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亡くなった事は内緒というルールを変えたい

何度も改善を提案しているのだが、一向に変わらないことのひとつ。
私の勤める有料老人ホームの「ご逝去された事は他の入居者には言わない。」という社内ルール。

え、なんで?と思うのが普通の感覚だと思う。一緒に生活していた人が亡くなったら教えて欲しいし、体調が悪くて居室から出てこない時点で、周りはなんとなく気付いているだろう。

個人情報云々、というのが会社側の理由。

ある時、元の疾患からの貧血で徐々に衰弱し、もうすぐお別れになりそうな女性がいた。その人は盲目で、よくお世話をしてくれるお隣さんがいた。2人ともお喋り好きでよく楽しそうに一緒に過ごされていた。

私はバレたら怒られるだろうなと思いながらも、自分の信念に従って行動する事にした。

ご逝去された日、娘さんに「お隣さんと仲良くされていたのですが、ご遺体に会わせてあげてもいいでしょうか」と聞いてみたところ、ぜひお願いしますと言ってくれた。

お隣さんは亡くなった事は知らないから驚いていたけれど、顔を見せてお別れをさせてあげる事ができた。お隣さんと娘さんがお互いにお礼を言ったり、笑顔で生前のエピソードを話しているのを見て、伝えてあげて良かった、と心から思った。

入居している人は誰でも、死をそう遠くはない出来事として捉えているはず。「早くお迎えが来ないかしら。」なんて冗談めかして言う人も多い。ただぼんやりと想像する人もいれば、終活をしてしっかりと準備をしている人もいるだろう。

死に向かって進んでいく人たちに、心構えみたいなものを準備する機会があるといいと思っているのだが(法話を聴く機会とか)、やはりセンシティブな問題なのか、ご家族からクレームがくるのを恐れてか、提案しても却下される。私の説得力の不足なのだろうか。

それにしても、自分が死んだ時も周りに隠されるのかと思わせてしまうのは、良くない。死は忌むものではないはずだ。
全員に、もちろん私にもいずれ訪れるもの。もっとオープンに、皆で励まし合いながら迎えられたらいいのに。

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