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イギリス社会運動記①〜G7サミット

こんにちは。Moving Beyond Hate 代表のトミー長谷川です。

 さて、これから現在滞在中のイギリスにおける社会運動の報告をこれから行っていきたい。

 その第一回では6月11〜13日にかけてイギリスの最南部のコーンウォール行われたG7(先進国首脳会談)に対する反対の動きについて発信していく。

 コーンウォールはパスティやイギリス人の旅行先として有名だが、同時にイギリスでの貧困率が最も高い地域の一つでもある。有名な五つ星ホテルがあるコーンウォールの一部(carbis bay)にG7各国の首脳や官僚、外交官、関係者や国際NGOが集い、全国から招集された6000人の警察に守られる中、今回の会談が行われた。

G7とは?
 G7の起源は1970年代前半の経済危機にある。危機に先進大国の企業・国家が対応するために、当初は先進大国間の非公式の会談として始まった。それ以来、毎年開かれるG7会談として公式化され、そこでは先進資本主義国の自由貿易に関するルールや各国の「安全保障」、気候変動の問題や途上国の負債などの問題について協議されている。

 では、なぜ、人々がG7に反対するのだろうか。まず、G7のリーダーの決定が先進国問わず、グローバルサウスの国々の人々に対しても大きな影響を及ぼすにもかかわらず、そこから多くの国々が排除されているからだ。(リーダーのワクチン政策や途上国の債務問題など)それに加え、G7はリーダーを中心としながら、草の根の運動や市民の声を無視する非民主的な空間であり、昨今では気候変動などの地球規模な問題に対して何度も「協議」を行いながらも、なんら実行的な対策がとられていない。このような点からG7は絶えず批判されている。

 以下、G7サミットへのプロテストに参加した様子を伝えていきたい。


1日目〜気候変動
 今回の会議では、コロナ後、どのように気候変動の危機に対応するかが問われていた。現在、気候変動対策として残されている時間がわずか9年しかないと言われているからだ。9年以内に抜本的な対策を行わなければ世紀末までの温度増加(産業革命以来の)が1.5度を超えてしまい、取り返しがつかないことになる。
(https://www.bbc.com/japanese/video-46354083)

 さて、このような現状に対して、サミットでは様々な団体が大規模なプロテストを行った。特に、イギリスの主要な環境運動、Extinction Rebellion (通称:XR、日本語訳:絶滅への叛逆)はサミットの重要人が容易に帰れないようにするために道路を封鎖したり、海上でもプロテストを行いG7リーダーの欺瞞制を問題化した。

 XRは中央的な組織やリーダーを持たず、各地域のXRの支部が全体の方針に沿ってアクションを自分たちで決めて、行う、脱中心化された組織モデルを採用しており、それが今回のプロテストにおいても現れていた。道路を封鎖する実行的な直接行動を行うXRの支部・人々がいる一方で、よりビジュアル、メディアにおける注目度を重視するようなプロテストも多く行われたからだ。例えば、以下のような、石炭・石油産業に多くの融資を行い続けている銀行、HSBCに対して、「どれだけきれいにして、スポンジでこすっても、この銀行はきれいにならない」というメディアやSNS向けのバズりやすいアクションを行ったりすることなどだ。


 XRのプロテストの多くは、一般的にイメージする「デモ」というよりは、フェスティバルのようなもので、地元の人も多く参加していた。

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2日目〜国際的連帯
 2日目も晴天が続き、私はG7に反対する連合体、’Resist G7’が主催するデモに参加した。Resist G7には気候変動団体、警察権力の強化に反対するダン団体、パレスチナの占領・入植に反対する団体など、多くの参加しており、かなり国際的な性格を帯びている。

 G7のリーダーの決定は先進国だけではなく、世界中の人々に影響を与えている。パレスチナの民族浄化や先進国によるワクチンの独占によって生じている世界的な「ワクチンアパルトヘイト」、キャッシュミール地区における紛争やクルド人自治区への弾圧などだ。

