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ファンファン物語 第2章 「ヤサイ星団の記憶(前半)」1節から5節の1-3まで

ファンファン物語2 はじまり! 冒険ファンタジー『ファンファン物語』は、だてあさいちが、2013年頃から書き始めた物語。高度に成長したパンダ族のファンファンが、タイムスリップをして、ヤサイ星人(にんじん)キャロラインに出会うところから物語ははじまる。ファンファンとヤサイ星人の本当の敵とは?
冒険を通して、ヤサイ嫌いを克服していくファンファン。野菜が嫌いなパンダという設定に、いろいろなヤサイ星人が登場して、野菜さえも工場で管理しはじめている現在の消費社会への警鐘をならしている。

ファンファン物語2 【登場人物】  

パンダ族
ファンファン
おかあさん (リーファン)
おあとうさん(タリシェン)

ヤサイ星人
ブロッコリー星
ロマ王子
ブロッコリー・ヘレン
ダイコン星人

にんじん星
キャロライン
アンクルフリン
<第39代にんじん星大統領フリン・ランドルフ・マサカド・ゲントレーレ大統領>


ブタ族
ピギー園長
ブタあたまの工場長【ヤン・ガオルー】
ブタに飼われたサル・アイゴール
しゃべることを覚えたお猿さん

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#物語 #冒険ファンタジー #だてあさいち #ファンファン
#小説 #書籍化ブログ

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1節 <パパ・タリシェン>

ここは、ワスレンボ合衆国のニッポン州トキオにあるカプセルマンション・シバウラン5-5にあるファンファンおやこのおうち。

時は、宇宙歴210年 西暦2225年 です。
動物たちは、考えることができて、しゃべることもできて、みんな仲良く・・・いや、彼らは仲良くと思っていました・・・が生活をしていました。
大きい耳の小パンダ・ファンファンがお絵描きをしています。

夢の中?・・・タイムスリップ?で出会ったヤサイ星団にんじん星からきたキャロラインやアンクル・フリンをクレヨンで描いて色をつけていました。 そばで洗濯ものを折りたたんでいるママにファンファンがききます。
「ママ、僕が眠っている間、ママは何をしていたの?」 
甘えた声で聞いてくるファンファンにママはおしゃべりをはじめます。
「何って・・・ママは洗濯をして・・・洗濯といっても1週間分たまったあなたのパンツばかりだけど・・・その後、夕方のおかずのオーダーをコンピュータに打ち込んで、で、お茶を飲まなくちゃと思って、台所にたったらお茶がないことに気がついて・・・お茶っていっても、カリウス井筒堂のお茶じゃないと・・・ママのおばあちゃんが言うのには……」

「ママ、ママ!また長い話がはじまると、僕、ねむたくなっちゃうよ!」 
ファンファンは、ママ・ファンファンの言葉をさえぎって言います。
その時、玄関のチャイムがなり、マルチドアが音をたてずに開いて、
ファンファンのお父さんが帰ってきました。 
「パパ!パパ!」ファンファンはうれしくてパパのところへかけだしました。
「ファンファン!ひさしぶりだね!」
ファンファンのパパ・タリシェンは、ファンファンをすくいあげ抱き上げました。 
「パパ、パパ!」ファンファンも嬉しくて、パパのなすがままにだかれています。 
パパ・タリシェンは、トキオのワーキング・ガバメントに勤めていて、長官とよばれていて、先週から外国に出張にいっていたのでした。 

