小説(ショートショート) 「白中駅」
友達と同じテーマでショートショートの小説を書いてみようという事になり書いてみました。
今回のテーマは"一人旅" 良かったら読んで下さい!
電車を降りて「白中駅」に着いた。
木造駅舎がひとつだけまわりを繁った木々の緑が囲みまわりには、数件の民家が点在するそんな駅である。
改札を出てすぐ別れ道のところに「白中駅周辺名所案内」という案内版が立てられていた。
目的地を確認して、はじめての道のりを歩いて行くと
「こんにちは」
という声が聞こえた。
声の方をチラッと見ると年齢不詳だけれどおじさんぽい人がこちらを見ている。
他の誰かに声をかけたのだろうと思い素通りしようとしたところで、より大きな声で
「こんにちは」
という声がしたので、あたりをみまわしてみても他には誰もおらず声の主はやはりこちらを見ている。
「こんにちは」
と返して、それだけではどうにも気まずかったので
「いいお天気ですね」
と言ってみる。
その人は答えずに
「あっちは素敵な所だよ」
と呟くように言う。
「あっち?あっちって何処ですか?」
そう聞き返す。
その人は
「素敵素敵、うらやましい」
とにこやかに笑いながら言ったきり、ニコニコしているので
「どうも」
と口にしてまた歩きはじめる。
ちょっとした薮のようになっている木々のトンネルを抜けると、わりと新しい感じの家や昔ながら古い家が立ち並ぶ開けた所に出た。
その先に長い長い石段を敷いた小高い斜面に遠く鳥居が見える。
あれが目的地の「白中神社」、読んできた観光情報には、創建は定かではないものの古くからこの辺りの地域の信仰を集めて創建されたと伝わり、龍神池を起点に小川が流れ滝もある、季節の花々が咲き乱れ緑をたたえる境内はこの世ともおもえぬ美しさであるという。
あのおじさんの言っていた「あっち」とは白中神社の神苑の事かも知れない。
そんな事を考えていると、少し離れた左の角から女の子が出て来てこちらに向かって手を挙げる。
「おーい」
先程の事もあったからなのか、反射的にこちらも手を挙げかけたところで後ろから
「早くー、こっちだよ」
という声がして振り返ると別の女の子が手招きをしている。
手をあげた女の子は笑いながら駆け出して私の横を通り過ぎて行った。
手を挙げかけた事を恥ずかしく思っていると、
何処からともなくソースとケチャップが混ぜこぜになったデミグラスソースのような香りがした。
そうだ今日はハンバーグを食べよう。
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