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よだかの片想い

Title:よだかの片想い
著者:島本理生
出版社:集英社文庫
感想を書いた日: 2023-02-16

# あらすじ
生まれた時から顔に大きなアザのある前田アイコは、常に周囲からの視線と戦って生きて来た。そんなアイコが異性と仲良くなって行き、少しずつ心のわだかまりが融解して行く初恋の物語。

# 感想
本作もおなじみアトロクで松井玲奈がゲストで紹介しているのを聞いて興味を持った小説です。松井玲奈自身がラジオを通して、しっかりと自分の考えを言語化している彼女いわく、自分が感じた初恋の感じ、うまく表現出来ない感情を言語化してくれた人生の一冊と紹介があった。思いが通じて映画の主演も務めた作品とのことである。俄然興味を持ち、早速ポチりました。

主人公の前田アイコは、自分の顔にある大きなアザを周囲の人がどう受け止めるかを常に意識して生活して来た。なかなかの特殊設定で感情移入出来るかな?と思いながら読み進める。そもそも特殊設定と思うことが、顔にアザがあることは可哀想だなと思うことが、自分勝手なステレオタイプと言うことを教えてくれる小説であった。

人を見た目で判断してはいけないと頭では理解しているつもりだが、百聞は一見にしかずの言葉の通り、人間の視覚情報は大きなウェイトがあると思う。私は自分自身の外見にはあまり興味が無いが美人、美男子は大好きだ。小生の持論であるが、チヤホヤされる美人が性格悪くなるのは止む無しと思っている。見た目と性格、その辺りのバランスを考えて美人に接するように生きて来た。笑

あれ?ところでタイトルのよだかって何だっけ?と言うことで宮沢賢治のよだかの星も、この直後に読んでみました。

なるほど見た目で皆に嫌われて夜空を飛び回ったよだか、最後はめでたく?星になれたお話しでした。アイコのアザの比喩が琵琶湖から星空に昇華した理由がわかりました。

悲しいかな見た目で他人を判断すると言う機能、本能は、DNAに刻まれているものと思う。しかし、そのDNAに抗って世の中を豊かにする方向性も必要である。ETこと原田くんやミュウ先輩のエピソードは見た目で人を判断してはいけないと言うテーマをより味わい深いものにするお話しだ。やはり本作は初恋の話と言うよりも見た目の偏見や差別を無くして行こうという多様性の時代に向けての小説ですな。

最初に期待していた恋愛の部分についても少し言及しておく。最初は好きな人を眺めるだけで嬉しい、声をかけられるだけで幸せと感じていたはずが、どんどんと欲求がエスカレートして行く。一緒に遊べたら幸せ、他人と楽しそうにしているのは見たく無い、私が会いたい時に私を優先してくれないと満足出来ない、私があなたのことを好きなくらい私のことを好きになって欲しい。博士課程に進もうかと言う理系女子のアイコは自分の感情を冷静に、ロジカルに分析して行く。好きな人と付き合うまでの心の変化、駆け引きは、アイコが分析する通りだと思います。相手がどこまで自分のことを優先してくれるか?どこまで相手のことを優先出来るか?相手の対応を許容出来るか?その細かい心の変化、駆け引きが恋愛なんでしょうね。タイミング、風を読みながら押し引き。あーおじさんは忘れてしまいましたが若い人はこの駆け引きで胸をムズムズキュンキュンさせるんですね。

恐らく真っ直ぐ育ったアイコは飛坂監督と別れても幸せになれます。願わくば、親の愛情不足で育ってしまった飛坂監督にも幸せになって欲しいものです。

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