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ジークムント・フロイトのサイコダイナミックセラピーのコアコンセプトと効果

サイコダイナミックセラピーは、様々な技術を通じて自己表現と洞察を促進する心理療法のひとつです。

サイコダイナミックセラピーは対人相互作用を使い、意識や内なる葛藤を守る防御と、無意識を明らかにします。

この手法の基本理論は精神分析(4~5回)からなりますが、受け手は多くの場合、伝統的な精神分析よりも少ないセッション(1~2回)で大きな効果を希望します。


サイコダイナミックセラピーの概念

現在のサイコダイナミクスは、ジークムント・フロイトに最も影響を受けています。

フロイト以降は、カール・ユング、アルフレッド・アドラー、メラニー・クライン、アンナ・フロイト、オットー・ランクなど、多くの理論家やセラピストがサイコダイナミクスに携わりました。

意識、前意識、無意識

フロイトの理論によれば、人間の心は本質的に意識、前意識、無意識(潜在意識)に分かれています。

この理論は、しばしば氷山に例えられます。

意識
氷山の先端は心の意識的な部分で、これには、いま気づいている・集中していること、計画、自己対話・議論が含まれています。

前意識
氷山の先端の少し下は前意識で、現状は意識されてはいないが、注意を集中すれば意識化することの可能な領域です。

無意識
前意識から下はすべて意識ができていない領域ですから、私たちの心の大部分は無意識ということになります。

イド、エゴ、スーパーエゴ

無意識の中には3つの相互作用があると考えられています。

イド
すべての欲望と基本的なニーズを表します。

スーパーエゴ
道徳的・社会的良心の感覚を表します。

エゴ
イドとスーパーエゴを仲介しようとしている。

エゴは、相反する2つの力に対処するために機能するか崩壊し、崩壊した場合、様々な機能不全になる可能性があります。

問題が大きいほど、エゴがコントロールする不安感は大きくなります。

エゴによる不安感のコントロールは、基本的に対処できる恐怖、不安、罪悪感、喪失感、恥ずかしさとなります。

そのコントロールが続くと、時間の経過とともに防御網が拡張され、日常生活を妨げる生活様式となり、機能不全につながる可能性があります。

これは、過去と現在の無意識の対立を押さえつけた場合に、特に当てはまります。

つまり、問題を心の奥深くに押し込み続けると、より複雑な無意識(エゴ)の防御でさらにその防御構造が堅牢になるのです。

アンコンシャスドライブ

サイコダイナミックセラピーでは、先述した3つの無意識のプロセスは、特に成人期に入ると機能不全のパターンで表現されます。

機能不全のパターンは、特定の関連性のある状況に強制する無意識のニーズ、またはアンコンシャスドライブの結果です。

アンコンシャスドライブには、セックス、攻撃性、重要性(意味や目的)および習得意欲などがあります。

習得意欲はサイコダイナミックセラピーにおいて不可欠であり、無意識的な繰り返しの強制として知られています。

これは、人は過去の問題を解決するために、無意識のうちに馴染みのあるものに駆り立てられていることを意味します。

過去は、個人が現在の瞬間に至るまで経験したすべてのことを意味しており、幼少期にトラウマ経験がある場合、その経験は当人にとって最も影響力のあるものになる可能性があります。

また、成人を迎えた生活の中でもトラウマを経験することがあり、その後の感情や行動に影響を与える可能性があります。

幼少期の経験の影響

幼少期の経験やトラウマは、経験やトラウマが最終的にどのようにコントロールされるか、エゴ(欲望と良心の仲介)がどのように機能するかにおいて基本的な役割を果たします。

個人の生活に対しての影響は、

幼少期の育成環境・状況
能力に対しての自己評価
社会的・性的発達
他者との人間関係(他家族、教師など)
友人関係
その他の重要な人生の出来事など


が含まれており、人の葛藤のすべてが良くない子育て(育成環境・状況)が理由ではないと示しています。

人はしばしば、生活の中で認識された役割の繰り返し、他者の間違いの証明、家族や文化的規範への反抗などをするために、行動の埋め合わせをするかもしれません。

克服すべきこの闘争の解決方法は、自分の本当の役割、達成したいこと、どのような人間関係が最も充実したものであるかを定義することです。

はじめてのサイコダイナミックセラピーの効果

サイコダイナミックセラピーは通常、状況に対するアドバイスを含みませんが、その代わりに、周囲の人々が自分自身をよりよく理解し、健康的・良心的な立場から見た人生の目標を追求するのに役立ちます。

