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のら小説家に何が書ける?(5) のらねこ、書きたいことがまとまらない

こんにちは!
僕は目標管理アプリ Project Sylphius の開発・運営を行っている TOMCAT HEART の中島です。
自身のエンジニア経験を活かし、目標管理スキルを覚えれば毎日が楽しくなるってことをなるだけ面白くおかしく、楽しく知ってもらうために、実践形式の連載をお送りしています。

ファーストシリーズの現在は“高クオリティ小説の王道な書き方”です。
ご興味あればバックナンバーもご覧ください。
現在の連載予定はこちら。

  1. 目標を設定する

  2. 自分の得意分野を分析

  3. 世の中の流行を分析

  4. 物語のキモである“葛藤”について学ぶ

  5. 設定をとりまとめる(今回)

  6. 執筆時間を確保する

  7. 起承転結の展開方法について学ぶ

  8. 核心部分の詰めを行う

さてさて、前回までに決まったことはこんな感じでした。

設定目標:
  - 読者をワクワクさせることにより、まずは **1いいね** を獲得
プレミスポイント:
  - ブラック上司に仕組みを使って ざまぁ する話
作品の方向性:
	└ 主人公    : 明るいポジティブな印象で、ストーリーをコメディタッチの笑える方向へ引っ張る
	└ 脇役      : 風変わりでインパクトのあるネコ
	└ 世界観    : エンジニアリングの知識を生かした高度な印象の世界観
	└ ストーリー: ブラックな人間関係トラブルを軸に、生きざまを考えさせるもの
	└ 悪役      : 発達障害を抱えた問題の多い人物で、最後は「ざまぁみろ」で終わる
主人公が気づくこと:
 - 自分は抱え込み癖があり、かつ、抱え込み癖があるという意識自体がなかった、ということ(暫定)
	きっかけになる閑話:
	 - 経済の仕組みと人間の社会構造の類似性について
	気づくきっかけ:
	 - 人間関係において「見返りを求めない」という考え方が、そもそもおかしいことに気づいた瞬間

前回は、ストーリーの流れを作るうえで核となる「葛藤」について紐解きました。
なので今回はいよいよ、具体的な設計作業に入っていこうと思います。

1.最低限必須な要素を集める

人物設定・世界設定を作るにあたってまず最初に行うのは、必要な要素を集めることです。

なんのための要素?

決まってますね。
主人公が気づくために必要な要素です。

世界観を作るというと、最初にいきなり文明レベルとか設定したくなる人もいるかもしれませんが、それはまだ早いです。
それをやる前に、まず主人公が予定調和的な気づきを得るために必要な設定を考えます。物語の本質的目的が主人公の葛藤の解決である以上、まず最初にやるのは主人公が気づくため手順と舞台です。
そうしないと、書いていくうちに筋がどんどんズレていってしまいます。

上述の通り、今回主人公は自分に抱え込み癖があることに気づきます。
あくまで暫定の設定ですが、今のところそうなってます。
だとすると当然、主人公がそれに気づくような、そんな“舞台”を最初に用意してあげなければいけないわけです。
で、世界観設定は、その舞台に合わせて構築するんです。

おまけコラム:
ここで1つ注意。
皆さんの中に物語作成の経験者がいるなら、もしかすると今回の僕のやり方に違和感を持つ方もいるかもしれません。
世界観を先に作ってからそこに主人公を配置する方法(いわゆる世界観先行方式)が好きな人の中には、主人公が活躍するだけのために世界が存在する状態が嫌いな人もいるようです。
その方々は、それが好きなら別にいいんですが、世界観先行方式は世界それ自体を遊園地のように楽しむ目的の場合に向いていて、物語を楽しませる用途には向かないことを考慮する必要があります。世界観先行は、物語がどうしても単調な印象になるんです。
今回の目的は「読者をワクワクさせること」ですので、なので世界観先行ではなくテーマ先行方式で設計を行っています。

さて、主人公が自分に抱え込み癖があると気づくためには、どんな要素(話の流れ)が必要でしょうか。

・楽しいはずの仕事が苦しいという状況
・主人公の仕事量がとても多い、という描写
・そのことを必然的だと読者が感じるような話の流れ
・部下の奉仕に対して見返りを返さない上司
・人間関係における「互いに見返りを求めない」とは、金銭的な見返りを求めないのとは違う、という話の流れ
・上記の観点を企業の経済活動に置き換えて考える話の流れ

最低限、こういった要素が必要でしょう。

それから、今ちょっと気づいたんですけど、「気づくきっかけ: 見返りを求めないという考え方がそもそもおかしい」という記述。
これはちょっと回りくどくて分かりづらいですね。
もうちょっと直感的で、心に刺さる言い方はないでしょうか。
第一、いくら物語内の登場人物だからといっても、そんなこと何のきっかけもなく気づくものでしょうか。

