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なぜ、70歳が主人公の小説が高校生に響いたのか?

『高校生が選ぶ掛川文学賞』の選考委員の皆さんからいただいた感想や受賞理由があまりにも嬉しかったので、許可をもらい一部掲載いたします!!

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『おかげで、死ぬのが楽しみになった』への高校生選考委員の皆さんの感想

・70歳のおじいちゃんたちの話なのに高校生に響く場面ばかりだった。今まで出会った本の中のおじいちゃんで最高のおじいちゃんだった。
本自体が厚くて高校生が皆手に取るとは言い難いが、もっと読んでもらいたくて、部活の友達に宣伝したら、貸すことが決定した。もっと高校生に読まれるべきだと思う。自分が応援したい人、今の人生に少しでも悩みのある人に元気と笑いを与えてくれる70歳のコメディ。いい本に出会った。

・今まで死ぬことが楽しみだと思ったことはなかったけれど、この本を読んでから死ぬことに対するイメージが変わった。
70歳になったとき、自分もこの本の登場人物のように、何かに一生懸命になれる人になりたいと思った。

・目指すものをやり続ける時、挫折してしまいそうな時、この本は大きな支えとなってくれると思う。

・(この本を読んだ高校生と)おじいちゃんたちのすごさを語り合いたい。

・最終候補の5作品の中で、一番メッセージ性が強くて前向きな内容で、今の時代におすすめするなら絶対にこれがいいと思った。人生も悪くないものだという未来への希望を持つことが大切だと気づいた。

・どこの描写も素晴らしいが、過去(挫折)を書いた場面はそれ以上に美しく描かれているように感じた。そんな過去の挫折を振り切って、自分が「わくわく」する道へと進んでいく姿にとても心を動かされた。

・333ページの板垣団長の言葉にすごく救われた。がんばることも、がんばらないことも大切だと気づけた。

・1つ1つの物語がそれぞれ違った気づきを与えてくれる、そんな読めば読むほど心が温かくなる小説だった。また、それぞれの主人公が順番に書かれていて、少しずつ1人1人の過去や不安が明確になっていくのも楽しかった。彼らの会話が、時には楽しく、時には深刻に、時には熱くなるのが、その人柄の上でも高齢者であることを忘れさせられてしまう感じがした。

・‘何様だ!という感想になってしまうかもしれないが、仲間から遺書の謎の解くためにがんばっているおじいちゃんたちがすごいと思った。最後に、遺書の内容の謎が解けるため、それまでに自分の中で考察しながら読むのが楽しかった。

・この本を読んで私は、この人たちのように年を取りたいと思いました。
見返りがあるかは別として、それをやってみたいという理由に正直になれば、自然と結末はついてくるのだと思います。

・大人も高校生を経ているのだなと再認識した。

・希望もなく暗い世の中に無理に決意するのではなく、どんなままであろうとニヤニヤ笑って生きていけという言葉からは、過去に挫折を経験した彼らだからこそ言える、今の時代に生きる人への励ましだと感じた。
今ある大切な人の笑顔のために、なんとなくでもいいからニヤニヤと前向きに生きていきたい。

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この高校生の皆さんからの感想を読んで、受賞の知らせを受けたとき「なぜ70歳が主人公の小説が高校生に響いたんだろう?」と思ったことを少し反省した。

なぜなら僕が小説に惹かれたのは、自分とはかけ離れた主人公だったとしても一緒に旅や事件や冒険を体験できるからだ。物語が「行ったこともない、経験したこともない世界」へ連れて行ってくれる。それが楽しかったんじゃないか。
だから「なぜ70歳が主人公の小説が高校生に響いたんだろう?」という疑問自体が、そもそも問う必要のないものだった。


だって、小説ってそうだから。

物語は、年齢や性別や国境や思想さえも軽やかに超えていく。


それに気づかせてくれた高校生の皆さんに心から感謝します。
また次の作品を書く力が湧いてきました。
さあ、頑張りすぎずに頑張るぞー!!

遠未真幸



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