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インサイドセールスのKGIをアポ数からパイプ数に変更したことで受注率を改善した話

こんにちは、株式会社HERPの冨田です。

スクラム採用を実現する採用管理システム「HERP Hire」を提供しているBtoB SaaS企業でレベニューチームのマネージャーをしています。

弊社のレベニューチームは、2021年6月現在マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4つのファンクションで構成しています。

今回は、2021年3月からインサイドセールスのKGIをアポ数(=商談フェーズ01)からパイプ数(=商談フェーズ02以上)に変更したことで、受注率が19%から28%に改善し、レベニューモデルのスケーラビリティが増大した話をシェアしたいと思います。
※弊社の定義では、初回商談の結果から「1~2ヶ月以内に採用管理システムの導入検討を進めること、採用管理システムの候補としてHERP Hireが含まれていること」が確認できた案件を定義に従い商談フェーズ02以上にフェーズアップする運用をしています。

インサイドセールスは形だけ真似しても全体の効率性を下げ、組織の分断につながることも多いため、少しでもヒントになれば嬉しいです。

HERPのレベニューモデル

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HERP Hire は商材として、リードタイムが短く(初回商談から意思決定までの平均で20日前後)、案件ごとの単価の変動が小さい(4~12万円/月程度)ため、期末に一発逆転ホームランが打てないといった特徴があります。また、満足にセールスができるメンバーがまだまだ少ないといったチーム事情からインサイドセールスチームが商談数の調整弁の役割を担うことで再現性をもって毎月の成長が生まれるようにしています。

レベニューモデルとして、上記のようなプロセス定義をしており、インサイドセールスは、受注(=商談フェーズ06)につながるアポ(=商談フェーズ01)を創出することをミッションとして1.5年ほど活動してきました。
※弊社の定義では、商談フェーズ01は「HERP Hireの導入につながる可能性がある打ち合わせをする日程が決まっている状態」としています。

なぜ、KGIをアポ数からパイプ数に変更したのか

HERPでは、レベニュープロセスのパフォーマンスを測る指標として「月に新規でどれだけのMRRを増やす体力があるか」を重要視しています。

経営リソースの営業への投下や大規模な広告予算の投下やキャンペーンで短期的な成長をつくることよりも、プロダクトの進化・レベニューモデルの適用・人員の増加と成長によって再現性をもってMRRが向上する体力を増やすことを大切にする事業フェーズであると判断しているからです。

SaaSの事業計画を立てたことがある人にとってはあるあるだと思うのですが、この体力を増やすために新規受注金額から逆算してリード数・必要人員を算出すると、アポtoパイプ率やパイプto受注率の変数が大きく影響を与えることになります。

例えば、アポto受注率が10%であれば1受注増やすのに10アポ増やすことが必要ですが、アポto受注率が25%であれば1受注増やすのに4アポ増やすだけで済むため、マーケの目標・インサイドセールス・フィールドセールスの必要ヘッドカウント数が大きく圧縮されます。

2021年2月時点で実現したい事業成長を成し遂げるシミュレーションをした際に、プロダクトの成長にかかる時間、採用からセールスとしてひとり立ちまでのランプタイムを短くすることの実現可能性よりも、アポto受注率を改善することの方がトライする価値があると判断したことが、インサイドセールスのKGIをアポ数からパイプ数に変更した理由です。

アポ数をKGIにすることは、アクション数を調整するだけで量をコントロールできる一方で、以下のような課題が発生していました。

<インサイドセールス>

・アポになりやすい新規リードへのアプローチが優先され、アプローチのカスタマイズが必要な失注掘り起こしやターゲットだが接点の薄いリードが放置される

・電話でできる見極めをせず、とりあえずアポイントとして設定する(打ち合わせの時間をいただくお客様にも非効率な時間が設定される)

・コール数を増やしたいので、フィールドセールスへの引き継ぎメモやリード対応履歴の記録が雑になる

<フィールドセールス>

・インサイドセールスからトスアップされる案件に期待が持てず、準備をぎりぎりにやるようになる

・見込みが薄い案件を適当にこなし、インサイドセールスにフィードバックもしない

・トップセールスはインサイドセールスからのアポを断り自分で案件をつくるようになる。そうでないセールスはインサイドセールスが埋めたアポ以外の時間が取れなくなる

ちなみに、KGIを変更するにあたってSaaSプロダクトを扱う数社にヒアリングをしましたがアポtoパイプ率は50~60%が平均的な水準でした(弊社で58%)。

実際には以下のようにKGI-KPI構造を更新し、それまでアポ数を最重要指標にしていたインサイドセールスチームは、パイプ数を最重要指標にアポ数・アポtoパイプ率を日々追う体制に変更しました。

