富岸敦弘

90年代産フリーライターです。

富岸敦弘

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最近の記事

メイプルストーリーMの感想

平成の終わりを間近に、懐古を受け入れる雰囲気が漂う今日この頃。 おそらく特定の年代に刺さりまくるコンテンツが降臨した。 『メイプルストーリーM』 まだソシャゲはおろかツイッターも無かった時代、 速度のおっそいインターネットにやきもきしながらも、見知らぬ相手とのやり取りに心を熱くしたオンラインゲームのスマホ復刻版だ。 メイプルストーリーは時代と共に姿かたちを変え、また、何度かリメイクされているが、今回はほぼほぼ全盛期の復刻と言ってよいだろう。 まずBGMが懐かしい。

    • 「説明」の嵐、「説得」の安倍晋三

      きょう、政治の舞台では通常国会が招集された。 平成最後となる国会では何が議論されるのか。 安倍首相の施政方針演説も行われ、全文掲載などが各媒体で行われているので参照されたい。 私は説明資料というものが嫌いだ。 きっちりと整えられたレイアウトに乗せられる文言は、 洗練された言葉で物事を美しく表現する。 そこに考えさせる余地がないのである。 共生共存には合意形成が欠かせないが、そこに必要となる議論に 整った資料を持ち込まれてはたまったものではない。 それはもはや「説明

      • 外が見えない日本的アイデンティティ

        日本人は『内』と『外』に物凄く敏感だ。 「たとえば、僕がお箸で食事をしていると『使い方が上手ですね』と言われます。もう25年も住んでいるのに、やっぱり外国人として見られるんです。『優しい偏見』ですね」 日本人は外国人に対して、「なにかと意識しすぎる節がある」とパックンは感じている。 インタビューでそう書いたのはアメリカ出身で日本に暮らすパトリック・ハーラン氏だ。 『外国人』と『日本人』。 見た目に違いはあれど、違和感を感じているのは外見ではなく、 アイデンティティ的

        • 踊る若者たち

          前回、ハロウィンに見た日本人の秘めたる<祭り気質>を書き記した。 日本人は教え込まれたその規律によって、『静』の状態を保っているが 結局は心のどこかにタガを外したい欲望を抱え込んでいるのだ。 本田翼さんの出演する「LINEモバイル」のコマーシャルを目にした方は多いだろう。 ザ・ドリフターズの「いい湯だな」のカバーソングをBGMに踊るというものだ。 背景はコンテンツのイメージカラーである緑一色。横に2Dのキャラクターがいるだけで余計な手は加えていない。 つまりこのCM

        メイプルストーリーMの感想

          陽キャを秘め込む日本人

          イベントとしてのハロウィンがすっかり定着した。 若者の街・渋谷のみならず、そこかしこで仮装を見かけたのが何よりの証拠だ。 ハロウィンの定義、そして正しい享受の仕方についてあれこれ指摘するのは省略する。 <なぜ受け入れられたのか> 帰宅の途につく電車の中で、多少浮いているのをものともせずに仮装状態で乗車する人々を見てそんなことを考えていた。 市街地の仮装行列には人垣が出来上がる。 写真を撮ったり、そこには目視できるコミュニケーションが存在している。 見ず知らずの異

          陽キャを秘め込む日本人

          血を流す美談は存在しない

          ドラフト会議ほど派手な就活は無いと思う。 この夏、ワイドショーを席巻した金足農業・吉田輝星投手も、無事に北海道日本ハムファイターズへの就職を決める運びになりそうだ。 もちろん職種は「野球選手」。 甲子園での連投で懸念された選手生命の話も、いまはちょっと黙っておこうというのが世間の反応。 私は以前、そんな”ブラック甲子園”の話題を書いた。 破滅の物語が大好物なのは国民性。興業である以上は、刺激物としての『受難』が一定は必要であると。 タイブレーク制導入を受けて、一方

          血を流す美談は存在しない

          DA PUMP『U.S.A.』に見る平成のヒット曲

          プロ野球はポストシーズンに突入し、終盤へとまっしぐらだ。 クライマックスシリーズに駒を進めたソフトバンクホークスの柳田悠岐選手のバッターボックスに入る際の登場曲はDA PUMP「U.S.A.」。 今年を締めくくるポストシーズンに合わせ、出囃子を変更して臨んでいる。 この1年を象徴する一曲として、これからの季節より一層耳にする機会が増えそうなのが「U.S.A.」である。 5月にPVが公開されてから、楽曲とともにダンスの様子をテレビでよく見かけた。 この曲は1992年に

          DA PUMP『U.S.A.』に見る平成のヒット曲

          イントネーションが分からない現代人

          先日友人とのやり取りで、ある単語の発音を確認するという件があった。 ネットスラングという平行世界で生まれる言葉のおかげで私たちが日ごろ新しく出会う言葉は圧倒的に増えたと思う。 新しく出来上がる言葉の発音は、いかにして定められるのだろう。 インターネットの普及により定着したテキスト文化においては、『言葉』は『音』を持たずに生まれることになる。 昔はそれでも会話があった。 会話の中で『言葉』は『音』を宿し、コミュニケーションに至る。 新しく生まれた単語も、会話において

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          内定式って必要?

