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謝恩会に参加した友人がデジカメで撮影した心霊写真。

私は以前演劇のスクールに通っていた。同じクラスにはいろいろな人がいて、大学生もいれば、社会人もいた。私はそのころ21歳とかそれくらいで、周りの友人には大学生が多かった。
演劇のスクールの卒業公演を控えた3月は、友人たちの大学の卒業式もあり、仲の良かった友人は大学の謝恩会に行ったあとに、直接スクールの稽古場にやってきた。

来るなり、「ねぇ、怖いの大丈夫な人?」というので、むしろ好きだと伝える。「あのさ、私、謝恩会で心霊写真撮っちゃった。しかも1枚とかじゃないの、何枚も。怖いから一緒にデジカメで見てよ!」という。

友人は大学の仲の良い友人5人と一緒に謝恩会に参加していた。ドレスを着ている子が4人、1人は青い綺麗な着物を着ていた。友人が自分が所有するデジカメで撮影した写真にその5人が一緒に映った写真が何枚も保存されていた。

「この青い着物着てる子いるでしょ?この子が写真に写ってるときだけ、かならず黒い人のカタチした影が写真に写ってるの」

そう言われて、謝恩会の写真を1枚目から見直していく。

「この写真はここにいるでしょ」

5人で映ってる集合写真、着物を着た彼女が右端に立っている。その右肩からのぞき込むように黒い影が映っている。

名探偵コナンの犯人みたいな感じと言えばわかるだろうか?黒い人のカタチをしたものが映っている。ぼやけているとかではなく、頭部があり首があり、肩があるのだ。

「次はこれ見てみて。着物の子が写ってない写真でしょ。これには何も映ってないの」

たしかに、デジカメのモニターを見る限り、何もあやしい影はない。

「でもね、この次の写真、着物の子がいるでしょ。後ろの屏風と会場の壁の隙間見て。ほら、またひょっこりこっちを見てる・・・」

謝恩会の会場はホテルの大広間だったという。壁の前に屏風のパーテーションのようなものがあり、その隙間は写真で見ても数センチしかないと思われるのだが、その隙間から黒い人のカタチをしたものが着物の彼女の様子を窺うかがうようにのぞき込んでいるのだ。

「これね、今日撮影した謝恩会の写真、全部こうなってる。着物の子が写ってる写真には黒い影が。ほら、これもここにいるでしょ。」

着物を着た女の子がホテルの壁に沿って並べられた椅子に座ってる。その壁に黒い影がある。

「髪型とかの影じゃないよね?」

「もしそうだったら、他の子のにもそういう影ができるはずでしょ。それに人のカタチにならなくない?」

「そうだねぇ。。。」私は悩んだ。

「わたしね、この着物のせいだって思ったの。だって、謝恩会に着物着ていくなんて言ってなかったんだよ。でも2週間くらい前からな、古着物を扱う店に行って一目惚れしちゃったんだって。でもさ、おかしいんだよ。この子ね、着物が好きとかじゃないんだよ?」

彼女たちは家政科のある大学の学生で、その中でも被服、つまりはファッションの勉強をしている子だった。

「私たちは被服勉強してる。和服も学んだけど、彼女はそのときに和服に興味がある感じじゃなかったんだよね。で、突然着物を買って、謝恩会で着るって言いだしたの。」

ちなみに着物の柄は、コバルトブルーのような青の訪問着だった。目立つデザインなので若い人しか着れなさそうな着物だった。直接見た友人が言うには、着物は古びた様子はなくて、状態も良かったという。値段も手頃だったらしい。

「そんな突然、古着物の店に行くことってないでしょ?着物好きならともかく。Hitomiちゃんの目から見て、どう?」

私は着付け勉強を2年間やってスクールに通っており、古着物屋にもよく足を運ぶ。

「すごくいい着物だと思う。高そうだし。」

私はふと思い出した。

「そういえば、着付けのスクールの先生が言ってたんだけどね。古着物屋さんに売られてる着物ってワケありだったりするんだって。持ち主がすでに亡くなってる場合も多いみたい。ご年配の方が亡くなった後に、そのご遺族が価値がわからずにいい着物を売りにくることもあるって。」

先生の言葉が頭の中でぐるぐると回った。

「若い子向けの着物が綺麗なままで売っていたら気を付けた方がいいわよ。若いうちに亡くなった人の着物は、あまりいいものではないかもしれない。」

事情はこうだ。
例えば成人式を迎える前に病に伏せた方がいて、成人式には着物着ようね!とご家族が振袖を用意してしまう。しかし、回復せずに着物に袖を通さずに亡くなってしまう。昔はそのまま棺に入れたりもしたようだが、振袖は高いので、もったいないと思ったのか、燃やさなかった。かといって手元に置いておくと悲しくなってしまう。どうせだったら、誰かに着てもらえた方が振袖も幸せだろうと、古着物屋に売る。振袖は成人式のだいぶ前から用意するものなので、こういうことが起きてしまうようだった。

着物屋も、そこまで1つ1つの商品について「なんで手放すんですか?」と聞いたりしないという。
興味本位で一度「いわくつきの着物とかあるんじゃないですか?」と古着物屋の店員さんに聞いたことがある。

「そんなの聞いちゃったら、買えないわよ!」と言われたw

確かにそうだ。

今まで心霊写真というのはプリントアウトされたものだったりしたので、撮影してからすぐに見れるものだとは思っていなかった。
彼女は謝恩会でこの心霊写真を撮影して、すぐに演劇のスクールの稽古場に来て、この写真を私に見せてくれた。彼女がその日着ていたドレスはその写真に写ってるものと全く同じだったので、彼女がどこかでPCなどを利用してデジカメを加工したとも思えない。

人生で心霊写真と言えるものを見たのは、この一度だけだ。

ちなみにこの青い着物を着ていたご友人は別にいつもと変わらず元気だったそうだ。今はすでに演劇のスクールもやめ、友人とも連絡を取らなくなってしまった。青い着物の彼女が今どうしているかわからないし、青い着物が今まだ彼女の家にあるかどうかもわからない。

古着物屋で、青い着物を見つけたら、気を付けて。

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