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【投資家さん必見!!】日銀のETF買い入れ政策の13年間を振り返ろう

【はじめに】
 今回は、日銀のETF買い入れ政策の13年間を振り返ろう、というテーマで話を進めていきます。日銀総裁に黒田氏が就任して10年がたちました。アベノミクスのもと、ETF買い入れの大部分が黒田総裁の下で進んだわけですが、4月に総裁が交代となります。日銀の方針転換もささやかれる中、今までの経緯を解説するとともに、日本株へのメリット、デメリットもおさらいしておきましょう!

目次 
1.         日銀のETF買い入れの変遷
2.         ETF買い入れの条件
3.         日銀は主要企業の大株主
4.         ETF買い入れのメリット
5.         ETF買い入れのデメリット
6.         私の考え

【日銀のETF買い入れの変遷】
 まず日銀がいつからETFの買い入れのスタートから現在まで見ていきたいと思います。わかりやすく年ごとに区切って見ていきましょう。

<2010年10月~>
 前総裁の白川氏の時、2010年から買い入れは始まりました。この当時リーマンショックの後で、日経平均は9000円台、TOPIXは800ポイント台前半で推移していました。買い付けの対象は日経平均、TOPIX連動型のETFとなっており、金額も4500億円と決められていました。

そのあと日本で東日本大震災も起きましたから、未曾有の不景気に大災害にと大変だった頃なんですね。

 私が意外だなと思ったのは、黒田さんの時から始まったんじゃないかと思っていましたが、実は白川さんの時からスタートしていたんですね。

白川前総裁 東洋経済より引用

<2013年4月~>
 2012年年末には安倍元首相が総理になり、翌年2013年4月には日銀の新総裁が誕生しました。その方こそ現在の黒田総裁ですね。安倍元首相が打ち出した政策が、アベノミクスであり、その矢の1本が「大胆な金融緩和」だったのです。

 今回の記事ではETFの買い入れのみに焦点を当てていますので、それ以外の部分は割愛しますが、ETFの買い入れ上限を4500億円から1兆円に引き上げました。市場に資金を流し、デフレマインドの脱却を掲げたわけですね。

<2014年10月~>
 2014年10月には量的・質的金融緩和の拡大(追加緩和)を決定し、ETFの買い入れ上限を1兆円から3兆円に拡大しました。

<2016年7月~>
 日銀のさらなる追加緩和が決定し、買い入れ額上限を今までの3兆円から6兆円へと拡大しました。(2016年1月にはマイナス金利の導入が始まり、9月にはYCCもスタートしています。)

<2020年3月~>
 コロナショックが発生しました。
3/10 黒田総裁が国会に召集され質疑の中で、日経平均にすると19500円あたりが損益分岐点だと国会で発言しました。

3/16 金融政策決定会合で買い入れ額を原則6兆円、上限を12兆円へ引き上げを決定しました。

3/19 日経平均は16500円あたりまで値下がりしましたが、日銀のETFの損益分岐点を大きく割れていると言うことで、1日1000億~2000億近くのETF買い入れを行いました。(いつもは買い入れしても1日に500億円~700億円ほどでした。)

<2021年3月~2023年2月現在>
 金融政策決定会合でETFの買い入れ方針を変更しました。主な変更点は年間買い入れ額のメドである「原則6兆円」を削除したことと、今後の買入対象をTOPIX連動型のETFに限定しました。

 2021年2月には日経平均も3万円を突破していたので、これ以上、日経平均連動型のETFをしてしまうと、買値の平均値を上げてしまうことや、この時点で日経平均採用銘柄225社の大株主になりつつありましたので、株価形成に悪影響があるとの見方から、より分散できるTOPIX連動型に切り替えたと思われます。

 日銀のETF買い入れ状況を見ていくと、2010年12月の買い入れ開始から21年4月までに累計36.1兆円分のETFを購入しております。含み益を合わせるとおよそ50兆円を超える状態でした。この50兆円というのは年金機構の日本株買い入れ額を超え、日銀が日本で最大規模の機関投資家になったことを示しています。

日銀の買いすぎた「50兆円の日本株」はどうすべき? 次期総裁に託された「大問題」より引用(2022年3月末時点)

2011年からのETFの買い入れ額についてはこちらです。

なぜ日銀はETFを買いまくるのか? 「政策の問題点」を点検する より引用

【ETF買い入れの条件】
 ここからは日銀がいつ、どのタイミングでETFを買い入れしているのか?について見ていきましょう。

 結論をお伝えすると、日銀から明確に条件が発表されているわけではありません。しかし今までの買い入れの傾向を見ていくと、その条件が見えてきます。

1.         前場にTOPIXが2%以上値下がりしている。
(日経平均連動型のETFを買い入れしていた2021年3月までは、日経平均が前場で-2%以上の下落で買い付けをしていました。)

2.         買い入れは午後。(株価の推移を見ている感じだと13時過ぎくらいから?)
3.         現在はTOPIX連動型ETFの買い入れをしている。

この3点が日銀の傾向として上げられます。

 ご覧いただきたいのはこちらの画像になりまして、これは2022年8月29日 12:11に私の携帯で株価をスクリーンショットした物です。

 