「ファンファンおみやげだよ!」パパは、きれいに包装されたプレゼントボックスをファンファンに差し出しました。 
「やったーーー、何かな、開けていい、ね、パパあけていい」
「もちろんだよ、いいよ」
でも、ファンファンはそんな声が届く前からボックスをあけはじめていました。 
そのプレゼントボックスの中には、青色の四角いボックスが入っていました。
「ワーォ! エア・スケーターじゃないか!」「やったー!」 
ファンファンはその青いボックスを取り出しました。 
ボックスの両脇に取手がついていて、両手で宙に浮かせて、取手についているボタンを押します。 するとボックスの下からメタル棒が直角に伸びてきました。
そして、そのメタル棒は、地上に届く前に、ファンファンの方に向かって、板切れがスッと伸びてきました。
板きれの下にはタイヤはないのですが、左側の取手のボタンを押すと板の下からエアがでてきて、エア・スケーター自体が空中に浮かびました。 最新型のエア・スケーターです。
ファンファンは板きれにおそるおそる乗って、バランスを保ちました。 
「おっ、さすがだファンファン! バランスを保って、このハンド・アクセルボタンを静かに押せば前進するよ!」とパパがアドバイスします。
ファンファンは「知ってるよ、友達のエア・スケーターにいつも乗っているからね!」と嬉しそうに答えます。 
「やったー、ママ! マンション屋上広場ではしらせてきていい?!」と、
ママに向かっていうと、ママは笑いながらもファンファンにこういいました。 
「ダメよ、みんなでディナー!さあ、ごはんを食べましょう!」

ディナーが終わった後、パパといっしょに屋上広場でエア・スケーターを走らせた後、ファンファンは、リビングのソファで寝転びながら、パパの外国の話や、ファンファンの夢の話をしていました。
「ねえ、パパ、それでね、夢の中でそのブタあたまの工場長をボクがやっつけたのさ!」
ファンファンは得意げにいいました。 
「そうなの、ファンファンは強いわねー」とママが言うとパパが
「そうだね、ブタ族とパンダ族は本当に長い間、けんかをしているからね!」
「一度は平和になったこの世界に、混乱をもたらしたやつがいるんだ」
「そいつらは、最初、本当にパンダ族や他の動物たちの仲間のように見せかけていた。」
パパは、すこし声をあらげて続けます。
「最初は、希少価値なパンダ族のために竹林畑をつくるといって、人間や他の動物たちがいやがるのを無視して、巨大な山を買い取ろうとした。パンダ族は、食料不足の自分の部族のためにお金を出して、協力した」
「そして、ブタ族の連中は勝手に反対する人たちを買収したり、ありもしないことを書いたビラをばらまいたりして、その土地から人々を追い出したんだ」
「そして、最後に竹林を作るといっていた場所に、自分の野菜工場をつくったんだよ!」 
鼻息のあらいパパにファンファンは驚きます。 
「パンダ族は、みんなで必死にためたお金を返してほしいというと、ブタ族は逆ギレして、“おまえたちの偏食ぶりが自分たちを苦しめてるんだ!笹だけでなくて、他の野菜も食えよ!”」
「そして、ブタ族はどんどん勢力をのばしていって、いまでもワスレンボ合衆国の反対側の大陸にあるソッポムキ連邦の田舎にブタ国を持っているんだ!」
パパの目は燃えるように赤くなっていました。
「パンダ族は、そのときのことを決して忘れないんだよ」
「なにせ、そのお金はパンダ族全員で働いて出し合った、本当に尊いお金だったんだ!」
パパの怒ったまなざしを見て、ファンファンも胸がムカムカしてきました。
「夢の中の工場長も本当にいやなやつだったよ!」
「そうかい、パパは今でもパパのおじいちゃんのおじいちゃんが伝えてほしいとメモリーディスクに録ってあった言葉を覚えているよ! 
“我らパンダ族は、このことを忘れてはならんのじゃ!”
“ブタ族の首領ヤンという本当に汚いやつのことを! 永遠に忘れてはならん”って・・・
“いつの日か100倍にして、仇をかえす“んだって」
「ヤンだって!!」ファンファンはハッとして思い出しました。
あのブタあたまの工場長の名札に書かれていた名前を! 
【ヤン・ガオルー !!!】

