カフェストーリー『光の中の君』
《光の中の君》
いつものコーヒーショップ。
表の歩道には、
眩し過ぎるほどの夏の陽射しが降り注ぎ…。
君は、
そのほとんど真っ白に近い光の中で、
ガラス越しにこちらを覗き込んでいる。
こんなに近くにいるのに、
なかなか見つけられないようだ。
眉を八の字にして、
ベソをかいたような顔。
そこのドアから入ってくれば、
すぐに笑顔になれるのに。
でも、
そんな君がとても可愛い。
もう少しこうして見ているのもいいな。
あ、
ようやく気づいたのか、
君の瞳が輝いた。
でも、
眉はやっぱり八の字のまんま。
泣いても笑っても似合う眉だね。
君は自動ドアから颯爽と入って来た。
そして僕を通り過ぎ、
彼氏の待つ隣のテーブルへ…。
僕は、
君が消えたガラスに向かって
ちょっと眉を八の字にして笑いかけ、
小さくため息を吐いて席を立った。
恋人たちの楽し気な笑い声を背中に聞いて、
僕は一杯分のコーヒー代を払い、
彼女が入って来た自動ドアを抜け、
真っ白い光の中へと出て行った。
End
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