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貧乏国ニッポン ~ますます転落する国でどう生きるか~①

教育に従事していると視野が狭くなりがちです。企業に勤務されている方であれば、自分たちの業績が世界情勢に左右されることもあり、世界で何が起こっているか、また日本の今の立ち位置はどこか、というのは比較的理解されているのではないかと思いますが、教員はあまり世界に目を向ける機会がありません。

しかし、私は勤務している学校で「グローバル教育」を担当しており、常に世界を見ながら仕事しています。職場では30人近い外国人の教員を束ね、海外の中等・高等教育機関と常に連携し、自分自身も仕事で年に数回海外に赴きます。ですので、否応なく「世界」を見据えて仕事にあたっており、その結果日本と海外(とりわけ欧米)の比較というのを繰り返し行っています。

そんな中、興味深いタイトルの本があったので、手に取り読んでみました。それが本書です。

・日本なら高所得の「年収1400万円」、米国では低所得

・日本のディズニーランドは世界で最も入場料が安い

・1989年に1位だった世界競争力ランキング、2019年は30位

・各国の駐在員が住みたい国ランキング、33か国中32位


「日本は暮らしやすい国」は大ウソだった! !
新型コロナが危機の日本を追い詰める
日本人だけが気づいていない、衝撃の現実

【もくじ・内容例】

第1章 日本はこんなに「安い国」になっている
・「賃金が安い分、物価も安いので暮らしやすい」はウソ
・日本人が海外に出稼ぎに行く日も近い
……
第2章 安さだけではない、日本の転落
・日本からノーベル賞受賞者は出なくなる
・日本の年金制度は新興国並み
……
第3章 なぜここまで安くなってしまったのか
・「日本株式会社」は20年働いて昇給ゼロ
・今すぐ捨てるべき「日本は大国」幻想
……
第4章 モノの値段はどう決まるのか
・金利が分かれば経済が見える
・新型コロナがスタグフレーション誘発も
……
第5章 そもそも経済大国ではなかった――為替レートのマジック
・虚構の「1人あたりGDP世界一」
・打つ手なきポストコロナの経済対策
……
第6章 日本の強みをどう生かすべきか
・手取り14万円 終わっているのは日本かお前か
・インバウンドにも付加価値という視点を

新型コロナウイルスの感染拡大で危機に直面する日本経済。政府の経済対策は諸外国と比べて貧弱で、日本の国力の低下ぶりを露呈した。実は、欧米だけでなくアジア諸国と比較しても、日本は賃金も物価も低水準。訪日外国人が増えたのも安いもの目当て、日本が貧しくて「安い国」になっていたからだ。さらに近年は、企業の競争力ほか多方面で国際的な地位も低下していた。新型コロナショックの追い打ちで、いまや先進国としての地位も危うい日本。国は、個人は、何をすべきか? データで示す衝撃の現実と生き残りのための提言。

AMAZONより引用

正直、なかなか辛辣な内容になっています。日本人としては目をそむけたくなるようなデータのオンパレードです。一方、多くの日本人がこの現実を理解していない、または受け止めていないのも事実だと思います。

生徒にも言い続けていますが、すべては「知る」ことから始まります。ソクラテスの「無知の知」ではないですが、知らなければ行動を変容できません。日本の悲惨な状況を知ることからスタートしましょう。

日本は「安い国」である

我が国における平均年収をご存知でしょうか。2022年度の国税庁の調査によると、その額は441万円(中央値437万円)だそうです。

平均給与の推移 ※国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査結果について」より

日本は1999年ごろにバブルがはじけ、それから長い長い経済停滞期間に入っていて、まだ出口が見えない状況です。平均給与はその間横ばいと停滞を繰り返し続け、今の状況があります。では、世界はどうか。

実質賃金指数の推移の国際比較 ※全労連「実質賃金指数の推移の国際比較」より

上記のグラフを私は授業や講演の際によく使うのですが、ご覧の通り賃金伸び率では日本の圧倒的な一人負けです。

ちなみに、一般的なアメリカの企業では、大卒新入社員の平均年収は500万~600万円程度が相場とされていますが、日本の大卒初任給は20万円程度が相場で年収だと240万円です。

一方、中国の大手通信機器メーカーのファーウェイ日本法人が、大卒の新卒社員に対して月収40万円を提示して話題になりましたが、これはグローバル企業としては標準的な水準です。OECDの調査でも、日本と諸外国における賃金格差は1.5倍ほどであるという結果が出ています。

日本は賃金が安い分、物価も安いので、暮らしやすい?

賃金が安いということは当然物価も安いということですが、だからといって暮らしやすいのかというと、そうではありません。

その理由としては、我々の生活は輸入品や輸入品を原材料にした製品で成り立っている部分も多く、これらは海外の価格動向に左右されるので、結局我々からしてみると高い買い物になってしまいます。

また、最近では食品において、値上げをする代わりに内容量だけを減らす「ステルス値上げ」が横行しており、メーカーにとっても消費者にとっても厳しい時代が続きます。(余談ですが、先日行ったラーメン屋で「ステルス値上げ」を目のあたりにしました。俗にいう「二郎系」のお店で、以前は普通盛りでもおなかがはちきれんばかりの量だったのですが、久しぶりに行ったら丼が小さくなっており、値段は据え置きでしたが、明らかに量は減っていました)

これは食品に限ったことではなく、あらゆる分野において、値段を据え置いて材料・商品の品質を下げる取り組みが行われています。一見、値段は変わっていないので何も変わっていないように感じますが、最終的には生活感覚の貧しさへとつながっていくため、「物価が安い=暮らしやすい」とは言えないような現状なのです。

単位労働コスト

グローバル化によって、世界の価格差が縮小していることは、企業の経営にも様々な影響を与えています。かつては、日本のメーカーは安い労働力を求めてアジア各国に工場を建設していましたが、現在はアジア地域の人件費の高騰により、日本国内に生産拠点を戻す企業が増加しています。一見すると、国内の雇用が増えるので良いことのように思えますが、中長期的に見ればこれは憂うべき事態です。

これまでは「Made in Japan」は世界中でブランド力となり、我々も大いに誇りを持っていたところですが、その「Made in Japan」の意味合いも今後変わってくる可能性があります。逆にこれまで「Made in China」と言えば、劣悪品というイメージもありましたが、そもそも「Made in China」が減り、その代替として「Made in Japan」が増えるというような状況になってきているのです。(もちろん品質は「Made in Japan」の方が上なことには変わりありませんが)

https://www.nikkei.com/article/DGXKASDZ05H7B_V01C15A2MM8000/

上記の通り、日本と中国の労働コストは2012年あたりを境に逆転し、そしてその後も差は開いています。

中国も含めたアジア諸国に比べて賃金の絶対値はまだ日本に分がありますが、生産性などを含めた総合的な観点では、すでに日本国内で生産した方が低コストだという現実があるのです。

となると、今後日本人が海外に出稼ぎに行くという時代も来るはずです。というか、もうすでに来ています。最近では、下記のようなニュースが巷に溢れています。

この国はどうなってしまうんでしょうか・・・。

今回のお話はこの辺で締めたいと思います。また次回に続きます。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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