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「さあ、ファンファン、早くおやすみなさい。明日はメインストリートにある国際児童図書館にいくんでしょ。」ママが、パパと話している中に入って言いました。
「まだ、ボクは眠くないよ~。昼寝をいっぱいしたんだから~」とファンファンがいうと
「何言っているの、あなたがいっぱい昼寝をしたのはおとといの話なのよ」
『えっ?おとといだって・・・えっ、おかしいなー』
ファンファンは自分の体とは逆の白黒パジャマをきて、歯をみがいて、ベッドにはいりました。
『ママって変だなー、長いお昼寝がおとといの話だなんて・・・パパが帰ってきたのは・・・
あれ、昨日だっけ???』ファンファンは、不安になってデジタルパッドのカレンダーを立ち上げました。カレンダーの文字<2225年5月17日(日曜日)>が空中に浮かび上がりあがりました。
『そうだよねー♫、明日は月曜日で図書館にみんなでいくんだよね♪ーーー』
ファンファンは、あのキャロラインからもらったフルートがそこにあるのを発見しました。
『そうだ、そうだ、あのフルートはキャロラインからもらったんだ! 夢の中ででてきたんだよ。。。 あっ、パパに今禁止になっているタイムトラベルの話を聞くのを忘れた』ファンファンはモゴモゴと口の中でひとりごとをいいながら、まぶたが重くなるのを感じました。 
『あー、あー、大きいあくびが風船になって、部屋の中をとびかっているようだ・・・あはは』

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2節 ロマ王子との出会い

ファンファンは、手にいっぱいの抹茶入りクリームケーキを口にほおりこもうとしていました。
「あーおいしいなー。この抹茶はいったケーキは!」
ファンファンは何個も何個も手にとって食べ続けます。
と、急に誰かがおなかをつついている感じがして、自分の大きいおなかを見ました。

すると長い葉っぱの手をもったミドリのちいさいモノが、ファンファンのお腹の上に乗っかっていました。
「あれっ、抹茶?ケーキが動いてる?」
ファンファンは寝ぼけまなこで、そのちいさいモノを見ました。
「おい、しろくろクマ、もういいかげんおきてよ!」
その小さいモノがしゃべり始めます。
「何回も君のお腹を揺さぶり続けているんだけど・・・おきた?」
小さいモノは、小さい身体に似合わなくけっこう大きな声で叫んでいます。 
ファンファンは目をこすりながら、ミドリの小さいモノに話しかけます。
「な、なんだい君は・・・」どうやら小さいミドリのあたまはブロッコリーのようでした。
ブロッコリーがファンファンに話しかけます。
「ボクの名前はロマ3世! ヤサイ星団ブロッコリー星の王子だ!」
そのミドリあたまのヤサイは小さい目をこちらにむけて話しかけてきます。 
『なに? どうんしたんだい、いったい』
ファンファンは辺りを見回しました。

そこはファンファンの部屋ではなくて、寝ているのはファンファンのベッドじゃなくて
大きいワラがしいてあって、そこの上にファンファンは横たわっていました。 
そして、ファンファンは、足をロープでしばられているこちに気づきました。
「わぉー、痛いじゃないか!これはなんだい!」
「ありゃりゃ、こりゃこまった。足が動かなくて、起き上がれないよ!」
ファンファンは緑のブロッコリーにむかって吠えました。
びくつきながら、小さいブロッコリー頭が答えます。
「ぼくだって、わからないよ! 眠りから起きてみたら、
このくさいケージ(おり)の中にいて、君がグースカといびきをかいていたんだから。」 
ミドリの頭をかきながらロマがいいます。
ロマ王子の小さな目はまるでごま粒みたいで、ファンファンはロマ王子がどこを見ているかわかりませんでした。 

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「こんどはブロッコリーか・・・」ファンファンは小声でいいます。 
彼らがはなしているとなりのケージから、黄色いサルがこちらをにらんでいました。
そして、その黄色いサルのケージのパネルには、
<マエバシ動物園行き 管理責任:A.A.G.C>という文字が書かれていました。 
ファンファンはとっさに考えがひらめきました。
「ここはどうやら、動物園らしいね。 ボクの時代にはもう動物園は廃止されてなくなってるから、ボクはまたタイムスリップしたわけだね。おっとこれも夢なのかな?????」 
ちょっとうんざりして言ってみたけど、でも内心、新しい冒険で少しワクワクもしていました。

