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【春秋一話】02月 多様性を活かすマネジメント

2022年2月21日 第7132号

 本紙2月14日付で日本郵便㈱東京支社の人材開発担当部長をはじめとしたメンバーと㈱FeelWorks社の前川代表取締役との座談会模様が掲載された。前川代表が本紙に連載してきたコラムを書籍「人を活かす経営の新常識」として上梓したのに合わせ、「コロナ禍における研修のあり方」などをテーマに実施されたものである。
 一昨年2月以降、全国で新型コロナウイルスがまん延し、当初はその予防対策も明確にならなかったことから、まずは感染を防止する観点から人が集まることを避けることになった。そのため、企業各社が例年4月から実施している研修が中止され、日本郵便各支社においても同様に新規採用研修をはじめとした研修が中止された。
 郵便業務や窓口業務など対面での業務が中心の日本郵便にとって、新規採用者への研修は人材を育成していくうえでの必須のものであり、これが実施できなくなったことでの担当部署の悩みは相当なものであったろう。
 採用後の職場内での創意工夫により新入社員は職場に慣れ、徐々に活躍しているようではあるが、その間の各職場での苦労は多く、新入社員の将来のキャリアへの影響にも不安が残る。
 今回の座談会では、日本郵便社内だけでなく国内でも課題となっている女性活躍推進についても話題となった。
 東京支社では中でも喫緊の課題である女性管理者の育成について様々な施策を行っている。「アドバンス会議」、「キャリアアップ面談」などの社内研修等に加え、生命保険会社アフラックとの共同研修も行っているという。
 しかし、特に郵便業務が中心の単独マネジメント局においては、男性が多いことにより、男性上司と女性部下社員との意識、考え方の「溝」があり、これをどのように埋めていくかということに苦慮しているということが話題となった。
 この東京支社の課題に対し、前川孝雄氏からは「人どうしには必ず『溝』はあるもの、だからこそ互いに『溝』をしっかり自覚して常に相手を分かろうとする姿勢が大切」とアドバイスしている。
 前川氏は共著書「ダイバーシティの教科書」(2015年出版)の中で「コミュニケーション・サイクル」を提唱している。これは①違いを認める②価値観を知る③あり方を定める④やり方を変えるという対人関係におけるコミュニケーションのサイクルであり、一人ひとりの違いを認め、寄り添うコミュニケーションが大切という内容である。このコニュニケーションスキルは男性上司と女性部下という関係だけでなく職場内のどのような立場にも適用されるスキルであろう。
 現在、日本国内の企業は、人手不足、人材不足、職場の機能不全といった課題を抱え、重大な岐路に立たされているという。
 事業の根幹を支える人手不足、新規事業や事業拡大に備える高度な人材の不足、そして働く人々の雇用形態やキャリアが多様化しており職場やチームとして機能し、成果を上げることが難しくなってきている。
 今後、少子高齢化社会が進む中でこれらの課題を解決していくことはさらに厳しくなっていくだろう。
 そのため女性が活躍できる職場環境はもちろんのこと、働き方を含めて多様化する社員に対して能力を遺憾なく発揮させることができる職場環境を構築していくことが企業に求められる。さらには、職場でのコニュニケーションの精度を上げ、高い成果、付加価値を創出できる多様性を活かしたマネジメントこそが求められるのではないだろうか。
(多摩の翡翠)

カワセミのコピー


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