最近の記事

「Q」 呉勝浩(著)

【感想】★★★☆☆ 興味があれば 図書館からレンタルしたが、672ページというボリュームに貸出期間内に読み終わるだろうか、そもそも読み進められかと危惧していたが、何となく小説のリズムが良かったこともあり10日ほどで読み終わった。 3人の義姉弟が中心となって、カルト映画のように物語が展開する。文章が細かく途切れるような文体で、それがリズムあるものになっておりいつのまにか読み進んでいる感覚があるが、内容はあまり残らず、共感は感じなかった。 【解説】Amazonから 圧倒的な「い

有料
300
    • 「スピノザの診察室」夏川草介(著)

      【感想】★★★★☆ おすすめ 「2024年本屋大賞」の記事を読んで図書館からレンタルして読んだ。 医者である著者にはこれまでに「神のカルテ」という小説が出版されていて、映画化もされているのだが、あまり記憶がなくこの「スピノザの診察室」が初めての読書本となった。 一人の真摯な医者が主人公であるが、医者としての患者に向かう姿にもその真摯さがよく出ているのだが、私は寡黙なその彼の話す言葉に含蓄を感じ、共感した。 前作も読んでみたい。 【本の概要】 現役医師として命と向き合い続けた

      • 「冬に子供が生まれる」 佐藤正午(著)

        感想 ★★★(興味があったら・・・) 2017年に「月の満ち欠け」で直木賞を受賞した著者の受賞後第1作と評判の1冊を読んだ。 38歳の丸田という青年がある日「今年の冬、彼女はおまえの子供を産む」というメッセージを受け取る。それが本書のタイトルにもなっており、彼はなぜそのメッセージを受け取ったのか、彼女とは誰なのかという謎を秘めながら物語は進む。物語の第一人称が章ごとに変わるのだが、徐々に登場人物は最初の丸田という青年と小学校からの同級生であるもう一人の丸田、そして中学から同

        • 【春秋一話 12月】 W杯カタール大会と日本代表

          2022年12月19日第7175・7176合併号 先月から約1か月にわたり4年に一度のサッカーの祭典であるW杯カタール大会が開催されたが、これまでは欧州や南米のサッカーシーズンがオフになる6月から7月に開催されており、この時期の開催は異例のことであった。  今回の開催地は2010年に決定されたが、カタールの6月から7月の時期は気温が40度に達することもあり、選手やサポーターの健康面が不安視された。カタールの大会組織委員会は、スタジアムの空調設備を整備することで乗り切れるとして

        「Q」 呉勝浩(著)

          【春秋一話 11月】 「映画を早送りで観る」時代とは

          2022年11月21日第7171号 いつ頃からだろうか、録画したテレビドラマを観るときにコマーシャルを飛ばして観るようになっている。放映している時間帯はもちろん飛ばすことはできないが、むしろ放送時間に観ることができても、録画しておいて後で観ることの方が多くなっている。  最近のレコーダーはDVDに加えハードディスクドライブを搭載している機種が主流になっているが、このハードディスクが搭載されてからコマーシャルを飛ばすという観方をするようになった気がする。  最近のテレビによって

          【春秋一話 11月】 「映画を早送りで観る」時代とは

          【春秋一話 10月】 「平成の経営の神様」が遺したもの

          2022年10月7日第7166号  稲盛和夫氏が8月24日に逝去された。27歳で京セラを創業し日本有数のメーカーに成長させ、その後もKDDIの設立、JALの再建などに携わり、「昭和の経営の神様」と呼ばれた松下幸之助氏と並び、「平成の経営の神様」と呼ばれた。  日本の著名な経営者には、ソニーの井深大氏やホンダの本田宗一郎氏なども挙げられるが、二人はモノづくりの天才ではあったが経営には無頓着であり、支える参謀がいた。  また、現代ではファーストリテイリングの柳井正氏やソフトバン

          【春秋一話 10月】 「平成の経営の神様」が遺したもの

          【春秋一話 09月】 他企業の不正問題を他山の石に

          2022年9月19日第7162・7163合併号 日野自動車が日本国内向けエンジンの排出ガスや燃費の不正が発覚したと発表したのは今年3月のことである。2020年に発覚した北米向けエンジンの認証問題の調査と並行して、国内向けエンジンの調査も行っていたが、その調査の結果、排出ガス規制適合とされていたエンジン3機種について不正が行われていたとして、該当のエンジンを使用している大中型車種の出荷を停止する措置を取り、特別調査委員会を設置して調査を行ってきた。  その調査結果が8月2日に発

          【春秋一話 09月】 他企業の不正問題を他山の石に

          【春秋一話 08月】 ウクライナ侵攻と「ゲルニカ」

          2022年8月22日第7158号 ロシアによるウクライナへの侵攻が始まって6か月が経とうしている。  米欧はウクライナへの武器供与などの支援を続け、終結する兆しは見えない。私たちも毎日のように戦闘により破壊される建物などの惨状を様々なメディアで見せられている。  なぜこのような戦争が始まってしまったのだろうか。  ウクライナは1991年のソ連の崩壊により独立国家としての歩みを始めるが、国の西部地域はウクライナ語を話し米欧に親近感を持つ国民が多く、一方東部地域はロシア語を母語と

