認知戦技 "ブレインスイッチ" 思想で知ろう
前回は脳にはスイッチが存在するということや、抽象思考スイッチなどの概要をお伝えしました。
ブレインスイッチを意識的に切り替えられるようにするために、今回は実際に"ある程度、抽象化された世界"を味わってみましょう。
17世紀から18世紀にかけての西洋の思想
【リヴァイアサン】トマス・ホッブズ
【統治二論】ジョン・ロック
【人間不平等起源論】【社会契約論】ジャン=ジャック・ルソー
【法の精神】シャルル・ド・モンテスキュー
トマス・ホッブズの著書【リヴァイアサン】
を引用要約すると、「人はみな利己的な存在である。放っておけば自分の利益の為に戦争をし、それは終わらない。だからこそ、超強力な権力が必要なのだ」となります。
ホッブズはそれを国家(必要悪)と考え、ロックやルソーはそれを批判しました。
例えば【統治二論】の著者ジョン・ロック
は、「人は放っておいても平和な社会をつくるが、その平和をより良くするために国家が必要だ」このように考えていました。
さらに、「国家が民衆の意に反すれば、革命もありだ」とし、「権力を分けましょう」とも述べました。
【人間不平等起源論】や【社会契約論】の著者ジャン=ジャック・ルソー
は、人の自由意志に基づき、直接民主制、国家、ルールをつくり、「国家と契約した人は、みんなで決めたルールに従うこと」と述べました。
【法の精神】の著者であるシャルル・ド・モンテスキュー
は、ロックの権力分立を発展させ、お互いを抑制し、均衡を保ち権力の暴走を抑える権力の分立を考えました。
これが大まかな17世紀から18世紀にかけての西洋の思想の流れになります。もちろん現代は、このような思想に基づいて国家や政治が形成されていると言って良いかと思います。ここで更に詳細な内容に迫っていきます。
トマス・ホッブズ(1588-1679)
「リヴァイアサン」1651年
“リヴァイアサン”とは、旧約聖書に登場する
海の怪物の名前です。
ホッブズは、人は本来利己的な性質であると考え、決定的な能力差の無い個人同士が互いに自然権を行使し合った結果として、終わりのない争いが続くと考え、その様を「万人は万人に対して狼」「万人の万人に対する闘争」と例えました。
【自然権】人が生まれながらにして持っているとされる権利。 自己保存の権利、自由の権利、平等の権利など、国家権力をもってしても奪うことのできないもの。ロックを中心とする近世の自然法思想の所産で、フランスの人権宣言、日本の明治期の天賦人権思想などに表れている。 天賦人権。
ホッブズは、人の絶え間ない争いを防ぐには、一個人では到底及ばないほどの怪物のような権力を持った国家が必要であるとして、
それを旧約聖書に登場する怪物に例えて「リヴァイアサン」としました。
ジョン・ロック(1632-1704)
「市民政府二論」1689年
ホッブズが人を生まれながらに性悪的に捉えていたのに対して、ロックは人を性善的に捉えて思想を展開しました。
人は本来「他人の自由を侵害してはならない」という理性の声(自然法)をもっており、放っておいても自由と平等は保たれた社会が形成されるとロックは考えました。
【自然法】人間の自然の本性あるいは理性に基づいて、あらゆる時代を通じて普遍的に守られるべき不変の法として、実定法を超越しているものと考えられる法。
ロックは、安全で平和な社会を確実なものにするために、自然法を公正に解釈する公的機関をおく必要があり、自然権の保障を確実にするために国家の必要性を主張しました。
ロックの考え方は、ホッブスの専制君主制(超強力な権力)を否定し、国民主権を主張するもので、もし国家が市民の意に反する権力のつかい方をした場合は市民に抵抗権を認めるとして、イギリス名誉革命を正当化しました。
また、「政府は自然権を保障するため、人民の信託に基づいて設立されたものなので、社会契約には一定の"契約条件"があり、自然権を保証するための手段として、権力の分立を採用しなければならない」としました。
ロックの社会契約や抵抗権についての考えは
アメリカ独立宣言、フランス人権宣言に大きな影響を与えたと考えられています。
シャルル・ド・モンテスキュー(1689-1755)
「法の精神」1748年
ロックは権力が分立する考え方を唱えましたが、ロックの考える権力分立論は各権が平等でなく、立法権を有する国会が最高権を有するものとされ、名誉革命に基づく現実的な立憲君主制を擁護するための理論でした。
モンテスキューは、ロックの権力分立の考え方を踏まえつつ、「法の精神」により、三権分立(司法権・立法権・行政権)にすることで互いの均衡と抑制をはかる考え方に発展させました。
ちなみに「法の精神」といえば「三権分立」というイメージが一般的ですが、権力が三権(立法権・司法権・行政権)のみならず、四権ないし五権にまで分立すべきであると示されています。
ジャン=ジャック・ルソー(1712-1778)
「人間不平等起源論」1755年
「社会契約論」1762年
ルソーはホッブズの自然権などの自然状態論を批判して、人は性善的であると前提し、特殊意思(個々人の自分勝手な意志)を持つ個人個人が、自らの自由意志に基づいて結んだ社会契約にのみに服従する政治体制を理想とし、そこで結ばれる社会契約は個々人の自由意志であるとともに、構成員総体に共通する一般意思(公共益を達成するため、個人の利害から離れ、共同体の構成員が共有する意志)になるとしました。
また、直接民主制や人民主権を主張し、フランス革命に大きな影響を与えたと考えられています。