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ハーモニカ・メンテナンス講座 【基礎知識編1】

基礎知識編-構造〜清掃方法

説明は複音ハーモニカで行なっていますが、原理はハーモニカ全般で通用します。

このコロナ禍になるまでは、ハーモニカ合宿や小売店からの依頼、ハーモニカライフの企画などとして「ハーモニカ・メンテナンス講習会」を各地で行ってきました。清掃や修理に関するお問い合わせは非常に多く、その声にお応えする形で始まった講習会でもあります。ハーモニカは楽器ですから、本来ご自身で分解、清掃、修理や調律・調整ができた方が良いですね。

誤解しないでいただきたいのは、修理や調律を行うには、まずはハーモニカがきちんと吹ける事が前提です。ハーモニカの構造を理解し、きちんとした演奏、息の入れ方ができないとハーモニカ自体にトラブルがあるのかが判断できませんし、調整してもそれが正しいのかがわかりません。
初心者の方はまずは演奏に集中して、清掃程度からはじめましょう。

最終的にはご自身でハーモニカの調律・調整にチャレンジしてもらいたいですが、やはり文字だけでは分かり辛い部分も多いと思います。
調律まではちょっと…という方でもハーモニカの構造や音の鳴る仕組み、なぜ音がくるうのかなどを理解すると、ちょっとしたトラブルにも応用できます。

このページではハーモニカの基本的な構造〜清掃、音の鳴る仕組み、トレモロの仕組み、音がくるったと判断する時、音がくるう理由、アゲミの重要性、故障かなと思った時の調律の基礎知識といったことを、少しずつ段階を踏んでご説明しますので、どうか最後までお付き合いください。

今回は、基礎知識編【第一部】としてハーモニカの部品構成、素材による清掃方法の違いをお話しします。まずはハーモニカを分解してご説明しましょう。ここでは複音ハーモニカを使用してご説明しますが、基本的な内容は他のハーモニカでも同じです。

※同じ内容をYouTubeでもご確認いただけますのでページ下のリンクよりご視聴ください。

ハーモニカの基本的な構造

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まずは、ハーモニカ両脇のネジをドライバーで回してカバーを外します。ドライバーにはサイズがあり、そのネジに適合したサイズのドライバーを使用しないとネジをなめてしまいます。No.3521やNo.1521には1番のドライバーを使用してください。

外したカバーをご覧ください。カバーに反りがついています。弊社に送られてくる修理品の中に、この反りを戻してしまっているハーモニカを見かけますが、これはあえてつけている反りですのでこのままご利用ください。(ハーモニカの種類によっては反りが無いものもあります)

カバーを締め付けるネジは両脇2点ですので、カバーが真っ直ぐだと、真ん中が浮いて隙間に唇などが挟まって危険です。また、両脇2点だけで締め付けるよりも、反りを利用して、中央からプレートを均等に押さえ込むことで、密閉率を高めています。

交換用としてカバーのみを購入した場合は、この反りはついていませんで、ご自身で反りをつけることが必要です。

部品構成

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ハーモニカの部品構成としては、上からカバー(上下)、リードプレート、(上下)、本体という構成が基本です。カバーの素材はステンレス製のもの、真鍮材にメッキ加工がしてあるものがあります。

次にリードプレート。プレートには多くのリードがついています。ハーモニカの音源にあたる部分です。複音21穴の場合、上下で42枚のリードがついています。

そして本体。本体も機種によって素材が異なります。樹脂製(ABS)のもの、木製のもの、10Holesではアルミ製の本体などもあります。

弊社ではこのカバー、リードプレート、本体などのパーツは単体で購入が可能です。

リードプレートの購入(交換)には注意が必要です。もちろんプレート単体で調律を行なった上で販売していますが、厳密にはハーモニカとして組み立てた段階で調整が必要です。
「アゲミ」といわれるリードの姿勢を整えたり、特に複音ハーモニカの場合は、上下2枚のリードが鳴りますので、この2枚のピッチ(音程)を微調整することで、音色や吹きやすさやが変わってきます。
このあたりは次回以降の講座でご説明します。

