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自殺をこの世からなくす、『分人主義』のススメ

 先日、作家である平野啓一郎さんの

私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書) 

を読みましたので、内容をまとめたいと思います。


 さて本書を主観的にまとめさせていただくと、

『本当の自分など、どこにもありはしない。

あるのは、複数の〈分人〉によって形成された自分である』

です。

 私はこの考え方に深く共感すると共に、この考え方が広まれば、世界はもっと生きやすくなるし、筆者が言うように、自殺なども減るのではないかと思いました。


①〈分人〉とはなんなのか

 本書のメインテーマである〈分人〉。これは一体どういう意味なのでしょうか。

本書から引用しますと、

分人とは、対人関係ごとの様々な自分のことである。恋人との分人、両親との分人、職場での分人、趣味の仲間との分人、‥それらは、必ずしも同じではない。(7ページ)

 つまり分人とは、それぞれのコミュニティ、または相手といる時の自分のことで、それらを分けて考えるということです。

そして、それら分人の集合によって、一個人であるあなたが形成されている、という考え方です。

 分人という考え方は、本当の自分という存在を否定します

友達といる時の自分も、会社にいるときの自分も自分(分人)。

どれかが本当の自分なのではなく、それらが合わさったのが自分。

つまり全部をひっくるめて、自分を形成している、ということです。

分人について興味が湧いた、もっと深く知りたいという方は、是非とも本書を手に取っていただきたいです。

この本は一読の価値があると思います。


②なぜ分人という考え方で生きるのがラクになるか

 ではなぜ、分人という考え方を用いると、生きるのがラクになるのでしょうか。

まず、人の悩みというのはほとんどが対人関係によるものといわれています。

自分は誰かより劣っているとか、パートナーと上手くいっていないとか、会社の上司に評価してもらえないとか‥

人の悩みは掘り下げてみると、ほとんどが他人との関係による悩みです。

 悩みがある時、人は自分はダメだとか、消えてしまいたいといった悲観的な感情を持つようになり、悪化すると鬱になったり、最悪の場合は人生を自分で絶つ、という選択をとってしまいます。

しかしそれらは、悩みのある自分を本当の自分、捨てられない自分として捉えてしまっているのが問題だと思われます。

つまり悩んでいるのが真の自分なので、どうしたって逃げられない。

でもそうではなくて、悩みのある自分が、自分のほんの一部でしかないとしたらどうでしょうか?

もし悩んでいる自分がほんの一部でしかなければ、その部分だけ捨ててしまえば良いわけです。

これが分人の考え方です。

嫌な人と関わっている自分(分人)だけ捨ててしまえば、ラクになります。

すると他の分人はそのまま残ります。

他の分人は悩む必要がないので、自分全体=命そのものを捨てる必要がなくなるのです。

分人という考え方が広がれば、世界はもっと生きやすい世界になると思います。

今思い悩んでいる人たちには大きな救いとなるのではないでしょうか。

③分人という考え方を、どうやって活用していくか

 それでは、分人という考え方を、生きていく上でどのように活用していけば良いでしょうか。

 まず、自分の分人について把握することが必要でしょう。

自分の分人について把握するのはそれほど難しくなくて、自分が1日のうちで誰と過ごしているのか考えれば良いです。

電車の中の分人、会社の中の分人、家で家族といる分人、飲み屋で同僚といる分人、ネットの中の分人‥

そしてそれらの中で、どの分人でいる時が自分にとって楽しいかを考えます。

人生で自分の好きな分人の割合を増やしていくことが、幸せに生きるための方法ではないでしょうか。

 私は本書を読んだ当初、分人とは会う人によって規定されるのだから、極めて受動的なものであり、こちらから動きようのないものではないかと考えました。

 しかしその後考え方を改め、会う人によって分人が決まるのなら、自分から会いたい人を選択していけば良いのではないかと考えました。

そうすれば主体的に分人を選ぶことができます。


 分人の割合を、ポートフォリオのように定期的に見直して、どこかに問題はないか点検する、という生き方も面白いのではないかと思います。

 とにかくこの分人という考え方は眼から鱗というか、驚くべき自分の捉え方であり、自分の生き方について考え直させてくれます。

 これはちょっと、久しぶりに良書に出会えたなという感じがします。

本当にオススメですので、ぜひ書店などで手にとってみてください。

とみた


 
















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