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High Tech Highに行ってきた

タイトルのHigh Tech Highを見て、何のことかわかる方は一部の教育関係者だけだと思います。High Tech Highとはアメリカ・カリフォルニア州にある高校の名称で、”Most Likely to Succeed”というドキュメンタリー映画で扱われて、世界的に有名になった最先端の教育を実施している学校です。(HTHの記事はこちら)

教育改革が急ピッチで進むわが国では、これまでの学校教育を見直し、これからの不確定要素だらけの世界を生き抜くことができる子供を育てようとしています。従来型の先生が黒板の前で一方的にしゃべり、生徒はひたすら先生の話を聞いて、必死で暗記する、という日本の教育は戦後焼け野原から復興を果たすには大きな役割を担いましたが、IT革命後世界がものすごいスピードで変化する中では、そのような教育だけでは生きていけなくなりました。今求められているのは、変化することが不変の世界で生き抜く力、それはコミュニケーション能力や創造力、批判的思考能力などなどであって、日本の従来の学校教育ではおろそかにされてきたものばかりです。その日本の学校教育に足りない教育を具現化している代表的な学校がHigh Tech Highだと思います。

私も本気で日本の教育を変えたいと思っている教員のはしくれとして、上記のMost Likely to Succeedを見て、実際にHigh Tech Highに学校見学に行ってきました(去年の話ですが)。下記はその時のメモ(備忘録)です。ちなみにHTHは私が行くまで校内見学等はあまり受け入れていなかったのですが、「日本で最先端の教育をしている学校の国際教育担当者です。頼むから見学させてください!」と交渉したら、OKがもらえました。(今では結構簡単に見学ができるみたいです)

1. スクールツアーをしてくれるのが先生ではなく生徒。しかも聞いたことを何でも完璧に答えてくれる。(UC Berkeley志望の2年生。将来の夢は先生)
2. 高3生はみんなインターンシップ中で留守。インターンは基本自分で交渉して働き先を探す。中にはシリコンバレーとか海外とか行っちゃう子も。
3. 公立の学校(チャータースクール)なので、入学は希望者の中から抽選で決まる。兄弟がいるとちょっとだけ優遇されるみたい。
4. 先生はみんな専門知識の高い人ばかりで、全員単年契約。校長も含めて終身雇用(tenure)はない。だから先生もみんな全力投球。
5. 教科書はない。PBL(Project Based Learning)型の授業が主流なので、教材は先生のオリジナル。宿題も基本なし。授業中に終わらなければ宿題になるから、みんな頑張って授業中に終わらす。
6. PCは生徒全員に貸し出す。ただし家に持ち帰っちゃダメ。
7. Cross Curriculum(教科横断型授業)が特徴。Anthropology(文化人類学)の授業で国家間の文化差について学び、それを元にボードゲームを作る授業を見学。ボードゲームの駒などをデザインし(Art)、それを3-Dプリンタを使って実際に作る(Engineering)。
8. 勝手に教室に入って授業を見学して良い。そして授業中の生徒に話しかけても良い。聞かなくても勝手に色々教えてくれる生徒もいる。写真も動画も商業目的でなければ撮ってよし。太っ腹。
9. とにかく廊下や壁には生徒の作品だらけ。Creative万歳🙌
10. 選択科目は25科目くらい(普通かな)。「AI(Artificial Intelligence)」なる授業も。クラブもいろいろあって、「気候変動クラブ」なるクラブも存在する。
11. 留学生はいない。みんなアメリカ人だけど、公立で、抽選なので、人種はバラバラ。
12. 最後に女性の教頭先生と話したけど、すごく気さくでいい人。生徒もスタッフも生き生きしている感じ。
13. High Tech Highはサンディエゴに全部で12校あって、今回はそのうちの2校を見学した。


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日本でも最近担任制度や定期試験を撤廃した麹町中や校則を撤廃した桜ヶ丘中など革新的な取り組みをしている学校が脚光を浴びていますが、どれも海外では当たり前の事です。すなわち日本の教育は欧米のそれよりもずっとずっと遅れているわけで、謙虚に学び、良いものは素直に取り入れる必要があると思っています。もちろん海外の学校で教えていたので、日本の教育の素晴らしさもよくわかっています。要は良いところは残し、足りないものを補うということです(Scrap and Build)。その点では日本の教育関係者はみな一度はMost Likely to Succeedは見た方がいいと思いますし、一度自分たちの教育を振り返ってみた方がいいと思います。一校でも多くの学校が時代に取り残されない、生徒がこれからの社会で生きていく上で必要な力を育めるような教育を行えることを願っています。