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プリマス刑務所を廃止しろ!

こんにちは。
現在、アメリカ・ボストンに来年の一月半ばまで留学中です。これからはボストンの社会運動について定期的に発信していきます。

 今日は、先週参加したプリマスでの刑務所・収容所の廃止を求めるデモについて書きたいと思います。(コミュニティオルガナイジングの具体的な活動や大学の学生運動については後ほどまた書きます!)

プリマスってどんなところ?
 プリマスはボストンから車で一時間ぐらいで、アメリカの国民とっては重要な祝祭日、Thanksgiving(感謝祭)のもととなった場所。ご存知の通り、Thanksgivingとは、「宗教的迫害に困った」イングランド人に対して食物を分け与えた先住民に対してイングランド人が感謝し、感謝のための食事会を開いた、という逸話であるが、実態としてはそれとは異なり、まずそもそもピルグリムファーザーズが到着する前に疫病によって多くの先住民が亡くなり、先住民部族同士の関係も不安定化していた。その中で他の部族に対して優れた立場に立つために、一部の部族が入植者と同盟を組み、Thanksgivingもその同盟の安定化のために行われたものだったと言われている。("All the Real Indians Died Off": And 20 Other Myths About Native Americans を参照)

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刑務所・入管廃止って?

 今回のデモはプリマス刑務所の対応を問題化するためのものだった。プリマス刑務所はICE(アメリカ入管)と契約を提携し、ICEが拘束した非正規滞在者はプリマス刑務所に囚人とほぼ同じ条件で収容されている。そして、刑務所の中では職員はコロナ対策をほとんど行わず、収容者の要望もほとんど無視されている。その上、コロナを口実に家族やコミュニティメンバーとの面談も認められず、これまで抗議するためにハンストを行ったり、外部の活動家と連絡をとった者は報復として何の通知もなく他の収容施設に移送されてきた。

 そこで、移住者の正義を掲げる団体や監獄問題に取り組む団体は、まずプリマス刑務所がICEとの関係を断つことを求めている。(もちろん、ICEとの関係を継続させることで自治体や刑務所が多くの収入を得ている構図があるため、これを実現させるためのハードルが高いことも皆承知してる。)

 そもそも、プリマスに収容者が移送されたのは、運動側がそれまでの収容先だったマサチューセッツ州ブリストル群の非常に劣悪だった入管収容施設を閉じるのに成功したためだ。

 しかし、刑務所とICEの関係解消を求めるのは、単に刑務所の環境が劣悪で、コロナ対策が不十分だからではなく、運動側がそもそも入管や監獄の廃止を求めるからだ。入管(施設)や監獄は先住民の土地を収奪して作られた、人種化されたコミュニティの移動と自由を制限し、人種間、階級間の富の不平等を強化し、維持させるためのメカニズムである。バイデンに大統領に代わってからも、強制送還や収容は減るどころか、最近ではハイチからの難民や非正規移民に対しての国境での追い返しや強制送還が激しくなっている。今回、プリマス刑務所へ収容者の移送を許可したのもバイデン政権だった。リベラルな候補者が選挙で当選することで収容者の待遇はもう少し「人道的」なものになるかもしれないが、人種化されたマイノリティが収容され、不平等が強化されている事実は変わらないのだ。

 そのような不平等を生み出し、強化するからこそ、社会運動側は監獄・入管廃止し、その代わりに福祉(教育、医療、ヒーリング)に社会の資源を投入することを求めている。こっちでコミュニティオーガナイザーがよく言うことだが、ヒーリングや共助、支え合いのための活動はすでにコミュニティのレベルで実現されているのだ。


マーチ・イベントの内容・経過

以下、軽くイベントの流れを紹介する。

 集会は英語、スペイン語で行われ、まずLand Acknowledgementで始まった。近年、北米ではイベントなどを始める際、その土地がもともとどの先住民のものかについて言及することが習慣となっている。特に今回は、近代「アメリカ合衆国」の生誕地(ピルグリムファーザーズが最初に到着した土地)とされているプリマスであるだけに、いかに入植者が土地収奪、レイシズムとセクシズムをヨーロッパが持ち込んできたことが強調された。Land Backという先住民の運動の要求が書かれた横断幕も掲げられ、収奪された土地の上では「不法」滞在などあり得ないことが叫ばれた。「私たちがプリマスロックに降り立ったのではない、プリマスロックが渡したち(黒人・先住民)の上に降り立ったのだ。」というマルコムXの言葉も出されたのは印象的だった。入管・刑務所の連続性、そしてそれと先住民の土地への闘争の関係について言及され、マーチが始まる。

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(この横断幕に掲げられている"Landback"は先住民運動のスローガンで、文字通り、先住民の土地を先住民の下に戻せ、という意味。)

 マーチは一時間半ほどで。プリマス・ロックから始まり、プリマス刑務所まで歩いた。

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 途中で、世界各国からきたアメリカからきた移民を表象する銅像があったが、デモのオーガナイザーはこの銅像をビニールで覆い、その下に「プリマスが拘束・強制送還をやめるまで未公開」というサインが加えられた。人種化された移住労働者を監視し、拘束し、強制送還するシステムは「リベラル」な移民国家という神話によって強化されるからこそ、この銅像が標的となったのだ。

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 最後にプリマス刑務所前に着いた。そこではお菓子を食べ、一服し、収容された人々の家族と中の収容者の録音されたメッセージが伝えられた。特に収容者の声を聞いて単に悲しむのではなく、行動に参加し、プリマス刑務所にICEとの関係を解消するように求めるよう訴えた。

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最後に

 日本でも今年、入管の対応の酷さが問題化されたが、日本こそ入管廃絶を掲げる運動が今こそ必要だ。今回は入管と刑務所の関係を解消するデモについて報告したが、デモ以外にも入管廃絶を進めるためにできることはたくさんある。強制送還を行う飛行機を座り込みで止めたり(これはなかなかハードルが高いが笑)、非正規移民の収容を地域住民が集まり実力で止めたり、収容所内部のハンストと連帯したり。非正規滞在者の情報を医療・教育現場の担い手が警察・入管に流さないように働きかけることも同じく重要だ。これら全てにおいて、周りの人を巻き込み、一緒に組織化しながらやっていかないといけない。


 この記事を読んで日本でも何かしたいと考えたい若い方がいれば、私が代表を努めてるMoving Beyond Hateにぜひ連絡ください!

fin.


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