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トマさんの31日間noteにバスを上げるチャレンジ#20「悲運のクィーンの巻」

   今日は期待を受けてデビューした後、数年目で電撃的貸切転用を受けて出る幕を減らしてしまった悲運の一台をご紹介します。
因みに各車のバックストーリーは考えてる時が一番楽しいのです。


「新竜バス 21103号車」

    県内最大手にして、4年前の2018年に隣県の会社との経営統合で新時代を迎えた「新竜しんりゅうバス」の貸切バス部門フリートで活躍する一台。
   因みに実際の形式は「QTG-MS96VP改」。これには深い訳があるのです。

   デビューは2015年。
この時は定員26人・後部大型パウダールーム付き・ミューズ・プレミアシート装備の贅沢装備を備えていました。
その裏には新竜バスなどが参画した一大アライアンス「二十にとう高速バス」が新機軸として打ち出していた高級化戦略があります。

    2013年、高速ツアーバスから進化した新高速乗合バスが始動し、二十高速バスのライバルが増えることになりました。
従来型高速乗合バスの集まりである二十高速バスは便利なネット予約や低価格をメインに打ち出した新高速乗合バス軍団に乗客を奪われるようになって苦戦。
そんな中で2014年頃に生まれたのが「昼行路線の車両を高級化すれば新高速乗合バス各社に対抗できる」という考え。
    当時は「新高速」の一部が豪華仕様車を送り込んで好評を得ていて、そこに「二十」の各社も乗っかり対抗しようという競争精神に基づくもので、各社で検討した結果、2011年に大都市の彼礎かのそ井美いみ間ルートに導入して好評だった「ミューズ・プレミア(ミュープレ)」シートを他ルートにも拡充するという方針が決定。
この「ミュープレ」はシート幅の広い1人掛けで電動リクライニングなどの安楽装備をふんだんに注ぎ込んだ傑作。
   これで「新高速」に対抗できる!とみた「二十」の各社は2015年春から「ミュープレ」の運用区間拡大を開始。

新竜バスも拡大第一期の「岩皿いわざら・新竜~彼礎」運用を受け持つことになり、その際に新造されたのがこのエアロクィーン。

   「新高速」の面々もビックリの安楽仕様は当初こそ話題を持って迎えられるも、時が過ぎると、新竜への客は高い追加料金に多くが「ミュープレ」を敬遠するように。
他に拡大された有岡・赤地・五二八ルートでも同様の減少が発生。
結局、不採算に陥った「新竜ルートのミュープレ」は2018年春改正をもって廃止される事に。

   「ミュープレ」をひっさげてデビューしたエアロクィーン3台はあっという間に休車状態に。
しかし、まだデビュー2・3年しか経っていない本車の廃車は当然、金をドブに捨てるような物。
そこで新竜バスはこれらの車両から2席ついていた「ミュープレ」シートを外し、代わりに通常シートを取り付ける改造を実施。
この時、定員が2人ずつあがって28人乗りに変更。ここで同車は改造車検を取得、形式を改めて「QTG-MS96VP改」となったのでした。

   現在は貸切車と繁忙期用助っ人として存続するものの、少定員が災いしてか稼働率は低めの状態。
早急な活用策の展開が求められます。


あとがき

   競争の果てに生まれた悲運のクィーンを描いた今回。
実に悲しい話です。
しかし新竜バスには休車から生まれ変わった「21311号車」の例があります。
本車の更なる活躍を期待して、今日はここまで。
また明日お会いしましょう!


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