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楽屋で、幕の内。|潜在意識に埋め込まれた負の言葉 Sep.21

素敵な言葉に出合う回数が増えれば、マイナスな言葉に触れる機会も増える。一番怖いのは、潜在意識にいつの間にか埋め込まれた負の言葉。意識的に取り入れたわけではないので拭い去ることが難しく、そもそも埋め込まれたことにすら気づかない。そしてじわりじわりと心を侵食する。

私は幼い頃から漫画が大好きだ。ここ数年、電子書籍の普及に伴い、スマホのアプリで読める“縦スクロール漫画”が増えた。無料の漫画が多く、単行本よりも気軽に読めるため、今まで興味のなかったジャンルも一度読んでみようという気になる。「ランキング!」のタブをクリックして驚いたのは、リアル書店とは売れ筋が異なることだ。ネットなら誰にも知られずに購入できるからか、不倫・マウンティング・SNS中毒・モラハラなど、”他人の不幸は蜜の味”系の漫画が上位に食い込んでいた。これ系の漫画は安易に読み始めてはいけない。人間の感情を大きく揺さぶり、スカッとするまで読み終われない。もう有料ページまで残りわずか。課金しようか…いや、同ジャンルで他にも無料漫画があるはず…と、自分でもよくわからない労力を使いながら閲覧数を増やすことになる。実際に、そんなことを数ヶ月続けていたら、ある日自分の中に変化が起こった。

私の頭の中にツッコミ役の私(以下・ツッコme)が現れ、私が読んだ漫画の登場人物のようなことを発言し始めたのだ。「それって実は、私に対するマウンティングじゃない〜?」など、今まで友人に対して1ミリも考えたことがなかった言葉を発するツッコme。ふり払っても消えることはなく、それは仕事の場面でも続いた。「それってありえなくな〜い?」とつぶやくツッコme。いや、大いにあり得るよ。やめてくれ、変な知識をつけさせないでくれ。素直な私よ、戻ってきて…。ツッコmeを退治する方法は、ただ一つ。漫画アプリを消すことだ。でも一度消すと既読履歴がなくなるし、まだ最後まで読んでいない漫画もある。ここまで読んだのだから、消すのはもったいないと渋る私に、友人がひと言。

「サンクコストって知ってる?」

サンクコストとは「回収できなくなった費用」のこと。回収不可能な費用なのに、過去に費やした資金を惜しんで継続することで損失が拡大してしまうのだ。もったいないからやめられない。まさにギャンブル状態。すでに時間も労力も費やしていた私は、これ以上負の言葉を増やすわけにはいかないと漫画アプリをアンインストールした。同時にツッコmeも消滅した。読書は食事と同じ。体に取り入れたもので、私がつくられる。できるだけ、前向きで明るい、気持ちのいい言葉を選びたい。

これは、ネガティブな漫画を否定しているわけではない。逆に、負の言葉を知ることで自分も発言に気をつけようと思うきっかけになる。それに漫画は娯楽だ。現実と重ねてツッコmeを生み出してしまう私に問題があるのだ。

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