※変更前

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※変更後

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KGIをパイプ数に変更したことで起きた変化

結果として受注率は、KGIを変更した前後の3ヶ月間の比較で19%から28%まで改善しました。アポtoパイプ率は58%から72%へ、パイプto受注率は33%から39%まで改善しました。獲得しているアポ数は微減したものの、全体のパフォーマンスは20%程度改善しました。

遷移率が改善したことで、今後の計画を立てる際にも現実的なリード目標・ヘッドカウント目標を置けるようになり今後のスケールの目処が立ちやすくなりました。

個人的な学びとして大きかったのは「質にこだわれるKGIを設定することで SaaS の分業体制のレベニューモデルが機能しやすくなる」というものです。実際にチーム内の振り返りを通じて以下のような声が集まりました。

・アポ数の総量が減ったことでフィールドセールスが1社1社に提案時間を確保できるようになった

・アポを獲得するか迷ったリードについて、「受注につながるか」を考えて判断できるようになった(これまでは「困ったらアポにする」というマインドだった)

・インサイドセールスからマーケの施策へのフィードバックが早くなった(リードのペースが悪い、イベントのターゲット含有率が低かった、など)

・フィールドセールスへの引き継ぎの細やかさが増した(電話の印象から得た担当者の性格や相性まで考慮したアサインをするようになった)

・商談が立った時点でパイプ見込み・受注見込みをインサイドセールス、フィールドセールスそれぞれがスタンスを取り議論がはじまるようになった

パイプ数をKGIとして機能させるためにやっていること

最後にKGIを変更するにあたって、機能させるためにやっていることをまとめていきたいと思います。

1. フィールドセールスへのアポのトスアップ条件を言語化

どういう条件を満たしていれば、アポイントにして良いかをフィールドセールスと合意して決め、どのように見極めるかまでオペレーションに落としました。

こういったルールはいかなる時も遵守すべきもの、という思想ではなく、自律的に目標達成をするための指針という思想で運用しており、ルールがある上でどういうスタンスでアポを取ったかをインサイドセールスが伝えること、条件自体をどんどんと更新していくことが重要だと考えています。

2. アポtoパイプ率、パイプ率受注率に影響を与える因子をデータとして蓄積

業界・組織規模・本社所在地のような静的なデータだけでなく、「~~という採用媒体/ツールの利用有無」や「~~名の採用計画」、「注力して採用したい職種は~~」といった直接担当者に確認しないとわからない動的なデータも受注率に影響を与えるので商談が立った際に必須項目化し、Q単位で振り返られるようにしています。

3. アポ獲得日ではなく、初回商談実施日をKPIの基準に置く

インサイドセールスのKPIのカウントタイミングは、何を重要視するかでメリット・デメリットが変わりトレードオフが発生します。

パイプ数を目標に置く場合は初回商談実施日を基準とすることでアポ数とパイプ数の時間軸が揃うため。正確にアポtoパイプ率を取得することが可能になります。

4. アポtoパイプ率、パイプto受注率の異なる商談リードソースごとに経路を分ける

企業の属性データに加えて、どういうきっかけで商談になったかは受注率に大きく影響を与えます。細かい定義は割愛しますが、弊社の場合は11の経路を設定しそれぞれにKPIを設定して担当を置いています。

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このうち、イベント・ウェビナーの経路については前回のnoteにまとめました。

5. アポ獲得時のフィールドセールスへの引き継ぎメモのフォーマット化

初回商談の品質を向上させるために、必要な情報をフィールドセールスとすり合わせ商談当日まで取得しフィールドセールスに引き継ぐ運用を徹底しています。

ただ必要な情報を記入するだけでなく、どういう意図でアポイントにしたかどういうストーリーで価値を伝えると役に立てる可能性が高まると考えているかなどのスタンスを示すことを重要視しています。

フィールドセールスは、引き継ぎメモをもとに初回商談の準備していきます。こちらも工夫しているので、相棒が書いた以下のnote記事をぜひ。

以上です!

インサイドセールスのKGIは、ターゲット・商材の特性・事業フェーズによってインサイドセールスの必要性から議論すべき内容なので、この記事の内容をそのまま真似をしてもうまくいかない可能性が高いですが、考え方のエッセンスなどで少しでも役に立つと嬉しいです。

最後に宣伝です。HERPでは、「一緒にHR業界を変えるサービスを作っていきたい」、「BtoB SaaS のビジネスモデルを科学し洗練させていきたい」という思いに共感してくれる仲間を探しています。興味がある方はぜひ、カジュアルにお話させてください。

インサイドセールスの運用について細かいご質問は、TwitterのDMを開放しておりますのでお気軽にご連絡ください。


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