          大人は形式にこだわる生き物だ。 学生の頃、内定式に出席した私はそう感じた。 もとより、20歳の成人式にも出席する価値が見出せなかったので、 半ば通過儀礼のごとく参加させられた内定式に不満を抱いた。 それをきっかけに私は内定辞退を試みた。というより正社員としての人生に納得がいかなくなったのだ。 結局やりたかった仕事はアルバイトでも受け入れられず、不承不承こうして兼業で文章を書いている。 社会に出ると、その後も続々とよく分からない儀式を経験する。 そうやって私は身をも

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          ラップは文化系の手に渡った

          ぼくのりりっくのぼうよみがアーティスト活動を休止する。 20歳にしての決断は少し早すぎる気もするが、彼の才能はまたいつか大きく羽を広げることだろう。 そのアーティスト名義とは裏腹に、決して彼のリリックは棒読みではない。 あまりにも”文系”な容姿から流暢に放たれるラップに、驚いた人も多いはずだ。 ここ数年でじわじわとムーブメントを巻き起こしているヒップホップ界隈。 『MCバトル』の名前を人口に膾炙させたフリースタイルダンジョンがその急先鋒だ。 ヒップホップはその歴史

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          『女子中学生化』する日本の言論

          掲載論文の是非で揺れる新潮45が休刊に踏み切った。 一連の騒動の原因は部数低迷による認識の甘さにあると発表している。 過激な論調はなぜ人の心を動かすのだろう。 平成も終わるというのに、言論は衰退してしまったように見える。 奇しくも今日はその少し前に、貴乃花親方の引退届提出のニュースまで飛び込んできた。 日本相撲協会の問題は、明確な”敵”を形成するマスコミの報道に踊らされ、こじれにこじれた印象を受ける。 個人のつるし上げに終始すれば、問題の本質は見えなくなるばかりだ

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          じゃあ逆にyoutuberより芸人がすごい理由

          先日、youtuberと鉄腕ダッシュを並列させて 「ちょっと隣にある世界を全力で楽しむ」ことの魅力を書いた。 大変アクセス数も良く、好評いただけているのがありがたい。 だがバラエティの世界はもっと広く、より深い娯楽があることを知ってもらいたい。 「自分がお笑いを始めたときに落語界が斜陽だったが、全く同じ構図で今はyoutuberにお笑いが押されている」というある芸人の話を聞いたことがある。 一世を風靡し、驚異的な最大瞬間風速を記録するyoutuberではあるが、もは

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          youtuberに憧れる若手社員、鉄腕ダッシュに憧れるベテラン社員

          小学生の「将来なりたい職業」ランキングで、ここ数年順位を上げているのはyoutuberだ。 彼らはインターネットに自作の動画をアップロードして、広告収入などで生計を立てている。 工夫を凝らした動画で、人々の関心を集めるのである。 私も日頃、彼らの生み出すコンテンツに楽しませてもらっている。 なぜ、「職業」として認知されるかすら怪しいyoutuberという生業が人気なのか。 それは、自分に出来ないことを代わりにやり切っているからだ。 会社員生活も小康を保とうとする私

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          『被災疲れ』という現象

          日本列島を相次いで襲った災害から少し経った。 水に浸かる空港、剥げ落ちる山々。 報道の映像でしか確認してないが、まるでCGを見てるような非現実的感覚になった。 現地の方は、どんな日々を過ごしているのだろう。 そう思って見た今日のニュースでは、驚くことに日常と変わらない光景が映し出されていた。 札幌の映像だ。 街頭で節電を呼びかける人、その横を歩くのは背広を着たサラリーマン。 5日前に大地が揺れた都市とは思えない。 慣れすぎなのではないかと思う。 東日本大震災

          『被災疲れ』という現象

          90年代は無事、懐古のコンテンツとなった

          先日、70年代から80年代の”懐メロ特集”をまとめた知人が『90年代は入らないんですか?』というフィードバックを頂戴した話を伺った。 1990年代カルチャーをふんだんに盛り込んだ映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』が公開中だ。 ミニスカートにルーズソックス、派手なメイクと独特のポージング。 そんなコギャル文化を緻密に描き、劇判を担当するのは小室哲哉氏、 さらにインスタントカメラなどの演出の細部までこだわるなど、当時の空気感に肉迫していると話題の作品だ。 劇中で効果的

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          いま、暗い夜を過ごす人へ

          台風21号が過ぎ去った。 この世のものとは思えない光景を残して。 強く降った雨の痕跡、そして停電などのインフラの障害。 まだ不安の中に取り残されている方たちがいる。 どんな思い出も、音楽が美しくしてくれることを私は信じてやまない。 東日本大震災のとき、大きな揺れにあって帰宅できなくなった私は暗くて寒い3月の夜空の下、UNLIMITSというバンドの曲を聴いていた。 マイナーコードが疾走するもの悲しい旋律。なぜこれを選んだのかはいまだに分からない。 それでも3月が来

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