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【読書感想文】東京タワー - 江國香織

ドラマ化されるということで手に取りましたが、とても有名な作品ですよね。

江國香織ワールドにどっぷりと浸かってきました。

あらすじ

大学生の透と耕二。共に夫のいる年上の女性との不倫関係にあるものの、二人の恋愛は対極にある。

「恋はするものではなく、落ちるもの」という透と詩史の関係に対して、耕二は女子大生の彼女がいながらも喜美子との関係も持っている。

耕二は透に年上女性の良さを教えてもらった(というが実際は影響を受けたのだと思う)という。

この二組の恋模様の結末とは。

感想

透と詩史の関係は純愛なのではないでしょうか。

一見、夫のある女性と男子大学生のふしだらな不倫ものに見えますが、これはどうしようもなく異性を好きになった透の、紛れもない深い恋心の物語なのだと思います。

一方で、詩史は夫も大事にしているという点で、真意がはっきりと読み取れない部分もありました。

自分の都合が良いように透を弄んでいるようにも見えますし、これは読み手によって捉え方が変わるのではないかと思います。

耕二と喜美子の関係性は、また対照的で情熱と割り切りから始まっています。ですが、「始まっている」だけでその後の展開は…

男女の間に友情は成立するかしないか、という議論がなされますが、これを読んでいると「ああ、やはり男女の間には割り切りや無感情というものは存在しないのだな」と思います。

たとえ割り切った関係であったり、友情であったりを主張していたとしても、どちらかが恋愛感情を抑えているだけなのです。私の経験上でも。

喜美子は当初は寂しさから耕二との関係に嵌っていった節はありますが、段々とエスカレートしていき、狂気へと変わります。しかし、その裏には結局「寂しさ」があり、恋愛感情とはまた違うもののような気がしました。

ですが、耕二は割り切った関係で始めているものの、どんどん喜美子への恋愛感情が生まれ、最後には…

一貫して終始世の中の男女のあれやこれやの縮図だと思いました。

この年になって読むからこそ、読み取れる感情や事情もあったと思います。

若いうちに読んでいたら、ただの不倫小説にしか感じなかったかもしれませんね。

意外な結末でしたので、気になる方はぜひ。


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