ロマ王子がいいます、
「シロクロくんはタイムスリッパとかでここにきたかもしれないけど、
ボクとボクの家族はちゃんとヤサイ星団から正式に地球に招待されてやってきたんだ。」
「ゆうべはブタ族の官邸とかに行って、大きなパーティがあって、
それから大きなホテルにとまって、ふかふかのベッドで寝ていたのに!」
「おきたらこんな臭いオリの中だ!」
「やい、しゃべるシロクマ!ボクのパパとママをどこにやったんだ!」
「おいおい、待ってくれよ!」ファンファンは答えに困りました。
「ボクにだってわからないよ。あと、ボクはただのクマじゃなくてジャイアント・パンダ族のファンファンという名前をもっているんだよ」
「ロマ王子、ちょっと僕のお腹の上から降りてくれないかい?」
ファンファンがいうと、ロマ王子はゆっくりとやわらかいファンファンのお腹からおりました。 
「そうか、ファンファンくん。ボクはさっきまで、そのバケツに入れられていたんだ。地球の野菜といっしょにね! 」ファンファンはその不潔なバケツをみました。
その中には、栄養分が少なそうな野菜がまぜこぜに入っていました。

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「そのバケツから抜け出せなかったら、君に食べられてしまうとこだったんだ!」 
ロマ王子が気高いトーンでファンファンに言います。 
「ロマ王子、僕らは野菜をほとんど食べないよ!笹の葉っぱが主食だよ。でも、にんじんもいまでは食べられるけどね・・・」ファンファンはキャロラインのことをおもいだしました。
「そうだ、ロマ王子は、ヤサイ星団からきたんだったらにんじん星はしっているだろ!」
「そのにんじん星にも偉いひとたちがいて、アンクル・フリン・・・とか、ボクの友達はキャロラインっていうんだけど・・・」「知らないよね?」 というと
ロマ王子はファンファンの言葉を聞きながら、少しおどろいたように
「ファンファンくん、にんじん星は僕たちのとなりの星だよ!」
「そして、アンクルフリンというのは、第39代にんじん星大統領フリン・ランドルフ・マサカド・ゲントレーレ大統領のことだと思う」
「えっ、アンクル・フリンってそんなに偉い人だったの・・・んでまた、名前ながいねー」
ロマ王子は続けて「キャロラインは、有名な科学者アルフレッド・ファーイスティン博士のムスメさんだと思う」とファンファンにいいました。
ファンファンはその後、キャロラインに出会ったこと、野菜工場で豚あたまの工場長がアンクルフリンにしたことなどを夢中で話しはじめました。 
ロマ王子は小さい目で、時々笑いながらファンファンの冒険話を聞いていました。 

その時、突然大きなサイレンが鳴り響きました。
さっきの黄色いサルも驚いて、キィキィーと叫び声をあげ、となりの部屋からはドタンバタンと他の動物たちの叫び声といっしょに聞こえていました。 
「なんだろ」ファンファンはロマ王子をとっさに自分の腕にかかえこんで守りました。 
やがて、サイレンは聞こえなくなりましたがオオカミみたいな遠吠えが聞こえてきました。
「なんだろね」ファンファンとブッロコリー・ロマ王子は抱き合いながら様子を伺っていました。
その後、バーンという鉄砲の音がして、その遠吠えは聞こえなくなりました。
すこし静かになったと思った時、ファンファンたちがいる部屋にドーンという音ともに、何かが入ってきました。
「ブフフ、しっかり見回りをするんだブフィ」
「あのオオカミは、あのくさりをひきちぎってあの森にはいっていったんじゃないか?。みんなをもう一度点検しておかないと、またにげられちゃうだなーブフフ」ブタの頭をもった白衣をきた男と小さい背丈の人間が入ってきました。
『あっ!ブタあたまの男だ!』ファンファンは声を出さずに黙っていました。 
腕の中にいるロマ王子も目を細めて、そのブタあたまの男をじっとにらんでいました。 