はじめてのセッションでは、症状を評価し、療法をはじめる前にクライアントの背景を理解します。

まず、セラピストは精神障害の診断および統計マニュアル(DSM-5)の基準に一致する可能性のある問題や症状について評価をします。

次に評価するのは、クライアントの人生に対する状況などです。これは、人間関係、業績、失敗、強み、欠陥、トラウマ、物質(薬物など含む)使用、中毒、治療プロセスに必要となるものなど、クライアントの人生歴に関するできるだけ多くの情報です。

評価が完了するとセッションが開始されますが、セッションを通じてより多くの情報が認識されると、評価状況が変わる場合があります。

サイコダイナミックセラピーにおける評価の役割

サイコダイナミックセラピーは、統合失調症や双極性障害などの遺伝的、生物学的な臨床評価が重要であると認識しています。

これらの評価は、特定の心理的症状が個人の全体的な自己感覚と、その周りの世界にどのように影響するのかを理解するのに役立ちます。

セラピストはクライアントの臨床障害と経歴の両方が治療目標などに影響を与えることを理解していますが、特定の評価によってクライアントの無意識の対立を誘発することにつながる場合もあります。

無意識の対立には、恐怖症、身体的苦痛、中毒、強迫的な行動が含まれます。

サイコダイナミックセラピストは、これらの問題と症状を生み出している根本的な無意識の恐怖を調査する必要があります。

治療同盟の重要性

サイコダイナミックセラピーの最優先事項のひとつは、治療同盟を確立することです。

これは、セラピストとクライアントの人間関係の重要な境界を定義するプロセスであり、クライアントに対してオープンな共感と前向きな敬意を示す理由にもなります。

セラピストは、クライアントのニーズ、癒し、成功への道筋に焦点を当てるために、自身の個人的な自己開示を制限、排除することができます。

セラピストはクライアントのケアに関与しますが、執着はせず、クライアントが問題解決をすることに対する自身の抵抗を克服するのをサポートする必要性を認識しています。

治療同盟の主な目的は、クライアントがより感情的な痛みを伴う主題に深く入り込む権限を感じることができるように、継続的に信頼関係を促進することです。

サイコダイナミックセラピーのテクニック

サイコダイナミックセラピーの中核は、無意識を意識化させることです。

意識化のプロセスは、クライアントのニーズに応じて、セラピストが様々なツールやテクニックを用いることを奨励されています。

自由連想

これは、その週の出来事、他者との葛藤、恐怖や欲望、夢や悪夢、自分の経験についてなど、クライアントが考えていることを何でも話し合うという手法です。

サイコダイナミックセラピーはある意味、クライアントの意識と無意識の両方から、様々なレベルでのコミュニケーションを理解するのです。

コンテンツとプロセス

クライアントのコミュニケーションを理解する手法は、コンテンツとプロセスとして説明することがあります。

プロセスは、情報がどのように提示されるかによって、無意識の手がかりを判断し、クライアントの伝えたいことを認識できる可能性があります。

セラピストは会話に耳を傾けますが、それと同時に、非言語的な手がかり、会話状況、コンテンツの変化、コンテンツの矛盾や感情などを観察します。

それは治療プロセスの重要な部分です。

例えば、

「上司はいつも職場で私の後ろから見ている、私は子供扱いされたくない」

最初に、この会話からセラピストは、上司との人間関係の改善が重要であるというコンテンツを理解します。

次に、無意識のプロセスとして、このセッションやセラピストとの関係性でも、クライアントは有能な大人として敬意を持って扱われることを重要視していると理解するのです。

クライアントが様々なコミュニケーションレベルで提示している情報は、治療同盟への洞察と、信頼関係を促進するのに役立ちます。

転移

セラピストは、クライアントが無意識のうちに人生の中で人々に対して持っている感情、欲望、恐怖、恨みをセラピストに向けることを理解しています。

この現象は、感情の対象として元の相手からセラピストに感情を移すため、転移として知られています。

クライアントは常に転移を認識しているわけではありませんが、それが起きるとセラピストはクライアントの意識にアクセスすることができ、問題の根本原因を見つけることができる場合があります。