ですのでこの部分は少し変えることにします。

気づくきっかけ:
 - 「無償の愛なんて不健全だ。気持ち悪い! 夫婦は愛を支払いあう利害関係なんじゃないのかい?」
  と指摘を受ける

こんな感じでどうでしょう。
無償の愛を美しいと思ってる人はそこそこいる気がするので、こちらの方がまだ多少は刺さりやすいんじゃないでしょうか。

設定をこのように変えるのであれば、必然的に主人公は「無償の愛」を尊ぶ性格である必要がありますね。
ただし、むやみやたらに無償の愛を至上とする性格だと読者の共感は得られづらいので、優しくて頼りになり、性格的にはちょっとヒネた兄貴分のようなキャラにするといいかもしれません。
それから物語の冒頭の方で、無償の愛の良さを描写する流れも必要になるでしょう。

また上記で決めた設定も一部変えた方がよさそうです。

一般に、無償の愛が尊ばれる関係といったら夫婦関係でしょうか。
であれば、「無償の愛なんて不健全」というセリフは、仲良し夫婦に言わせることにしましょう。
その方が説得力がありますからね。
というわけで、登場人物として仲良し夫婦を登場させます。

ポイントは、仲良し夫婦を作ったあとでやらせることを決めるのではなく、主人公を説得するために仲良し夫婦を作っていることです。
これを逆にすると、物語中に何のためのキャラなのかよく分からない登場人物が、大量に存在してしまう恐れが生じます。

こんな感じで、他に気づいたことがあれば都度設定を変えていくことにします。

2.読者を楽しませる要素を集める

さて。物語の流れを作るのに必要な要素は集まりました。
現時点で決まっている内容をまとめれば、物語は面白くなるでしょうか。

答えは“ノー”です。
主人公が気づくための流れに必要な情報は集まりましたが、でもそれはあくまで作者が最終的に言いたいことにすぎません。
それは残念ながら、読者を楽しませるための設定ではないのです。

もちろん、主人公が気づくシーンだって読者を楽しませるためのものではあるのですが、でもそれだけだと、読者が楽しめるポイントは主人公が気づきを得た瞬間だけになってしまいます。
そこにたどり着くまでの間、読者はわざわざ苦しい思いをして何の意味もない駄文を読まなければならないことになってしまうのです!

これはちょうど、プールを用意するだけでは、水泳客の満足度が限定的になるのと同じです。
プールはただ入るだけでも十分に楽しいのですが、でも「水鉄砲」と「よーいドンの合図」もあった方が全然盛り上がるでしょう?
ですので、市営プールのようなありきたりでつまらない物語を作りたい場合を除き、テーマとは全く無関係に、純粋に読者を楽しませるだけのための要素も集める必要があるわけです。

世界観設定は、そういう観点で作っていくものです。
この設定はテーマとは関係なく作ることができるので、矛盾が出ないことにだけ気をつけながら、趣味全開で作っていくことにします。

さて、どうやって設定を作ろうかな?
。。。そう、こういうときはアレが使える。

アウトラインから書く小説再入門 K.M. ワイランド

こいつ。
小説の構成の練り方とかが載ってる本なんですけど、こいつにもしもクエスチョン法というアイデアの出し方が出てくるんです。
おすすめの本だから、よければ読んでみてくださいね。

。。。あっ、そうそう!
自分で書いた設定を見直したところ、こんな記述がありました。

脇役: 風変わりでインパクトのあるネコ

これ、最初に書いたときは本当に何気なく「ネコ」って書いたんだけど、そもそもネコと人間はコミュニケーションできないですよね。
ネコがいったいどうやって脇役をやるんだろう?

はい、ここで“もしもクエスチョン”!

もしネコと人間がコミュニケーション可能だったら、それはなぜでしょうか?
もちろんネコと意思疎通する物語自体は古今東西めちゃくちゃいっぱいあるんだけど、それらのうち読者が一番喜ぶアイデアはどれで、それをさらにどう改善すれば面白くなるだろうか?
ってこと。

たとえばね、、、アイデアは色々あると思うけど、ここでない異世界に行ったらしゃべれるってアイデアはどうだろう?
ネコと一緒に異世界に行っちゃう。

あ、でも最近の異世界ものって、一度行ったら2度と戻れない系統が多いよね。個人的にはときどき戻れるくらいが好きなんだけど。
なら、“もしも”ネコ達が人間に内緒で自由に異世界旅行しているのだとしたら??

