[短編]白タク、白個人[ブラック]
奮発して中ぶりの水晶玉を買ったら、占いの冊子が付いてきた。
ためしに新聞に出ていた大臣を占ってみると、無色透明の玉にくっきりと「イノチトリ」の文字。さすがである。
それだけでも驚きだが「イノチトリ」と来た。ちょうど「マイ何番カード」の不備が話題になっていたので、てっきりそのことだと思った。拙策が「イノチトリ」になって、辞職することになる…… それが占いのお告げだと解釈したわけだ。ちょうど二ヶ月くらい前の事。
今日、新聞を見たら、その某大臣まだ辞めていなかった。それどころか性懲りも無くまた怪しげなことをはじめるらしい。政策の名前は横文字で意味不明。なので、ネットで調べてみたのだが、出てきたのは、
「合法的な白タクの推進」
「白タク」ならわかる。二種の免許を持たない者が自家用車でタクシーの真似をすることだ。れっきとした違法行為である。それを合法化するって、どういうこと?
まあ、そのあたりの解説はいくらでもある。タクシードライバーの不足などだ。しかし、それはあくまで表向きの理由。当事者はどう考えているか。そこをちょこっと調べてみた。あるタクシードライバー曰く
「過疎地限定とか云ってますが、そんなものなし崩しに変えるつもりでしょう。セーフはタクシー業界を見限ったんだと思います。理由? 自動運転が導入されれば、タクシー会社やドライバーは死活問題なわけですよ。
セーフが保護してくれなきゃ仕事は無くなります。しかしそれだと救済する必要がある。それもやりたくないんで、今からタクシー業界を削っていくことにしたんです。そうに決まってます!」
その云い分が正しいのかどうかわからないが、もし事実であれば、オレは占いの結果を読み違えたことになる。
水晶玉が示した「イノチトリ」の意味は、某大臣が失職するということではなく、某大臣が「イノチ」を「トリ」まくるという意味だったらしい。このあたりが占いの難しさだ。読み違えれば、占いなどやらなかったほうがよかったとなりかねない。
しかし、占いなら「当たるも八卦、外れるも八卦」で済むが、
タクシーで外れれば「雲助」である。
時代劇ではないが、人気の無いところに連れて行かれて……。人間のやることはそうは変わらない。今は格差社会。追い詰められてる人が相当いる。かなり危ない。スマホでそのドライバーの実績がわかるとか、そんなことだとは思うが、初犯に遭えばどうしようもない。
だいたい、そんなことが起こらないよう、ガチガチに管理監督を推し進めてきたのがこれまでのやり方だったはず。それをいっぺんに緩和するとはどういうことか?
もしかして、某大臣って「白バッチ」なの? そこだけ率先?.
追記
>もしかして、某大臣って「白バッチ」なの? そこだけ率先?
んなわけないですね。綿密な台本があって某大臣も与えられた役割を忠実に演じているのでしょう。こんな皮肉を云ってるこっちが釣られているクチ。
これを書いてて。ふと「白タク」ならぬ「白個人」という言葉が思い浮かびました。雇ってもらえないと生きていけないというのでは、云いたいことも云えないわけで、それが雇い主、金持ちに過大なチカラを与えている。「お金のゲーム」には参加したくないと思いつつ、そこを突っ込まれると、つらい。
タクシー業界の皆さん、自動運転の導入までにはまだ時間がありますから、どうか生き延びて下さい!
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