュニティは、グロースフェーズにあるプロダクトに対して直接のフィードバックを受けるのに最適な方法です(シード/アーリーの場合は、一般的に少数のユーザーから深いインサイトを得た方が良いケースもあり)。

Product Hunt創業者の Ryan Hoover は実際にユーザーからのフィードバックをProduct Hunt上で集めており、プロダクトの改善に役立てています。

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また、成熟したコミュニティは夜中だろうとユーザー同士が質問に回答し、問題を解決し、ベストプラクティスを共有し合います。その中で、あなたが思いつかなかったソリューションが生まれることもあるでしょう。

Community-Led Growth を実現するための4つの施策

“It doesn’t matter how excellent the community tool is, if the person running the community doesn’t make it feel like a community, it won’t work. Throwing people into a Slack group chat isn’t building a community.”
「ツールがどんなに優れていても、運営側がユーザーに対してコミュニティであることを感じさせなければうまくいきません。例えば、Slackのグループチャットに人を放り込むだけでは、コミュニティの構築にはならない。
Sarah Wood, Head of Growth & Community Upstream

熱量の高いコミュニティを構築することは単純なことではない。

CLGを実現するためのプレイブックはまだ確立されていなものの、現状だと以下の4つのアプローチがある。

1.プラクティスが共有されるコミュニティを創る

4つの中でも、この施策は特に重要度が高いと個人的に思います。コミュニティには主に「プロダクトのコミュニティ」と「プラクティスのコミュニティ」の2種類があります。

A)プロダクトのコミュニティ:プロダクトについての質問をユーザーが聞き、知見をお互いに共有し、企業と繋がるための場所。

B)プラクティスのコミュニティ
:特定の領域におけるユースケースなどを学ぶという共通の目的を持つユーザーが繋がるための場所。

企業は自社のプロダクトを超えて、その職種や業界に関わる全ての人を巻き込むような空間を作るという考えを取り入れるようになっています。特定のプロダクトのみを取り扱うより遥かに大きいコミュニティが形成できるためです。

例えば、Funlは RevOpsの職種であれば誰もが参加できるコミュニティ「RevOps Co-op」を作り、これらのユーザーのために特別に設計されたFunl社のGTM製品についても学ぶことができます。

TwineはCPO(Chief People Officer)に特化したソフトウェアを提供する一方で、すべてのCPOのためのコミュニティを構築しました。

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自社のプロダクトのユースケースについて関心を持ってもらったり、必要に応じて潜在ユーザーに直接営業するかは、コミュニティマネージャーやセールスチームにかかっています。

2.「チャンピオン」へのインセンティブを設計する

「チャンピオン」とは、いわゆる社内で新技術や新企画を導入するときの支持者、擁護者、旗振り役という意味です。

コミュニティのメンバーにコンテンツを提供してもらい、自社プロダクトの支持者になってもらうためのインセンティブとして、「認定プログラム」を作るのは有効なやり方の一つになっています。

最も成功している企業の場合は、熱狂的な信者でありながら「無料の」営業人員を生み出しています。その見返りとして、彼らは履歴書やLinkedInに修了証を載せられて、キャリア上も役に立つような認証を受けることができるという仕組み。

とはいうものの、認定プログラムはその価値を薄めないことと、優秀な人材を惹きつけるのに十分な関心と話題性を生み出すことのバランスに依存しているため、実行は容易ではありません。

代表的な成功事例だと、以下のようなものがあります。

● Postscript Partner Certification / SMS Marketing Certification
● Snowflake Data SuperHeroes
● Alteryx Ace
● Salesforce Trailblazers

3.会社のコンテンツ作りにステークホルダーを巻き込む

コンテンツマーケティングは当然新しいものではありませんが、変化しているのは、ユーザーがコンテンツを作成したり、コンテンツに参加する新しい役割を担うようになっている点です。これには2つの効果があります。

1つ目は、自社が事業を展開している市場や、自社のツールが持つ多くのユースケースについて、ユーザーを「教育」する機会。2つ目は、「クリエイター」の輪を広げることで生まれるネットワーク効果です。

媒体は主に以下の2つ。

● Podcast:市場や特定のツールに関するPodcastを始める企業は年々増えており、その分野のユーザーや専門家を招いて「思想的なパートナーシップ(Thought Partnership)」を構築しています。

● ブログ/ニュースレター:コミュニティ主導の強力なコンテンツマーケティングとは、企業が主要なステークホルダーにインタビューするだけでなく、自社のユーザーに自社製品の最適な使い方に関するコンテンツを提供することを奨励するものです(多くの「認定プログラム」では、ブログ記事を書くことがプログラムの必須項目となっています)。

4.ユーザーが作成したテンプレートやチュートリアルを活用する

最後に、コミュニティへのエンゲージメントを向上させる施策として、プロダクトを活用するための手順やアイデア、テンプレートを提供することは一般的です。しかし、ある程度のサービス規模になると、作成すべきコンテンツの量が、作成できる速度を上回ってしまいます。プロダクトへの愛があれば、ユーザーが自らチュートリアルを共有してくれるかもしれません。

もし、あなたのプロダクトの使い方をDIYでYouTubeに投稿している人がいたら、その周りにコミュニティを作るべきでしょう。彼らがそういった知見を公に共有する場を作ることは、さらに創作意欲を掻き立てるだけでなく、あなたの見込み客のための「リポジトリ」を一元化することにもつながります。成功した事例をいくつかご紹介すると、、

● Figma Design
● Coda Product Management
● Notion Everything
● Zapier Tips and Inspiration


終わりに:

CLGを実現することで、ユーザーはプロダクトのみを買っているのではなく、プロダクトについて情熱を持ち、どのように活用できるかを熱く語る人々のコミュニティを買うことになります。活性化されたコミュニティは企業にとってこれ以上ない最高のMoatとなり、プロダクトをプロダクト以上のものに昇華させることができます。

種をまき、こまめに水をやり、大事に育てる必要があるコミュニティですが、一度実を結べば長年に渡って果実をもたらしてくれるでしょう。

テック界でのコミュニティへの期待値は高まっているのは間違いないものの、一方でCLGを実現するのにはハードルもあります。よく挙がるものとしては、リソースや時間不足していたり、経営陣からの賛同が得られないといったものです。

根本的にあるのは、コミュニティの成功を定量化し、ビジネスにどのような影響を与えるかを具体化することが難しいという特性があります。CLGの科学が進み、その重要性をデータで示せるようになってくることは今後期待される部分です。

まだまだこれからな部分もあるCommunity-Led Growthですが、こういうケースでは有効/無効、実際の事例や課題などの情報交換をしてくださる方は、ぜひTwitterでご連絡お願いします!フォローもぜひ↓

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参考文献


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Tomo Shikata @STRIVE_JP

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