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小さい背丈の人間<といっても、肌の色は黄色くてとなりのオリにいるサルにそっくりでした>が、ブタあたまの男にいいます。
「ピギー園長、あのオオカミはなんだか、
他のオオカミとは違っていて、言葉をしゃべりだしたんですキィ」
「そして、エサやりをごまかして、オリから出て、さまよっていたんです。
あやうく街へ出て行く所を、ピギー園長の麻酔銃一発でしとめて、助かりましたキィ。」
「ブフフ、とはいえ、チミねぇ、油断してはダメだよ。
あいつらはケモノなんだよ。いくら僕たちのように言葉をマスターしたって、
結局、毛皮の下はコワいコワいアニマルなんだ。ブフォォフォ!」 
と豚あたまの園長が答えます。 

「そして、ワイたちのボスは、チミたちハンブン人間がつくったA.A.G.C 協会<All Animal Goes to Cage (すべての獣を檻に入れろ)>の名誉会員だからねー。」
「チミはもちろん、この動物園はじきじきワイらのボスとA.A.G.C協会から多くの援助をもらっているのを知ってるだろ。本当に感謝しなくてはならないんだブフォフぉ!」
「キィヒヒ」
「ブフフ」
「キィヒヒ・・・ヒヒひ」
彼らは気味の悪い笑い声を発しながら、ファンファンたちのオリを通り過ぎました。 

ファンファンはだまって、そしてロム王子の小さい頭をかかえこむように抱きかかえて、彼らがドアの向こうに消えるのを見届けました。 
ロム王子がファンファンのふさふさの毛皮の中からはいでてきて、言いました。
「ファンファン、いまのはなし聞いたかい!ここはA.A.G.C協会が経営する動物園なんだ。
ボクのパパとママはA.A.G.C協会の実態を調べるべく、ヤサイ星団から送られてきたんだよ!」
「あの時、みんなでブタ族のパーティに呼ばれたのもワナだったんだ!!!
パパとママもボクみたいに誰かのえさになってしまったんだ。ワァーーーーーーーーん。」
ロマ王子は、その小さな目とミドリ頭から大きな涙を流しました。 
ファンファンは、ロマ王子を慰めます。
「まだ、ロマ王子のパパとママが誰かに食べられたって決まったわけじゃないだろ」ファンファンは、こういうときこそ勇気を振り絞って、慰めてあげなくてと思いました。 
「さあ、ロマ王子!ぼくたちは2人でこのオリをでて、君のパパとママを探しにいこう!」 

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3節 大脱走のテーマ 

「さあ、ここから脱出しよう!」
ファンファンは部屋の中に何か脱出できるものがないかを探し始めました。
「うーーーん、ワラのベッドとバケツか。・・・どうしよう?」
部屋の中をいろいろと探しながら、むかい側にある黄色いおサルのオリを見てみました。 
すると、おサルのオリの前に、パパからもらったエア・スケーターの青いボックスが落ちていました。
「あっ、あれは!パパからもらったエア・スケーターだ!」

「ねえ、ロマ王子、あの青いボックスはボクのもので、タイムスリップの時にいっしょに運ばれたに違いないんだ!」とファンファンがいうと、ロマ王子が「タイムスリッパ?・・・」というとロマ王子の頭がぴかっと一瞬光りました! 