ハーモニカの清掃方法

使ったあとに毎回分解して清掃した方が良いのか?という質問が多いのですが、そこまでする必要はありません。日頃の基本は、唾液を出す、クリーナーで吹く、自然乾燥の流れです。唾液を出すときは手で叩かずにタオルなどで包んで振り抜くように行なってください。

拭くときに良くアルコールを使用している方を見かけますが、この樹脂本体、ABSという素材は実は耐薬品性が高くありません。繰り返しアルコールを使用していると樹脂に浸透して本体が割れやすくなります。食器用洗剤なども同様です。

弊社ではノンアルコールで洗浄・消臭・除菌ができるハーモニカクリーナーを販売していますのでこちらを使用してください。

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口元の汚れが気になる場合は吹き口を下にして、先の細いもので除去します。綿棒や歯間ブラシなどを利用されている方が多いようですが、これも注意が必要で、あまり奥に入れてしまうと中のリードに触ってしまいますので気をつけてください。

一番大切なのは、汚れてから掃除をすることよりも普段から清潔にしていただくのが良いと思います。
吹く前はうがいや歯磨きを必ず行ってください。

ハーモニカの洗浄方法

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あまり汚れが気になる場合は、洗ってしまいたいと思われる方も多いです。

ハーモニカは大きく分けて樹脂本体と木製本体の製品がありますが、樹脂本体のハーモニカは注意すれば水洗いも可能です。
※バルブ式のクロマチックハーモニカは洗えません。

洗浄方法は、できればカバーは外した状態で(上の写真)、人肌程度のぬるま湯に浸け置き、最後にゆるやかな流水で汚れを流してください。洗ったあとは水気を振り出し、しっかりと自然乾燥させることが必要です。

ただし、洗ったが故に中の汚れがリードに挟まって不具合になる場合もあります。そんな時はこの工具「ケンとヘラ」(下の写真)を使って軽くリードを弾くとゴミが取れることもあります。

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厳密に言えばリードを触った後は「アゲミの確認または調整」が必要になりますが、前出の通りこの説明は次回以降にしたいと思います。

木製のハーモニカは水洗い厳禁

反対に木製本体のハーモニカの水洗いは厳禁です。水分が木部に侵入して本体が膨張します。
よく長時間練習していたら本体が膨らんで出てきてしまったなどとお聞きになった事があると思います。

その点からも練習用には樹脂製のハーモニカ、本番や発表会などでは木製などと使い分ける方も多いです。

木製のハーモニカはご自身でできる事が限られますので定期的にメーカーにメンテナンスを依頼していただくことをお薦めしています。

トンボ楽器のハーモニカの修理

ハーモニカの修理(オーバーホール)は機種によって価格が設定されています。
おおよそハーモニカの定価の1/3が目安ですが、その価格には、分解・清掃・調律・調整・滅菌という5項目と、作業者が必要と判断した部品交換が含まれています。(各種金額設定について詳しくはホームページでご確認ください)

お客様から部品交換の指定があった場合は別途部品代が発生しますのでご注意ください。また往復の送料はお客様のご負担になりますので、数本、まとめてお送り頂いた方が送料が分散して単価としてはお安くなります。

納期は工場に到着後、約二週間が目安です。
発表会シーズンは修理が混み合う上、皆さんお急ぎですので、順番に対応させていただきます。演奏予定がある方は余裕を持ってメンテナンスに出してください。

今後について

次回以降はもう少し踏み込んで、音の鳴る仕組み、音がくるう理由、おかしいと判断する時とは、アゲミとは?くらいまででしょうか。次号でまたお会いしましょう。

この内容を動画でご覧になりたい方はこちら↓

TOMBO-ism
文章:長井