そこから発想を広げていって、まずはとりあえずでいいんで、こんな感じにまとめていきます。

世界観:
 - ネコの世界“ガトーニア”
 - 世界中のネコの中には一部実は特別なヤツがいて、そいつらは自由に世界を行き来している
   └ この世界を行き来する特別なネコのことを“ブカトーレ”と呼ぶ
   └ 行き来のための入口は、裏庭などのふとした場所にあったりする
 - ネコはガトーニアに行くと人間に姿を変え、人間としての仕事をする
 - そして仕事が終わるとネコに戻り、人間の世界で寝る
 - 人間の世界は“ソリタリア”。ガトーニアの言葉で、孤独でつまらない、寝るくらいしかやることがない世界という意味
主人公:
 - ツッコミもできる明るいポジティブな印象のキャラ
   * 人に頼られるのが好きで、人を喜ばせるためにがんばってしまう
 - ただし人間観察は不得意で権謀術数に弱く、あくどいタイプの人からは巧く利用されてしまいがち
   ⇒ 今回主人公は責任を巧く押し付けられ、派遣切りに遭って無職となったところで異世界に行く
脇役:
 - 主人公の助手となるネコ
 - 普段は主人公の飼い猫クツシタ(クーちゃん)として過ごしているが、ガトーニアでの名前はオルソラ
 - 少女の姿をしているがバリバリのキャリアウーマンである
   * オルソラの名前はイタリア語の orso(熊) から。性格も名前に合わせて熊っぽくしてはどうか?
 - 同僚としてオスのルーパとメスのペコラがおり、2人はとても仲のいい夫婦
舞台:
 - オルソラが普段過ごしている町はパパガロ
   ⇒ 地図や雰囲気の描写は、考証時間の節約のためイタリアのラパッロをモデルとする
 - 割とひなびた感はあるが一応は観光地。ただしオルソラ達は観光業者ではない

この段階で設定を作るポイントは、作り込みは楽しそうと最初に感じるまでに留めておくことです。
楽しくないアイデアを採用したってしゃあないので、楽しいと感じるまでしっかり作り込むのは大切なことなのですが、だからといって細かくしすぎてもキリがありません。

3.主人公を苦しめる要素を考える

次に、憎まれ役となる敵役キャラについて考えます。
今回物語の筋がざまぁ系ですので、ネット上でそれっぽい系統のストーリーを調べてみました。

ただしフィクションを調査対象に含めると、リアリティがないものも含めて本当に色々なパターンが出てきてしまうため、少なくとも大筋がノンフィクションである前提で公開されているものに限って調査対象としました。
その結果、いわゆる裁判沙汰・警察沙汰またはそれに近いレベルの人間関係トラブルを起こす人達には明確な共通点があることが分かりました。

・加害者は、組織または地域コミュニティのリーダー的立場にある
・加害者は、他人の気持ちを推し量る能力が度を越して極端に低い
・加害者は、他責思考を持っている(=とにかく何でも人のせいにする)
・加害者に、上記2つが問題であるという自覚が全くない
・若い女性または小学生の少年少女が被害者であるケースが多い
・加害者の気質が病気のせいであることを被害者側が疑っていない

この条件が全てそろったケースが圧倒的多数のようでした。
圧倒的多数というか、、、僕が1人で調べた限りだと、上記以外のパターンが全く見つかりません。
これは、(ノンフィクションの)ざまぁ系ストーリーとして上記パターンがメチャクチャ流行りまくっているか、または裁判になりやすいケースが現実にそれしかないか、どちらかであることを表します。

実際どちらであるかは推して知るべしですが、調査結果は調査結果ですのでこれを設定に取り入れ、こんな感じにします。

敵役:
 - オルソラ達の上司のさらに上司で、貴族
 - 性格にかなり問題のある人物で、いわゆるカナリメンドクサイ人
   * 他人の気持ちを推し量る能力が度を越して極端に低く、様々な発達障害傾向を持っている

設定は書きながら徐々に盛っていくこともできるので、敵役キャラがどんなふうに主人公をひっかきまわすのか含め、細かいところをあまり作り込まず物語をイメージできる程度に留めます。
ただしもちろん、他の設定と矛盾などがないことの確認は忘れないようにしてください。

4.あとは書くだけ!

そういうわけで、設定の作り込みは今回までです。
次回からはいよいよ本文の執筆に入っていきます。

ただし、ここで1つ、問題が思い浮かぶ人もいるかもしれません。
特に社会人の方は、これが問題になることが多いでしょう。

“具体的にいつ執筆作業をやるのか”

小説なんて5分10分で書きあがるものではないし、社会人には時間もありませんから、睡眠時間を削って夜なべして書くわけにもいきません。

そういう人はどうやって執筆時間を捻出すればいいのでしょうか?
寝る時間なんて削ったら、1日目はよくても2日目3日目は確実に疲れるし、作品のクオリティだって確実に落ちますよね。
それとも、小説の執筆なんてものはけっきょく、時間の有り余った人だけの優雅なお遊びなんでしょうか?

てなわけで次回は、それについてお話したいと思います。
時間がない人が、時間のかかる作業をするにはどうすればいいか

このことについて書いていきたいと思います。

「え? そんな方法なんて本当にあるの? 時間なんて気合いで絞り出すしかどうしようもないじゃん」
そんなふうに考えている人をギャフンと言わせますよ!

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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TOMCAT HEART / 目標管理アプリ Project Sylphius

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