クライアントは転移により人生における未解決の問題を代表する人々を表現し、経験した罪悪感や恥ずかしさを明らかにすることもあるのです。

逆転移

セラピストも人間であるため、クライアントに対して無意識の感情を持つ可能性があります。

サイコダイナミックセラピーでは、この重要な現象を逆転移として認識しています。

セラピストは、逆転移の不当な影響を減らすために、自己の問題を理解するよう訓練されているので、逆転移をクライアントへのアプローチのツールとして使用することができます。

明確化と解釈

セラピストは、クライアントからのコミュニケーションのコンテンツとプロセスの両方を観察し、明確化または解釈という方法で対応します。

セラピストは、クライアントとセラピストが意識レベルで議論していることをより理解するため、フィードバックと質問を通じて明確化します。

解釈は、生活に影響を与える無意識から出てくる何かに対するセラピストの反応です。

カタルシス

解釈が正確であれば、クライアントは通常、行動が変化します。

これらの行動には、感情的な表現の増加(涙、笑い、怒り、赤面など)や、突然の沈黙、最近または遠い記憶の瞬間的な発現が含まれます。

上記のような抑圧された感情の解放行動をカタルシスといいます。

カタルシスは、クライアントの信頼の増加、不安、怒り、恥ずかしさの緩和を起こします。

しかし、カタルシスはクライアントの人生の葛藤をさらに深める可能性もあります。

これは、エゴ(欲望と良心の仲介)の防御が減少し、クライアントが悲しみの受容に向け、痛みを伴う人生の損失の現実に直面した場合、特に顕著となる可能性があります。

しかし、治療同盟の信頼レベルの向上は、より大きな自信とともに治療プロセスを進めるのに役立つでしょう。

ワークスルー

最終的に、サイコダイナミックセラピーの治療プロセスは、未解決の問題を明らかにし、解決するための感情的に安全な状態を提供することです。

クライアントは機能不全のパターンや、生活によって認識された役割を繰り返す強迫観念と親しくなることで、自分の選択や行動をコントロールすることができるようになるのです。

人間関係のためのサイコダイナミックセラピー

サイコダイナミクスは、複数の参加者が関与する人間関係にも適用できます。

カップルセラピーでは、それぞれの人生の葛藤は、感情やコミュニケーションのニーズにどのように反応するのかを理解する上で重要です。

幼少期のあらゆる人間関係、父母がお互いにどう交流したかは、大人になってからのクライアントの人間関係の基準となります。

無意識の恐怖や欲望は、幼少期の問題に限定されず、その後の人間関係、トラウマ、喪失、その他の人生の出来事も大きな影響を与える可能性があります。

セラピストは、カップルが過去の問題を明確にし、相互理解とコミュニケーション、感情的な機能不全がどのように問題に影響するのかを明らかにするのに役立ちます。

カップルセラピーで共有される恐怖、欲望、ニーズのより深い認識により、カップルはお互いの人生のニーズを満たすために、敬意と効果的な相互作用のための技術をよりよく開発することができるのです。

ファミリーセラピーにおけるサイコダイナミクス

ファミリーセラピーは、ファミリーシステムのより深く、暗黙の対立や問題などを明らかにする試みです。

これは多くの場合、家族の役割を探求し、より健康的で生産的な相互作用を開発するための挑戦となります。

包括的な目標は、家族が時間の経過とともに成長し、オープンなコミュニケーションとファミリーシステムの変化を容認できる機能的バランスを達成することです。

機能不全を持つファミリーシステムにも、家族間のバランス感覚はありますが、しばしば不安定で、暗黙の恐怖やニーズに依存しています。

子供のサイコダイナミックセラピー

サイコダイナミックセラピーは子供たちの発達を助けながら、抑圧や表現されていない感情や経験を特定します。

トラウマや損失に起因する感情の葛藤は、心理的成長を妨げ、子供の能力を低下させる可能性があります。

サイコダイナミックセラピーは、子供の心理的苦痛を和らげ、心理的発達を促進し、健康的な自尊心を確立するための安全な状態を提供することに焦点を当てています。

おわりに

100年以上にわたって開発されてきたサイコダイナミックセオリーとセラピーには、多様な側面があります。

しかし、その中核をなすサイコダイナミックセラピーの目的は、無意識に自己と他者とのより良い関係を意識させることにあるのです。

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