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【Edge Rank 805】ピラミッド・レイク【TOMAKI】

砂漠の真ん中にある、巨大な湖。ピラミッド・レイクっていう、アメリカのネバダ州にある湖についての話をします。

どんな湖かっていうと、まぁとにかく大きい。日本で2番目に大きな湖と、3番目に大きな湖を足したよりも大きい。けど、琵琶湖よりは小さいっていう、そんな感じ。湖の真ん中に、ピラミッド型の岩が飛び出していて、それがこの湖の名前の由来になっています。もともとは先住民のパイユート族が暮らしていた土地で、その当時の伝説や言い伝えも残ってたり。

シエラネヴァダ山脈から水が流れ込んでいるんだけど、ここから外に出ていく川は存在しないので、ずっと流れ込んだら流れ込みっぱなし。淡水ではなく、塩分の混じった塩湖です。天然の温泉が湧き出てる場所もあります。

そして、周りには本当に何もない。荒野のど真ん中に唐突に湖が存在する感じ。まさに、西部劇の映画にでも出てきそうな景色です。野生のマウンテンゴートが現れたり、トカゲやサソリが歩いてたり。そして、とにかく星が綺麗だってのは、後からまた話しますけどね。

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最初にこの湖を訪れたのは、僕がアメリカに留学して、ネバダ州のリノとう街に住んで間もなく。昔、この湖の畔にある「伝説の人面岩」を見に行こう、っていう話になって、友人たちと車で訪れました。地元の友人が「これがその人面岩だよ」って案内してくれたのですが、いまいちどこが顔なのかよくわからない。そのうちみんなで「これって、顔に見えない?」「いや、ここに顔があるよ」「この角度から見たら、こっちにも顔が」という感じで、あっという間にそこら中、人面岩だらけに見えてきて……。

実際には、伝説の人面岩はそこからちょっと離れたところにあって、その時僕らが人の顔だと思って見ていた岩は、ただの岩でした。ただ、人の顔がそこにあると思い込んで見てみると、本当にだんだん人の顔に見えてくるという、ちょっと不思議で面白い体験でした。

以来、ドライブがてらピラミッド・レイクには何度も訪れるようになりました。大学でアートを専攻して写真のクラスを受講していた頃は、クラスメートにモデルになってもらってこの近くで写真を撮ったり。一度、自転車で訪れた時は、途中でパンクしてしたり、飲み水が底をついたり、途中で引き返すタイミングを失って体力の限界に挑戦することになったり。湖って、考えてみれば当たり前ですけど、その土地の低いところに存在するわけで。自転車でそこに向かっているときは、体感で気づかないくらいの下り坂だったわけで。ようやく湖にたどり着いて、日が傾いてきたころに「さて、帰ろう」と思ったら自転車のペダルがやたら思い。帰り道、すっかり日が暮れた後も延々と続く微妙な上り坂を漕ぎ続けたという。まったく、何をやってるんだか、という話ですが。

その湖から見る星空が信じられないほどきれいで。乾燥した砂漠の空気で遮るものがない中、周囲に全く光を発する人工物がないため、普段は絶対に肉眼で見えないような細かい星々がくっきり見える。夜空には、こんなにもたくさんの星があったのか、と、びっくりしますよ。人工衛星が移動している軌跡も見えたり。

ありきたりの言い方をするなら、このピラミッド・レイクは自分にとってある意味「パワースポット」的な存在なのだけれど、それだけでなく。思い出が詰まった、かけがえのない場所なのです。

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2003年の夏、当時付き合っていた女性とこのピラミッド・レイクを訪れました。特別な人に、ぜひこの特別な場所を紹介したかったんです。そして、この場所でプロポーズをしよう、と。そのエピソードは、ちょっと後で語るとして。

ここで一瞬、話は1999年3月にさかのぼります。この湖のほとりで、陶芸彫刻作品をガンガン叩き割ってた。

大学卒業後、僕はアメリカ西海岸を転々としつつ、「職探しの旅」をしました。ホームレスに片足を突っ込みながら、ギリギリのところで「フォトグラファー」として仕事を得ることができた時には、所持金が底をついて、日本に帰る飛行機代も残ってないくらい。

ロサンゼルスにある、宝石デザイン会社の広告部門で、商品の写真を撮影してデジタルでレタッチするという仕事に就きました。大学で学んだ陶芸彫刻のスキルは全く生かすことができないですが、それでも仕事が手に入っただけでもラッキーでした。そこから僕は、本格的に広告の世界に足を踏み入れ、ウェブ制作を経験し、現在のデジタルマーケティングへとつながるわけです。

ロサンゼルスでの体験は、社会人として最初の一歩を踏み出したと同時に、それは学生時代のアートとの決別でもありました。そんなわけで、日本に帰国する直前に、湖の畔で自分の学生時代の作品を片っ端から叩き壊した、と。作品の破片は丁寧に集めて、車で持って帰ってゴミとして捨てました。ただ、小さなカケラをひとつだけ、近くに埋めました。

それから4年半後、僕はそのピラミッド・レイクのほとりでプロポーズして、今の嫁さんと結婚しました。

プロポーズの後、二人で陶芸作品のカケラを探しました。なんとなく目印の木の位置を覚えてたので、その近くを掘ってみたら、あっけないくらいあっさりと出てきたのです。

その日、4年半前のカケラと再会して、ささやかでも良いからアートの活動を続けようと思いました。やっぱり僕は何かをつくるのが好きなんです。ちっぽけな作品でもよいので、ずっと創作活動は続けていきたいと改めて思いました。別に、アーティストを職業にしなくてもよい。日曜大工のようなノリで、趣味の「日曜アート」を続ければよいじゃないか、と。

そんなわけで、趣味の創作活動を行う場として、「日曜アーティストの工房」というブログとウェブサイトを立ち上げたのでした。

それが、このブログの名前の由来です。

日曜アーティストの工房
https://tomaki.exblog.jp

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■編集後記

ドイツから小さなプレス機が届きました。ずいぶん前にクラウドファンディングでサポートしたもの。コロナの影響もあって発送が遅くなり、だいぶ遅れての到着です。学生時代、転写プリントの手法でずいぶんといろんな作品をつくっていたことがあったので、20年以上ぶりのその続きの作品でもつくれれば、と。手のひらに乗るような小さなサイズのおもちゃのようなプレス機ですが、日曜アートにはぴったり。作品をつくるのが楽しみです。

今回も、お読みいただきありがとうございました。
次号は11月26日(木)の配信。「東京散歩ぽ」の中川マナブさんの号です。

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「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。