 この当時、FRBのパウエル議長がジャクソンホールでタカ派の発言をして株価が下がっている局面のものなのですが、面白いのは前場のTOPIXの下落幅が日銀の買い入れをしない-1.99%でピタッと止まっていることです。

 理由は明確には分かりませんが、私は市場の6~7割を占めている海外投資家が、日銀に買い向かわれると不都合なので、介入させないように下落幅を調節しているのではと考えています。

【日銀は主要企業の大株主】
 日銀は13年ほどETFを買い入れてきたわけですが、主要企業の株式をどれくらい保有しているのか上位20社を見ていきましょう。

日銀が「大株主」になる企業100社ランキング!(ダイヤモンド記事) より引用

【ETF買い入れのメリット】
 次に日銀のETF買い入れのメリットについて見ていきましょう。

l  日銀が株価を支えてくれる安心感がある。
→コロナショックの時のように投資家が投げ売り状態でも、1日1000~2000億近く買い向かってくれるので、暴落時でも歯止めがかかりやすいです。

l  企業の資金調達に一役かってくれる。
→ETFで間接的に日経平均採用銘柄や、TOPIX採用銘柄に資金が流れるので、企業の資金調達に一役かってくれる。

 日銀は、これらの政策を通して、「物価の安定」と「金融システムの安定」を目指しているわけですね。

【ETF買い入れのデメリット】
日銀のETF買い入れのデメリットも見ていきましょう。

l  株価の価格形成をゆがめてしまう
→日銀がかった土台の上で株価の価格形成がされてしまうので、本来の企業価値が株価を通して見えにくくなってしまう。

l  企業のガバナンスが正常に機能しない恐れがある。
→指数にまとめて投資してしまうので、仮に日経平均採用銘柄やTOPIX採用銘柄の中で、経営状態が悪い企業が出てきてしまったとしても、資金提供してしまい、本来淘汰される企業でも淘汰されない可能性がある。

l  議決権はすべてETF投資信託を運用している会社に委ねている。
→日銀には「企業経営には関与しないという建前」があり、議決権はすべてETFを運用している会社に委ねています。株式の議決権行使を、「ETFを扱っているから」という理由だけで特定の会社に任せて良いものでしょうか。

l  出口戦略をどうするか未定。
→これが最大の問題だと思っていますが、「ETFを売却するときにどうするか?(いわゆる出口戦略)」です。ETFは、国債のように一定の期間保有すると償還を迎える物ではないので、いずれ売却しないといけないです。このときに「日銀が売るってよ。」ということになれば、日本株は暴落してしまうのでは?との懸念がつきまといます。

【私の考え】
 私は「日銀はやり過ぎた。」と考えると同時に、「日銀に甘えすぎた。」と感じています。確かに株価の起爆剤としてETFを買い入れするのは、選択肢としてはありだとは思いますが、それなら最後どうするか?という出口を明確にし、その出口に向かって景気を回復させていかなければならなかった、というのが今から過去を振り返った反省だと思います。

 4月から新総裁のもと金融政策の舵取りがされますが、もし仮に岸田政権が独自色を出したいという政治家のエゴでアベノミクスをやめる動きに出てしまうと、日銀や年金機構は今までのツケを払わされる局面になるかもしれません。私たちもその覚悟が必要だと思っています。

【さいごに】
 日銀のETF買い入れ政策の13年間を振り返ろう、というテーマで話をしてきましたが、今回の記事はいかがでしたでしょうか?
 日銀の今までの買い入れの変遷や、日本株への影響力の大きさを改めて確認できたと思います。4月に日銀総裁が交代になると言うことで節目のタイミングだと思い、この記事を書かせてもらいました。
 この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。

参考記事
日銀の金融政策とETF購入~退路はあるのか
https://www.waseda.jp/inst/cro/assets/uploads/2020/05/59be92c7f05a8f50f28149853653dcd6.pdf

アベノミクスについて
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/sanbonnoya.html

Bloomberg日銀総裁、必要なら躊躇なく対応-ETF損益分岐点は約1万9500円
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-10/Q6YDRADWLU6A01

2020年3月16日 日銀金融政策決定会合についてのPDF(日本銀行HPより)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2020/k200316b.pdf

日本銀行のETF買入政策に残された課題~出口戦略と並行した議論の必要性~
http://www.camri.or.jp/files/libs/1632/202106301307263765.pdf

日興アセットマネジメント
https://www.nikkoam.com/products/etf/we-love-etf/kihon/kihon12#:~:text=%E6%97%A5%E9%8A%80%E3%81%AF%E3%80%81ETF%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%A7,%E5%AE%89%E5%AE%9A%E3%80%8D%E3%82%92%E7%9B%AE%E6%8C%87%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

なぜ日銀はETFを買いまくるのか? 「政策の問題点」を点検する
https://www.sbbit.jp/article/fj/51562

日銀の買いすぎた「50兆円の日本株」はどうすべき? 次期総裁に託された「大問題」
https://www.sbbit.jp/article/fj/94751

日銀が「大株主」になる企業100社ランキング!(ダイヤモンド記事)
https://ameblo.jp/furusato777com/entry-12687280672.html

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