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Apple Watchが睡眠時無呼吸の検出に対応しました

2024年9月10日午前2時から行われたApple Eventで,Apple Watchが睡眠時無呼吸の検出に対応するという情報が公開されました。寝ている間のことは自分ではわかりません。ふだん使いのデバイスで健康管理ができるのはとても魅力的ですね。


睡眠時無呼吸とは

睡眠時無呼吸とは,夜寝ている間に呼吸が止まってしまう睡眠の病気です。呼吸が止まったまま死んでしまうということはありませんが,呼吸が止まったのちに大きないびきとともに呼吸を再開するといったことを繰り返します。何度も呼吸が止まっているのに本人は眠ったまま気づかず,知らないうちに睡眠の質を悪くしています。睡眠時間は十分とっているのに昼間眠いと感じる人は,睡眠時無呼吸かもしれません。

最大の原因は肥満ですが,日本人をはじめとするアジア人の骨格は睡眠時無呼吸になりやすいと言われており,太っていない人でも稀ではありません。

Apple Eventでも説明されていましたが,高血圧や糖尿病,心臓の問題などほかの病気の原因になることもわかっています。すでにApple Watchで検出できる心房細動という不整脈(脈の乱れ)に対しても,睡眠時無呼吸が悪さをしていると知られています。とくに若い世代の人たちにとっては予防的な意義も大きい病気であると言えます。

Apple Watchの新機能

今回追加された「睡眠時無呼吸の通知」機能は,加速度センサーの情報をもとに「呼吸の乱れ」を検出する独自の機能に基づくものだそうです。2024年9月に発売となったApple Watch Series 10だけでなく,一部の既存の機種でも対応しています。

紹介されていた通知の例では,数日間の記録をもとに中等症から重症の睡眠時無呼吸が疑われるといったことが表示されています。一定期間ごとに通知が行われるため,繰り返し通知がある場合は,より疑わしいということも言えるでしょう。

Apple Watchによる「睡眠時無呼吸の通知」

これまでにもApple Watchには酸素のレベルを示す「血中酸素ウェルネスアプリ」という機能がありましたが,睡眠時無呼吸を検出できるものではありませんでした。呼吸が止まるたびに酸素のレベルは下がるのですが,上がったり下がったりを数十秒の単位で繰り返すため,睡眠時無呼吸を検出できる精度は備えていませんでした。

もし疑われたらどうすればよい?

Apple Watchで検出された「呼吸の乱れ」が,睡眠時無呼吸によるものだとすれば,治療の対象となる場合があります。昼間の眠気や夜間のいびきなどで困っている人は,睡眠検査を行うことができる医療機関で相談してみましょう。まずは気軽にかかりつけ医に相談してみるとよいでしょう。

睡眠時無呼吸を調べる検査には,自宅で行う簡易モニターと呼ばれる検査と,主に入院で行う睡眠ポリグラフ検査の2種類があります。まずは気軽に自宅で行う検査で調べてもらうとよいでしょう。治療が必要なレベルと判断された場合,ほかの睡眠の病気も疑われた場合は,入院での検査による正確な診断を勧められるかもしれません。

検査により睡眠時無呼吸であると診断を受けた場合,日本では医療保険で治療を受けることができます。より重症な人にはCPAP(シーパップ)と呼ばれる機器を用いた治療が一般的で,鼻に密着させるマスクを毎晩装着することで呼吸が止まることを防ぎます。別の治療法として歯科で作るマウスピースを使ったものがあります。歯ぎしり防止用のものとは異なり,上下両方の歯に装着するタイプです。

保険外診療で行われているレーザー治療は,あくまでいびきの治療であり,睡眠時無呼吸はかえって悪化させることがあります。本来は睡眠時無呼吸ではないことがわかっている人だけが対象となりますので,注意してください。まずは睡眠時無呼吸を調べる検査を先に受けてみることをおすすめします。

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睡眠の分野では「Consumer Sleep Technology」といって,消費者向けの技術が注目されています。睡眠の問題は,生活習慣の見直しで解決することも多い一方で,睡眠時無呼吸のように治療が必要な病気もあります。まだ治療を受けていない睡眠時無呼吸の人たちが病気に気づくきっかけが増え,睡眠の問題に注目する人が増えたらよいなと思っています。

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