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【書籍】 「信長の棺」 加藤 廣(著)

信長の棺(上)

「本能寺の変」の後、織田信長の遺骸は、忽然と、この世から消えた。明智光秀の娘婿・明智左馬助が寺の焼け跡に残って、数日、くまなく捜索したが、どこからも出てこなかった。
 ・・・
 だからといって、この一件は「不思議なことに・・・」で済まされるような問題でも、人物でもあるまいというのが、筆者の本作品執筆の動機である。

 上記はこの作品の著者である加藤廣氏による「あとがき」の冒頭である。昨年1月から始まったNHK大河ドラマ「麒麟がくる」を見て、戦国時代の武将たちの生き様にいろいろと思いを馳せているが、ドラマはコロナ禍の影響により今年まで延び、最終回が2月7日とのこと。残すところ4回の展開が楽しみである。
 毎週このドラマを楽しみながら、昨年末に明智光秀の書籍でも読んでみようかと思っていたところ、この書籍のことを知った。
 日本経済新聞に連載され、単行本の発行は2005年5月、単行本と文庫本合わせて250万部というベストセラーとなっている。その頃にも何かで知り得る機会はあっただろうが、記憶はない。今回が初読である。

 タイトル上の写真は2006年にテレビドラマとして放映された際のもの。当時の首相小泉純一郎も愛読したと解説がある。

あらすじ

織田信長の家臣・太田牛一は、主君からとある密命を受けるも、直後に信長は本能寺の変により横死を遂げる。生前の命令に従うべく柴田勝家のもとへ向かった牛一は佐久間に捕らわれてしまう。10ヶ月後牛一は、賤ヶ岳の戦いに勝利し、信長の後継者となった秀吉に助け出される。秀吉から信長の伝記を執筆することを命じられた牛一は、山の民の娘、楓とともに信長の遺体の行方を捜し始める。 信長の遺体の行方を追っていくと丹波で山の民の頭で楓の祖父である惣兵衛と出会い、阿弥陀寺の僧清如に会う道筋をつけてくれる。その後、清如と会った牛一は、本能寺から南蛮寺への抜け穴の存在や秀吉は山の民出身であったということ、抜け穴を秀吉が埋めたことが原因で信長が死んだことなどを知らされる。

感想

 明智光秀について書かれた本を読もうと思って読み始めたのだが、ほぼ光秀は出てこない。「本能寺の変」直後から物語は始まるが、主人公は織田信長の家臣であった太田牛一であり、信長の遺体を求めて行くのであるが、この主人公の生き方にとても共感を覚える。このような人物を主人公として信長の姿も描いている著者の筆力は素晴らしい。
 著者は1930年生まれでこの小説を執筆したのは75歳という高齢、そしてこの後にも精力的に歴史小説を執筆している。出会うのが随分と遅くなってしまったが後追いでこの著者の著作を読んでいきたいと思っている。

信長の棺(下)




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