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リサイクルとは何か(国際リサイクルの失敗)

初記事。

リサイクルとは何か

日常生活にも浸透しつつある「リサイクル」ですが、皆さんはその意味や工程を正確に捉えていますか。日常的にそのリサイクルの現場に関わっている私には、その意味や意義を見直す時期が来ているように思われます。まずは定義をインターネットで調べます。

日常生活において発生する不要物や産業活動に伴い副次的に得られた物品を、資源として再生利用、あるいは有価物を回収・再生して有効利用すること。紙ごみから再生紙をつくることや、空き缶を回収し、ふたたび空き缶として再生利用することなどがリサイクルの例としてあげられる。[田中 勝] (コトバンク より)

田中勝先生と言えば、下記書籍のような「廃棄物」に関する専門家です。ですから、この定義に大きなズレはないと考えられます。では皆さんは、「リサイクルが成立する条件」について考えたことはありますでしょうか。恐らく、多くの方は、ないと思います。

リサイクルが成立する条件

下記記事で、廃棄物処理のビジネスモデルについては、述べさせてもらいました。(外部リンク→画像クリック)

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このように、廃棄物処理の実務上は、委託手数料が最も大きな収益源となります。逆に言えば、委託手数料以上にコストがかかる仕事は出来ないと捉えることが出来ます。

実はこの捉え方が非常に重要で、廃棄物処理の実務においては、全てがリサイクルできているわけではありません。できていないものも存在するわけです。その条件としては、下記の通りになります。

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言葉で言い直すと、条件は、

リサイクル(右)の方が、費用に対する利益が大きい。
かつ、環境への影響は、リサイクルの方が小さい。

となります。ここで言う費用に対する利益とは、出す側=排出事業者にとっての費用対便益(つまり、委託料が安いということ)と、受け入れ側=廃棄物業者にとっての費用対便益(リサイクルの手間に見合うだけの委託手数料をもらえるか)という双方の合意を指します。

環境への影響とは、簡単に例えるならば、燃やして埋める行為はCO2排出と埋立処分場頼りというところから、環境への影響度合いが高いと言えます。一方でリサイクルする際にも重機やプラントが動くため、リサイクルのためにエネルギーを使うというどうしようもない構図はあるにせよ、埋め立て処分には頼らず、再度資源にするという意味では環境への影響度合いは前者よりも低い場合が多いでしょう。

実際には、排出事業者にとっては廃棄物処理などコストでしかなく、環境への影響度合いがどうかよりも経済的な事情(安いかどうか)をまず判断する排出事業者がほとんどです。もしくは仮にリサイクルによって環境影響が低くても、安い処理方法を選択する業者も多いです。

ひどいと思われたでしょうか。ですが、皆さんは家庭ごみを捨てる際、高くてもリサイクルに回してもいいと思いますか?思う場合は、どこまでが許容範囲でしょうか。環境への支出というのは非常に公共性が強く、自身への直接的なリターンは感じにくいという性質があります。その現実的な感覚を加味したうえで、リサイクルは進めねばなりません。

国際リサイクルの失敗について

昨日、何となくYoutubeを見ていたら、とある動画を発見しました。非常に勉強になり、国際リサイクルの失敗の現状を生々しく正確に伝えている動画です。

こういった事情をご存じない方には、やや衝撃的なお話かもしれませんが、要はこういう構造なわけです。

  1.  寄付します、リサイクルします、無料回収します 等の名目で古材を集める。

  2.  無料回収か少額買い取りであれば廃棄物処理法の対象になりにくい。有価物である。

  3.  つまりは価値ある製品。より需要のある販売先に売るのは、自由市場で当然のこと。

  4. 国内より海外の需要が高く、よく売れるので、海外に輸出する。

  5. さらに、品位や異物など懸念材料があっても、仕分けも現地でやってくれる。

  6. 不要物と言う資源(贈り物)をしつつ、現地の雇用を生み出している。

  7. ところが、実態は無秩序な輸出により有害物があったり、ごみ化したりしている。

  8. 加えて安価な古材が大量に入ってくるせいで、現地産業が成長できない。

  9. 結果的に、大量消費社会の環境問題を押し付け、現地の貧困を助長している。

当たり前に、全ての貿易がこのような構造なわけがありません。廃棄物(有害物)の輸出入を取り締まるバーゼル条約というものもあります。現在では廃棄物由来のモノ(スクラップにしろ、プラスチックにしろ)について、貿易や税関に関する審査は厳しくなっており、有害物は輸出できない体制になっています。

しかし、それでも価値があれば、「廃棄物」なのに「資源」と称して売れてしまうわけです。E-wasteと呼ばれるような電子廃棄物や廃機器類(パソコンや携帯電話など)については、その中にあるレアメタルの存在から、変わらず有価物として扱われる傾向はすぐには変化しないと思われます。(そしてその金属を抽出したら、他の部分は焼却か埋め立てに回り、満足な廃棄物無害化処理技術のない国では有害物質が垂れ流しに・・・となるわけです)

ただし無策なわけではありません。そういった「廃棄物」に該当しない有価物だが実際は不要な電子機器であるというものに関して、「有害使用済み製品」という名称を与え、それを取り扱う仕事をすることに関する基準(届出、保管方法など)を設けるなど、怪しい業者が参入しにくくなるような策は講じています。

これらについては、せっかく「リサイクル」という名目で不要物を預けたもしくは買い取ってもらったのに、結果的にどこかの国の環境を概してしまっていることに関する消費者としての善意が蔑ろにされたという程度の問題にとどまりません。「せっかく資源を輸入して製造し、不要になったら海外転売する」という国内資源自給の問題「国内で売れなくて処分コストかかるなら、海外に売りたくなっちゃう」という環境と経済の問題「環境影響」というのは「自分が見えている範囲の環境影響」という話でしかなかった問題など、様々な問題をあぶりだしています。

リサイクルの条件を先に述べましたが、少し訂正を加えます。条件というよりは、特徴のまとめになってしまいますが、

  • 再生にしろ埋立処分にしろ転売にしろ、多くの人は「その瞬間における利益が高い」選択肢を優先する。

  • 環境への影響度合いは、単純焼却や埋め立てよりもリサイクルが低いと思われているので、一般的にはリサイクルする方を選ぶ。

  • リサイクル手法A、手法B、手法Cなど様々な手法の間の望ましさ(倫理的なこと・環境影響)までは考慮外になってしまっていることが多い。(ブラックボックス化している面もある)

以上。資源自給、リサイクルの環境影響等に関しては、また次回以降にて。
なおどのくらい電子機器が輸出されているか、廃棄物の流れがどうなっているかについては、下記に詳しい。

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