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秋になると聴きたくなる1枚─ダニー・ハサウェイ『LIVE』

涼しい風を感じ始める9月半ばの夜──。聴く音楽も衣替えをしたくなるこの時期、まずレコード棚から取り出すのは、いつもこの1枚。

70年代ニューソウルを彩った稀代のアーティスト、ダニー・ハサウェイの3作目『LIVE』をご紹介。

1972年リリースの本作はその名のとおり、ライブアルバムです。比較的小さなライブハウス(ハリウッドのトルバドール、ニューヨークのビター・エンドという由緒ある会場)で行われたステージを音源化しています。

当時の現場の雰囲気をそのままパッケージに閉じ込めたサウンドは、凄まじい熱気に包まれており、とにかく素晴らしいの一言。こんなにかっこいい音楽ってあんのか?と思ってしまう。

名盤として確固たる地位を築いている歴史的な作品なので、この場であえて細かい説明はしませんが、聴いたことがない人には、ぜひ聴いていただきたい1枚。

Side A
1. What's Going On
2. The Ghetto
3. Hey Girl
4. You've Got a Friend
Side B
1. Little Ghetto Boy
2. We're Still Friends
3. Jealous Guy
4. Voices Inside (Everything Is Everything)

1枚の作品に収められていますが、本人としては当時2枚組のLPでリリースしたかったようで、音源的にも納得できなかったらしい(これだけ素晴らしい内容なのに・・・)。ちなみに本作に収まらなかった音源はのちに『IN PERFORMANCE』というライブ盤で聴くことができます。

昔、インテリア関連の仕事をしていた頃に、撮影スタジオで『LIVE』を流して作業していたら、その場にいた人たちから「これ、誰の音楽!?」と質問攻めにあったことがあります。

自分がイケてるなんて思うほど自惚れていないつもりですが、ダニー・ハサウェイを聴いてる自分は好きだったりします。それほど、この人の音楽はスタイリッシュでかっこいい。

↑レコードジャケットが醸し出す雰囲気も最高!

本格的にソウルミュージック、とりわけ70年代ニューソウル、90年代ネオソウルといった音楽にハマるきっかけになったのが、ダニー・ハサウェイでした。

少し籠ったような音づくり、ビタースイートなハスキーヴォイス。弾けるようなエレピサウンドに、計算しつくされたメロディ構成──。すべてが一級品で、天才ってこういう人のことをいうんだろうなと、つくづく思い知らされた思い出があります。

ここからマーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールドや90年代のディアンジェロといったアーティストを聴くようになったという意味では、『LIVE』は僕の人生においても非常に重要な作品と言えます。

↑裏ジャケット。会場の雰囲気がよく出ている。

このアルバムで好きな部分は2つ。1つ目は1曲目「What's Going On」のイントロ。ゆったりエレピの音が闇の中から浮かび出て、一気にバンドと共にリズムを作り出す瞬間。小洒落たお店とか、雰囲気のあるカフェにはうってつけだなといつも感じます。

2つ目は2曲目「The Ghetto」のイントロ。これは会場のオーディエンスが作り出す手拍子とバンドサウンドが一体化した瞬間。オーディエンスの皆さんがとにかく上手い。聴いたら分かると思います。これは文句なしにかっこいい。

ダニー・ハサウェイの音楽は、黒人社会の深刻化という時代背景もあって、人生に対する葛藤や存在の証明、いろんな苦しみがあり、それが音にも現れているわけですが、それと同時に、単純に音楽としてものすごく洗練されていて聴きやすいという両極の魅力があるんですよね。結果として、それが彼を早すぎる死に追いやったと考えられる部分もあるのですが・・・。

気になる方はぜひ、ダニー・ハサウェイの作品を聴いてみてください。一瞬にして心奪われること間違いなしです。

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