こどもの日の短い午後

 こどもの日にゲームを買ってもらってほくほくな甥っ子だったが、シュリンク包装を破れずに困っていた。
 となるとおれは、「ほんとうは秘密にしておきたかったけど、ちょっと久しぶりに使ってみるか」と口を挟まざるを得ない。さっそく指先に気のような何かを集め始める。最初こそ甥っ子も「何を言ってるんだこのひとは?」と言わんばかりの冷静な態度で応じていたが、おれがなかなか集中をやめないでいると、「え?ほんとに?」と口にしたりしてワクワクを隠しきれない様子で、そうなれば当然おれのほうもだんだん楽しくなってくるから、いけないとは思いつつもしつこいくらい長く間を取ってしまう。
 そうしてようやく、シュッとゲームのパッケージに指を走らせるが、とうぜん包装は破れない。甥っ子に「ダメじゃん!」と言われる。しかし、そう口にしながらも甥っ子の表情はどこかホッとしているようでもあった。もうすぐ連休が終わる。

#創作大賞2024 #エッセイ部門

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?