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起きられないという病

起きられないのは病気ではなくてやる気の問題だ。

そんな風に扱われて困っている人が実はたくさんいます。

睡眠リズムの病気(概日リズム睡眠・覚醒障害という病名があります)が疑われるものの,病気として扱ってもらえることが少ない原因を考えると,いくつかの問題が隠れていることがわかります。

夜型に不利な世界

体内時計は日の光によって主に調整されますが,調整が苦手な人が一定数います。朝起きるのが得意な人たちは朝型と呼ばれ,夜遅くまで起きていられる人たちは夜型と呼ばれ,病気というよりは体質のバリエーションだと考えてもよいところなのですが,どうしても朝型の人よりも夜型の人の方が,社会生活上支障をきたすことが多いため,病気として扱うことも考える必要があります。

学校も会社も始業時間が8〜9時ごろとなっていることが多く,夜型の人たちにとっては不利な世界だと言うことができるでしょう。

起きられる人には理解できない

朝起きることに苦労を感じない人にとって,起きられない人の気持ちはわからないものです。がんばって起きている人にとっても,起きられない人が病気であるということは受け入れ難いかもしれません。

体内時計が社会生活に合っていないために身体に不調を生じているとすれば、それはがんばってどうにかするものではなく、適切な診断を受けるのがよいでしょう。病気として診断することの意義は、周囲への理解を促すという意味もあります。

病気として説明できるが治療は簡単でない

睡眠リズムの病気として概日リズム睡眠・覚醒障害という病名があります。遅寝遅起きタイプは睡眠相後退症候群と呼ばれますが,残念ながらすごく有効な治療法があるというわけではありません。体内時計を調整する効果が期待できる薬や,高照度の光を用いた治療方法に一定の有効性が見出されていますが,日本では保険診療として提供できるほどに有効なものとは見なされていません。

夜遅い時間に明るい光を避けるように過ごすことや,朝起きたときになるべく太陽の光を浴びるようにするといった習慣を促すわけですが,実際にもっとも有効なのは,10時以降に出社してもよい会社に転職することだったりするわけです。

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睡眠リズムの問題において,病気と正常の境界線はあいまいです。診断をしたとしても、明確に保険診療として提供できるものがないこともあり,睡眠リズムの病気に対して診療を行っていることを明言している医療機関は多くありません。

病気として診断されることもなく,職場や周囲の理解も得られずに苦しい思いをしている人に,差し伸べられる手は多くありません。この現実を知ることで,がっかりするかもしれませんが,自分の体内時計とうまく付き合っていく方法を模索していってほしいと思います。

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