[希望]パンドラの箱[ト説]
先生、『パンドラの箱』って、本当は「甕(かめ)」だったんですよね?
そうらしいな。
うっかり箱を開けたら、中にいたものが一斉に飛び出していった… という話とは、かみ合いませんね。
素朴に考えればそういうことだが、オトナは布を被せてフタがしてあったとか適当に解釈するんだよ。
飛んでいく虫を閉じ込めるのなら、そもそも甕は使いません。そんなことは子どもでもわかりますよ。甕は水を入れておく容器です。
何が云いたい?
飛び去っていったのは、水にわいた虫じゃないでしょうか?
だから、時期がくると成虫になって飛んでいったんです。
ボウフラのことを云ってるのか?
そうです。うちは園芸用に雨水を溜めておくんですが、水が緑色に変わる頃には、毎回、虫がわきます!
…………
最後に遺っていた希望が甕の中から出なかったのは、虫じゃなく水生の生き物だと思うんです。虫ほど、すぐにはわきませんが、山の上に新しくできた池にも、やがて魚が生息するというじゃないですか。
「希望」というのは魚のことだと?
そうとは限りませんが、水の中にわいて飛んでいかないものです。
ふむ。そういえば、例のパパデミックの際、水にミドリムシを発生させて、それを飲んでた医者がいたな。
そうなんですか? ミドリムシから抽出したサプリってありますもんね。
あの時は、あっという間に売り切れたんだ。だから、自分で作ることにしたんだろう。あれ、水をおいとくだけでいいそうだ。空気中にミドリムシが漂ってるらしい。
わかります。雨水が緑色に変わるのはミドリムシが繁殖するからです。もちろん適当にやれば雑菌だらけでしょうけど。
そうだろうな。こういう話が広がると、必ず安易に真似して、ひどく下痢したとか、重症になったとか騒ぎになるんだ。
テレビで専門家が「絶対にやらないでください」と云ったりしそうですね。でも、腐れば臭いでわかりますよ。味だっておかしいでしょうし。でも、水が数日で猛毒になったりはしません。
その医者は雑菌がないか顕微鏡で確認してるといってたな。
なるほど。顕微鏡で観察しながら、ミドリムシとか良性の藻だけを繁茂させるための条件をつかんだんでしょうね。悪い例ですが、汲み置きの雨水に覆いをかけると緑色にならないんです。
光合成か?
たぶん。日光は必要なようです。それから液肥を少し。雨水と水道の組み合わせだけだとなかなか緑になりません。
なるほど。そこは自然の水とは違うからな。しかし、自然の中で暮らしてた頃は、身近なところに全部揃ってたわけだ。
そうですね、年寄りに教えてもらったり、自分で工夫すれば、どんな病気だって治せる可能性はあったと云うのは、夢がありますよ。
あ、それだ! 甕にのこった水が「希望」なんだ!
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