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成果主義人事制度が失敗した3つの理由

私が人事制度のコンサルティングを始めた当時は、「成果主義人事制度を導入して悪くなった社風を元に戻したい」というご要望をよくいただきました。
日本ではバルブ崩壊後に成果主義人事制度の導入が進み、その大半が失敗したことで、「日本に成果主義は合わない」という認識が定着しました。
成果主義人事制度が失敗した理由について、私の考えを書きました。

私が人事制度のコンサルティングを始めた当時は、「成果主義人事制度を導入してめちゃくちゃになった社風を元に戻したい」というご要望をよくいただきました。

その当時の経験があって、成果主義人事制度に対してはあまりよい印象を持っていません。

しかし、仕事においては「成果」というものはとても大切で、「必要とされない」「役に立たない」ような仕事を長く続けていくことはできません。

ここで切り分けなければならないのは、「成果主義」と「成果主義人事制度」の違いです。

仕事において「成果主義」という考え方は、とても大切だと思います。

「成果」を「誰かの役に立つこと」と位置づけると、仕事において「誰かの役に立っていること」というのは、とても大切です。

しかし、「成果」を何かしらの方法で測定して、人事評価や給与決定の根拠にする「成果主義人事制度」というシステムにしようとすると、いろいろ無理が出てくると思っています。

仕事において大切な「成果」を重視するという意味で、とても理にかなっていると思われる「成果主義人事制度」がなぜうまく機能しなかったのか、その大きな理由を3つ解説していきます。


■「何を成果とするのか」が難しい

1つ目は、成果の定義が難しいということです。

何度も申し上げますが、仕事において成果をつくる、つまり誰かの役に立つということはとても大切なことです。

しかし、成果主義人事制度というシステムにしようと思うと、「何が成果なのか?」を具体化しなければなりません。

この最も簡単な方法は、数値にできる「貢献」だけを「成果」と位置づけることです。

しかし、数値にできることだけが成果ではありませんので、この段階で数値化できない社員さんの貢献が無視されることになります。

そうするとその弊害として、社員さんは自分のことしか考えなくなるのですが、それは社員さんからすると合理的な判断であり、問題はシステムにあるのです。


■「成果の個人への紐づけ」が難しい

2つ目は、成果を個人に紐づけることが難しいということです。

ほとんどの会社では、仕事は複数の社員さんの協業によって進んでいきます。

たとえば、売上があがったとしても、それは「特定の誰か一人」の成果ではなく、複数の社員さんの仕事のおかげということがほとんどです。

会社に大きなインパクトを与える成果ほど、多くの社員さんが関わっています。

それを誰かの成果として特定することは、不可能と言えるでしょう。

その対応策として、部署やチームごとに按分するルールをつくっている会社もありますが、実際にはそのルールが社員さんの不満のタネになっています。

実態に沿っていないことが多いのです。

また、社員さんの成果が、その社員さんの頑張りによるものなのかも、判断が難しいところです。

たとえば、ある店舗は立地が良くて、誰でも成果があがるということも実際にはあります。

このように、成果を個人に紐づけるのはとても難しいのです。


■給与の乱高下が発生してしまう

3つ目は、社員さんの給与が乱高下するリスクがあるということです。

実際に成果主義人事制度を導入したとして、成果をあげた社員さんの給与をグンと上げたとすれば、その社員さんが次の期に成果をつくれなかったら、給与をグンと下げなければなりません。

成果主義人事制度のコンセプトを厳密に当てはめるとそうなりますが、それが社員さんのためになるでしょうか?

私はならないと思います。

成果主義人事制度を導入した方からお話を聞いて意外だったのは、高業績者も疲弊していたことです。

いくら優秀な人でも、すべての取り組みを成功させることは至難の業で、多少の波は起こります。

高いレベルの成果をつくり続けなければ給与が下がるので、給与を維持していくプレッシャーで疲れ切っておられました。

また、1番目と2番目の理由にもあった通り、給与の根拠となる一人ひとりの成果の妥当性にも問題がありますので、そんな妥当性に乏しい根拠で給与が乱高下すれば、受け入れられるものではありません。


■「ノーレイティング=脱成果主義」という誤解

「成果主義人事制度が失敗した」という認識が定着してからノーレイティングという新しい人事制度が出てきたので、

ノーレイティングは成果主義ではない

と捉えている人もいらっしゃいますが、これは誤解です。

ノーレイティングを導入している企業が多いアメリカでも、ノーレイティングを導入した企業が人事ポリシーとして「Pay for Performance(=成果主義)」を上げている企業も多いです。

私も、仕事において成果は大切だと思います。

しかし、成果主義という考え方を、従来の人事制度のフレームワークで実現しようとすると、システムとして無理が生じてきます。

そこで、従来のフレームワークを捨てて、もっと具体的にいうと点数づけやランクづけを廃止した、新しい人事制度のフレームワークとして登場したのがノーレイティングなのです。

生きがいラボブログ「成果主義人事制度が失敗した3つの理由」より引用


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