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夜はいつでも回転している

89夜 コード


最終電車は空いていた。自分の他には三人ぐらいしか乗っていない車両の一番端のボックス席に座って真っ暗な外を眺めていると何もない空き地の街灯の下でトロンボーンを吹いている人がいた。一瞬音が聞こえたような気がした。コードはFのように聞こえた。そう思っていると歩道橋の上でトランペットを吹いている人がいた。夜の中へ吹き抜ける音のコードもFだった。トンネルを抜けるとビルの屋上でドラムを叩いている。駅に着くと僕は鞄からサックスを取り出してホームに出た。他に乗っていた乗客もバイオリンやフルートやウッドベースを持って出てきた。改札口に向かうための階段が鍵盤になっていた。街に吹き込む風がコードを知らせている。

駅員が指揮棒を上に掲げてカウントを始めた。



End

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