          【春秋一話 08月】 ウクライナ侵攻と「ゲルニカ」

          【春秋一話 07月】 「求め過ぎない」という選択

          2022年7月18日第7153号   加齢とともに気力も衰えるということはよく聞く。筆者自身も60代半ばになり、定年前の現役時代とは異なり衰えを自覚するようになっている。  気力の衰えとともに、最近、ミスなどに対して以前よりもストレスを感じるようになった。ミスといってもいろいろとあり、仕事上のミスもそうではあるが、手持ちの機器類の操作が思ったようにいかないことに対してもストレスを感じ、加えてストレスに対する耐性が衰えているように感じる。  こんなことを感じ始めてふと以前に読

          【春秋一話 07月】 「求め過ぎない」という選択

          【春秋一話 06月】 始めるに遅すぎることはなし

          2022年6月20日第7149号 4月18日号の本紙で経営コンサルタントの小宮一慶氏が経営者の学ぶべきこととして勧めている3つのうちの「経営の原理原則を学ぶ」ということについて触れた。今回は「何千年もの間、多くの人が正しいと言ってきたことを学ぶ」ということについて触れたい。  「何千年もの間、多くの人が正しいと言ってきたこと」とは具体的には「論語」や「老子」などの中国の古典や「聖書」「仏教聖典」などであるが、「これらを学ぶことなくして本当の正しい判断はできない。そしてこれらが

          【春秋一話 06月】 始めるに遅すぎることはなし

          【春秋一話】05月 情けはひとのためならず

          2022年5月23日第7145号  諺に限らず慣用語を間違って解釈して誤用しているということがある。例えば「役不足」という言葉を「私には役不足です」などと謙遜したつもりで言うことがあるが、これは誤用である。本来は「実力に比べて役割が低すぎる」という全く逆の意味である。同様に「情けはひとのためならず」も誤用しやすい諺である。  かなり以前の話だが筆者が学生の頃、友人から何か頼まれごとをしたことがある。あまり大した内容ではなかったこともあり、この頼まれごとに応じることはあまり彼

          【春秋一話】05月 情けはひとのためならず

          【春秋一話】04月 経営者に必須の資質は真摯さ

          2022年4月18日第7140号 新年度となり4月1日付の人事異動が報道された。本紙4月11日号では南関東支社などで局長昇任予定者のマネジメント研修が行われた記事が掲載されていたが、受講された方々もそれぞれの組織の経営者(マネージャー)としてマネジメントをスタートさせているだろう。  経営コンサルタントの小宮一慶氏は、経営者に対して3つのことを学ぶよう薦めている。それは「新聞などを通して生きた経済や社会の動きを知る」「経営の原理原則を学ぶ」「何千年もの間、多くの人が正しいと言

          【春秋一話】04月 経営者に必須の資質は真摯さ

          【春秋一話】03月 平野選手のセルフマネジメント

          2022年3月21日第7136・7137合併号  2022年2月20日、北京で開催されていた冬季オリンピックが閉幕した。前年、東京五輪が新型コロナウイルスの緊急事態宣言の中で開催されたのと同様に、今回の北京冬季五輪も中国独自のゼロコロナ対策の中で開催され、選手や関係者は他との接触のできないバブル方式という厳戒態勢の中で参加することとなった。  様々な競技で選手の活躍が報道された一方で、今回は運営上での問題点も話題となった大会であった。  最も印象深いのはROCとして国名を名乗

          【春秋一話】03月 平野選手のセルフマネジメント

          【春秋一話】02月 多様性を活かすマネジメント

          2022年2月21日 第7132号  本紙2月14日付で日本郵便㈱東京支社の人材開発担当部長をはじめとしたメンバーと㈱FeelWorks社の前川代表取締役との座談会模様が掲載された。前川代表が本紙に連載してきたコラムを書籍「人を活かす経営の新常識」として上梓したのに合わせ、「コロナ禍における研修のあり方」などをテーマに実施されたものである。  一昨年2月以降、全国で新型コロナウイルスがまん延し、当初はその予防対策も明確にならなかったことから、まずは感染を防止する観点から人が集

          【春秋一話】02月 多様性を活かすマネジメント

          【春秋一話】01月 「お客さま第一」の実践とは

          2022年1月24日 第7128号  今年も日本橋郵便局で2022年年賀元旦配達出発式が行われた。日本郵便は2022年元旦に配達された年賀郵便物数の速報値が前年比11%減の10億3000万通だったと発表した。  2011年に20億枚を超えていた年賀状も毎年減少している。以前から虚礼廃止により企業が年賀状を取りやめる話題はあったが、今年はさらにSDGsへの機運の高まりや新型コロナ感染の影響もあったのではないだろうか。  社会環境やお客さまの意向により製品の売上が左右されることは

          【春秋一話】01月 「お客さま第一」の実践とは

          【春秋一話】12月 不祥事の陰にある同調圧力

          2021年12月20日第7123・7124合併号  11月初旬、新聞に掲載されていた死亡記事に目が留まった。社会人類学者で、東京大名誉教授の中根千枝さんが10月に94歳で亡くなったとの記事だった。  中根千枝さんは1967(昭和42)年に「タテ社会の人間関係」を著し、序列偏重の日本社会を考察した。その著書は半世紀以上にわたり読み継がれ100万部を超えるベストセラーとなっている。  この著書の中で、日本社会では「場」、つまり会社や学校という枠が重大な役割を果たし、その中では「タ

          【春秋一話】12月 不祥事の陰にある同調圧力