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深い睡眠・浅い睡眠

深く眠りたい。

その思いに反して,眠りが浅かったなと感じることもありますよね。

実は多くの人は深い睡眠と浅い睡眠を行ったり来たりしており,これが正常なパターンなのです。睡眠の「深さ」という概念を少し深堀りしてみましょう。

レム睡眠とノンレム睡眠

レム睡眠という言葉を聞いたことがあるでしょうか。寝ている間にも目が動く現象であるREM(rapid eye movement)が出現する段階をレム睡眠と呼びます。それ以外の睡眠段階はノンレム睡眠と呼ばれます。

ときどき,ノンレム睡眠が深い睡眠,レム睡眠は浅い睡眠という説明を見かけますが厳密には正しくありません。レム睡眠は特殊な睡眠で,目は動いているものの体に動きは見られず,筋肉はだらーんと力が抜けています。一方で脳は活動しており,鮮明な夢を見ていることも多いと言われています。脳が活動しているという点で浅い睡眠ともいえますが,体はしっかり休んでいます。

レム睡眠は朝が近づくに連れて出現頻度が増えてきますが,それまでに良い睡眠が取れているかどうかにもよります。

レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返すことで,昼間に得た情報を整理して,記憶を定着させていくことに役立っていると考えられています。寝ている間も脳は学習しているというわけです。

深い睡眠と浅い睡眠

ノンレム睡眠は睡眠の深さにより分類されます。古くは4段階,現在は3段階に分けるのが一般的ですが,深い睡眠,浅い睡眠という2つに分けることもできます。深い睡眠と浅い睡眠は一晩の間に繰り返すように出現します。深い睡眠は睡眠の前半に多く,明け方には減ってきます。浅いノンレム睡眠に連続してレム睡眠が現れることが多いため,レム睡眠を浅い睡眠と言うのもあながち間違いではありません。

深いノンレム睡眠は年齢とともに量が減ります。20代の若者では眠っている時間の20%程度が深い睡眠ですが,50歳を過ぎると10%未満でも正常です。

最近では睡眠を計測するアプリがあり,「深い睡眠」の量を計測しているものがありますが,医学的に定義される深いノンレム睡眠とは別のものを見ているものも多いので,数字にこだわる必要はないでしょう。

良い睡眠とは何か?

睡眠には様々な段階があり,これがバランスよく出現することが大事なのですが,とくにレム睡眠深いノンレム睡眠が十分に出現するのが良い睡眠であると考えられています。例えばお酒を飲んですぐ眠ると深いノンレム睡眠が減るとわかっているため,お酒は睡眠によくないという言い方をします。

市販の睡眠改善薬やサプリメントの中で,この意味で良い睡眠が取れるという効果が証明されているものはありません。良い睡眠環境を整えて,眠りに入るのが大事です。ソファで寝落ちなんてしてしまうと,深いノンレム睡眠が多く出現するはずの最初の時間を逃してしまう可能性があります。

みなさんにとっての「良い睡眠」はそれぞれだと思います。早く寝付けることを「良い睡眠」だと感じる人や,夜中に一度も目覚めずに朝を迎えることを「良い睡眠」だと感じる人もいるでしょう。夜中にたびたび目が覚めることを「眠りが浅い」と感じる人も多いようです。

朝の目覚めが良いことを「良い睡眠」だったと感じる人もいますが,目覚めのよさは睡眠の質というよりも,起きるタイミングによるところが大きいと思います。例えば浅い眠りから自然に目覚める方がすっきり起きられるのですが,深い睡眠からけたたましいアラームで起きようとすると,しばらくボーッとしているものです。

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正常な睡眠のパターンについて紹介しました。睡眠アプリで深い睡眠を増やすことに躍起になったり,深い睡眠が増えるという噂のサプリメントを探し求めたり,寝付きはよくなるけれど深い睡眠が減ってしまうお酒を寝る前に飲んだりといったことは,目指すべき良い睡眠とは違う方向を向いていたわけです。

良い睡眠を手っ取り早く手に入れることはできません。日々良い睡眠習慣を心がけること,そして良い睡眠環境を整えることが,結局は良い睡眠への近道になるのです。

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