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小さな世界からの視点の拡大


私は日常的に人種差別とリストラという不安に苛まれ、眠りの中でも絶えずそれと戦ってきました。しかし、一人で頑張ってもリストラは避けられず、もし切られるのならば、私のような黄色人種は最も危険な存在だと感じていました。
そんな不安に満ちた中、私はワシントンDCへの休暇に出かけました。それは、かつてのクラスメートや弟に会うこと、そして白米、味噌汁、お新香が食べられることが、心の不安よりも求めるものだったのです。
早く到着した私は、予定通りホワイトハウスツアーに参加し、一時の観光客になりました。ツアーが終わり、時間が余ったので、目の前のビルに思い切って営業をかけることにしました。最上階はお金持ちのオフィスがある場所だと知り、エレベーターに乗って上へ向かいました。扉が開いてフロアに出た瞬間、私は会社の中にいることに気づきました。いや、事務所かもしれません。受付の女性に名刺を渡し、担当者または最高責任者にお会いしたい旨を伝えようとしました。
そこから20分経過し、スキンヘッドの小太りな男性が現れました。彼は私に向かって、「君の会社の子会社で、こういった会社があるのかね?」と尋ねました。「はい、あります。私は以前、そちらへ派遣されていました」と答えました。
彼は私が日本人であることを感じ取ると、さらに質問をしてきました。その最後には、私の父の名前、職業、そして経歴などを尋ねてきました。
最後に彼は私に、「今日のことは他の誰にも話さないと約束できるか?」と問いました。私は驚きながらも、「はい、もちろんです」と答えました。
彼は1週間後にオフィスに電話をするようにと指示しました。
その後、私は何も営業の内容を話せずに友人たちが待つ日本大使館へ向かいました。
その夜、帰国する飛行機の中でも、この話は一体何だったのかと考え込みました。ヘッドマネージャーに報告すべきなのか、それとも忘れてしまうべきなのか悩みましたが、仕事の忙しさにかまけて結局忘れてしまいました。
そして、1週間後に電話がかかり、会った方から「3ブロック先に車が待っているから乗ってきなさい」と指示されました。私は不安はありましたが、アメリカではどんな状況でも「イエッサー」でチャンスを掴むべきだと教えられていたので、そそくさと出かけました。
連れて行かれたのは、クイーンズにあるひっそりとした中華料理レストランでした。2人の堂々たる体格をした警備員のような男性に案内され、店内に入ると、座っている人を見た瞬間に私は言葉を失い、頭が真っ白になりました。まるでドラマのような光景で、人生が終わるのではないかと感じました。
その後、お話を聞いて社に戻りました。翌日、オーナーから内線があり、恐る恐るそれに応じてみました。すると、オーナーは私を抱きしめて喜んでくれました。何が起こっているのか理解できませんでしたが、喜ばれたことには変わりありませんでした。
私の世界はすでに、職場内の仕事に限られていました。スイスの銀行を見学していても、私の世界観は狭く小さなものでした。
この出来事を通じて、私は自身の視野が狭すぎることに気づかされました。人種差別や不安との戦いに追われている間にも、世界は広がっているのです。私はこの経験から、もっと大きな世界を見るために努力し、自分の可能性を信じ、新たなチャレンジに挑戦していく決意を固めました。
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