 昼ごろから200人ほど集まり、広場で集会が行われ、さまざまな団体のスピーカーが話した。

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 さまざまなスピーカーが話したが、中でも特にパレスチナとの連帯の重要性が強調されていた。例えば、教育労組のオルガナイザーは、パレスチナ問題に関して、労働運動が果たすべき役割について強調していた。労働運動は単にパレスチナに対して政府に対応をとるように迫る署名や議員に対して手紙を書くのではなく、積極的にBDSの一端を担うべきだと主張した。(BDSとは、イスラエルへのボイコット、投資撤退、制裁を求める社会運動)

 例えば、イスラエルのセキュリティ企業、Elbit Systemsはパレスチナ人を監視し、攻撃するイスラエル軍隊の軍事用ドローンの八割以上を製造し、イギリスにも多くの工場を置いている。Elbitはこれらドローンがパレスチナ人に対して「combat proven、(軍事的に有効性が証明された)」と宣伝し、各国の軍隊にも売却している。(https://corporatewatch.org/elbit-systems-company-profile-2/) 

 Palestine Actionという団体はパレスチナにおけるイスラエル人の入植とパレスチナ人の民族浄化を止めるために、Elbit Systemsのイギリスの工場を占拠し、パレスチナの民族浄化を進める武器の製造を実力で阻止することに成功している。

 南アフリカの湾岸労働者の組合はイスラエル商品の積荷を降ろすのを拒否したりしているが、このような世界的なBDSの動きに対してより積極的に連帯することを求める熱いスピーチが語られた。

 そのほかにも、クルディスタンの現状について話す活動家やカシミールにルーツのある人々も多く参加していた。

 集会後、参加者は海の方へと進み、G7の代表者たちが会談を行っている対岸に対して声を上げた。

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 コロナ禍の下で行われた今年のサミットでは例年のようにヨーロッパ大陸や世界各地から大勢の活動家が集まることがなく、残念であった。しかし、それでも、普段は別々の領域で活動していて、かつスタンスが異なることも多く、あまり交流がないさまざまな団体がG7に反対するという共通の目的の下では団結し、反対の声をあげた。特に労組やキャッシュミール問題など、普段はあまり共通性を持たい人々が集まり、どのようなアクションを起こすべきかを議論する良い機会となった。


3日目〜 Kill the Bill デモ

 3日目は同じくResist G7主催のデモが行われ、それに参加した。最終日のこのデモは、国内的な問題である、イギリスにおける昨今の警察権力を強化する動きに反対するものだった。

 イギリス議会で現在と通されようとしている警察権力の強化を目指す法案はプロテストに対してより厳罰的な措置をとり、ジプシー・ロマコミュニティの土地利用を犯罪化することを目指している。それは昨年の爆発的なBLMのデモやブリストルの奴隷商人コルストンの銅像引き下ろしに対する反動として行われようとしている法改正だ。法案が通れば公共の銅像を引き下ろしたり、破損させた場合、最大10年の刑罰が下されることになる。

 このような法案は英国内で大きな反発にあい、Kill the Bill(法案をなくせ、という意味)という標語の下で各地で大規模なデモが行われてきた。

 そこで、最終日のこのデモでは150人ほどが集まり、G7メディアセンターの前まで後進し、そこを封鎖した。G7リーダーだけを取材し、G7をあたかも「ショー」のように報道するメディア、そして、G7のリーダーを守りながらも、抗議する者に対しては厳しく対処し、監視する警察に反対した。 (例えば、リーダーの「ファッションチェック」を行うメディア:https://www.independent.co.uk/life-style/fashion/g7-summit-fashion-style-history-b1865068.html)

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まとめ
 サミットへのプロテストにはさまざまな団体が参加したが、中でも、気候変動に反対する団体と旧来型の社会運動の間で分裂があったように思われた。XRなどの環境運動が基本的に国際的な連帯をあまり重視しておらず、「環境至上主義」として考えられているためだ。それはXRが白人中産層の運動で、気候変動によって生じる不平等を無視している、などと批判されることとも通じる。

 また、今年のサミットはコロナ禍の下で行われたゆえ、その規模が小さくならざるを得なく、効果的なプロテストの範囲がかなり限られていたように思えた。海外の活動家と交流する機会がなかったのも大変残念だった。


次回からはブリストルの社会運動について報告していきたい。

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