キミの名は…いや、トリの名は？

「ねえねえ、お母さん
　子どもか少ないのは赤ちゃんを運んでくるトリが減ってるからじゃないの？　あのトリなんて名前だっけ？

「ああ、あのトリね。あのトリ……、
　今でも『運び屋』って云ってるんだけど、
『注射』と『カード』しか運ばなくなったから」

「それで赤ちゃんが少ないのかあ」

「たぶんね」

「『注射』と『カード』って、赤ちゃんより大事なの？」

「そう思ってるんじゃないの。直接、訊いてみるといいわ」

「名前がわからないときけないよ。
　お母さん、名前を思い出してよ！」

「やっと忘れられたのに、無理いわないで
　そうだ、ＡＩに質問したら？」

「どんなふうに質問するの？」

「『全責任はわたしが取ります』と云っただけの人とか、
『保険証を無くす』と云い出した人とか……」

「え？　トリなのに人なの？」

「ヒトデナシっていう人も多いけどね」

「　……　あ、ＡＩが答えてくれたよ」

「お母さんには云わなくていいから。聴きたくないの」

「これ鳥の名前かなあ、
『ある人が自らの発言で立場を失ったという場合、その発言が［イノチトリ］になったという……』。
　ねえ、赤ちゃんを運んでくるトリは、そんな名前じゃなかったよね？」

「それはデジタルのほうよ。
　今からきっと、そうなるんだわ！」