光ったと同時にロマ王子はひとまわりも大きくなっていました。 
「あれっ?ロマ王子、光って大きくなったね。どういうこと?」とファンファンがいうとロマ王子が答えます。
「僕らは日に日に大きくなるのさ。ボクはいつも健康的な生活を送っているから、他のヤサイ星人とは違って、毎日すこしづつ大きくなるんだ!」
「太陽がないときは、自分のこころのなかにある太陽がひかって、そんで成長するんだよ!」
ファンファンは黒目を大きくしながら、ロマ王子のはなしを聞いていました。
「そうだ、ファンファン、少し大きくなったけど、このボクが、オリの間をすりぬけて、あの壁にある鍵をもってくればいいんだ!」
ロマ王子は、黄色おサルの脇にある壁にあるカギをみあげました。
「早くしないと、また成長しちゃうから」ロマ王子はオリの間をすりぬけて、壁にむかいました。 

でも、ロマ王子の背は低くて壁のフックにかけてあるカギにはどうしてもとどきません。
「あー、だめか~」ファンファンはちょっとがっかりした声をだしました。
するとロマ王子が「ファンファン、この青いボックスは何をするもんだい」とオリの中にいるファンファンに向かって叫びました。
「あー、その箱はねえ、エア・スケーターといって、青いボックスのボタンを押すと・・・そうだ!ロマ王子、その青いボックスのところに行って、ボタンを教えてみて!」ファンファンはロマ王子に叫びました。 
ロマ王子は、青いボックスのところに近づこうとしました。すると、むかい側の黄色おサルが手を伸ばして、青いボックスをうでの中に囲い込みました。
ロマ王子はとっさに、青いボックスを取り返そうとおサルの腕にかみつきました。
しかし、おサルは平気な顔で青いボックスをいじっています。 

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「ヴァーアーー!」
ファンファンは、カエルがつぶされたような声をあげました!
するとおサルが一瞬、青いボックスをはなしたのです。と同時にサルの腕にからみついていたロマ王子が青いボックスをひったくり、ハンドル部分のスイッチを押しました。
するとハンドルの下からメタルの棒が伸びてきました。
黄色おサルはびっくりして、飛び下がります
「ギィーーーー!!!」
ロマ王子は何とかエア・スクーターを立たせて、その上に乗っかりました。
エア・スクーターは宙に浮かび上がり、ロマ王子はゆっくりと壁に近づけます。
近づいたエア・スクーターのハンドルまでのぼり、壁にあるカギをにぬきました。
「やったー!」
なんとかカギを抜き出したロマ王子は、ファンファンにカギをわたします。
「さあ急いで、ここを出よう!」
ファンファンは、自分の足についている足かせをカギであけて、オリのドアもあけて、エア・スクーターに乗り込みます。 黄色おサルは、びくついて隅っこの方でファンファンたちを見ていました。 
そーとドアをあけると長—い廊下が続いていて、そのむこうに銀色のドアが見えます。
ファンファンは、エア・スクーターのエンジンをローにして、静かに進んでいきました。
銀色のドアの脇には透明ガラスの部屋があって、ファンファンたちが通り過ぎるとき
ものすごくでかいクジラが泳いでいるのが見えました。
銀色のドアの前にきたファンファンは、ほんとうにしずかに音をたてないでドアをあけて、
外にでました。 
「よーし」
ファンファンがそういいながら、銀色のドアがバタンとしめた時、大きいサイレンの音がなりました。
「ウィーーーーン、ウィーーーーン」
長く響くサイレンは、まるでミサイルが発射されたときのような警報音でした。
びっくりして、エア・スクーターのエンジンを強にかえて、外へ出て、向こう側に見える丘へと急ぎます。
ブルウウーとエンジンはすごい音をたてました。
ファンファンは
『あれ、エア・スクーターってこんな機能あったかな?』
と思いつつ、バイクのようになったエア・スクーターでひとっ飛びします。
オリがあった建物から首輪をした大量の犬が飛び出してきました。
 『ウォン、ワンワン!』と犬たちは迫ってきます。
ファンファンは二つ目の丘を超えたところで、大きい壁が目の前にあることに気づきました。 
「ファンファン、行き止まりだ。Uターンしよう!」
ロマ王子がいいいました。 
ファンファンがエア・スクーターをターンさせようとした時、大きな犬が彼らに飛びかかってきました。
「ワーーーー」ファンファンたちは叫ぶながら、
犬をエア・スクーターのハンドルで防ぎながらよけました。
エア・スクーターを壁にすべらせて、全速力で壁際を走ります。 

何とか、その大きい犬をふりほどいて、川をわたって川向こうの丘にたどり着きました。
でも、そこにも大きな壁がたちはだかっています。
「くそー、何とかここを乗り越えなきゃ!」 あたりを見ながら、もう一度エア・スクーターのアクセルを全開にしました。ブルルルー!まるでバイクのようです。
「ファンファン、あそこにある板を踏み台にして、この壁を乗り越えるんだ」とロマ王子は
泥の中におちていた板切れを指差しました。
 「よーし、いちかばちかやってみよう!」ファンファンは、その板を壁の前に斜めにたたせました。 
「よーし、ロマ王子、しっかりつかまっていてよ!」ファンファンはエア・スクーターごとその板きれに突っ込みます。
するとエア・スクーターにのったファンファンたちは宙に舞いながら、壁の向こう側へと落ちました。 まるで、大昔の映画に登場するヒーローのようでした。
「へへ、やったね!」ファンファンはロマ王子を抱きかかえながら喜びます。
「ここから早く立ち去って、ヤサイ星団の誰かとコンタクトをとらなきゃ!」ロマ王子が、そう言ったと同時に、目の前に金色にひかるくるまが現れました。

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その金色のくるまの窓から、あのピギー園長が笑いながら麻酔銃をかまえながら、こちらを見ています。「ブフォフォォ~、アイゴール、あのクマくんはサーカスからつれてきたの?
なかなかしゃれたものにのっているじゃなーいブフ」
今にも麻酔銃をファンファンに撃とうしているピギー園長に、2人の動きはかたまってしまいました。 
「さあ、アイゴール!そのクマをしばりあげてオリに戻すんだブンブフ!」
アイゴールと呼ばれたあのハンブン人間は、ファンファンに近づき、
長い棒の先についた縄を足にくぐりつけてしばりあげました。 
ピギー園長は、ファンファンに近づいていいました。
「ヤー、おめめがクロいクマさんや、チミはどうやってオリを出たのかな~?ブフフって、話しかけても無駄かな~ちょっと変わったアニマルくん・・・」
「・・・ク、クマじゃないぞ、パンダ族のファンファンだ!」と大きな声でピギー園長にむかって言いました。
ビギー園長は驚いたように
「な、なん、なんとブフーーー、チミはしゃべることができるのか~!
おーどろいた、オードロぶふうう。 」
「ブタあたまにそんなふうに言われたくないよ!」
とファンファンがふてくされていいます。 
ピギー園長は少し考えてから、見下したようにファンファンにいいます。
「あー、なんとなくわかったよ。アイゴール、
こいつのまわりにヤサイ星人がいないか?探せっブフィ!」 
アイゴールが目を丸くしながら
「ヤサイ星人!?。。。
あのブロッコリーとかにんじんとかに足が生えた気持ちわるいやつらですか?」というと、
影にかくれていたロマ王子が飛び出てきました。
「やい、目ん玉が大きいサルおやじ! ブロッコリーに足が生えた気持ち悪いやつとはなんだー!」
「キキィーキキ、みどりあたまのお出ましかい!
オオカミの時も、いっしょだったよな~、みどり頭どのブフフ」
「おとなしくしてな!」アイゴールが、カゴがついた長い棒でロマ王子を一発で押さえ込みました。 カゴの中のロマ王子は叫ぶながらいいます
「おまえ、ボクのパパとママにあってるんだな!どこにいる。
ボクのパパとママをかえせーーーー」 
「ブフフ、さーみんな捕まえた。アイゴール、帰るぞ!」
金色のくるまの後ろにとめてある、ちっちゃいボロくるまにのせられてファンファンたちは動物園にもどされました。 

つづく


*ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。





こんなコロナ禍の中、大変な中にサポートをいただいて、ありがとうございます。活動を円滑にさせるを準備金にいたします。録音機材や画材に使うつもりです。