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ヘルシンキへと向かう船でムーミンに会う【卒業旅行記#19スウェーデン】
スウェーデン、ストックホルムから、フィンランド、ヘルシンキへと向かう船に乗った。
ヘルシンキは、4週間にわたるヨーロッパ旅行、最後の目的地である。
船に乗り込むと、なんと、船内にムーミンが居た。
遠慮がちに近づくと、すぐにこちらに気が付いた。
ぎゅっと抱きしめてくれた。それもかなり、長いこと。
胸があたたかい気持ちで満ちていくのを感じた。
隣にいたミイは23歳で一人ムーミンを前にはしゃぐ日本人の私に怪訝な顔をしていたけど、ムーミンは優しかった。
ホテルでだらだらと朝を過ごす
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8時くらいに一度目を覚ましたもののまだ起きたくなく、特に今日の予定もたてていなかったのでベッドの中でぬくぬく、だらだらとした。
ここまでの旅程では、朝からぱっと起きて散歩や美術館に行くことが多かったので、久しぶりにこういう朝を過ごした気がした。なかなか幸せだった。
「日曜日の朝」を凄く感じた。
ホテルの朝ごはんが10時までだったので、9時45分くらいにどうにか起きだして朝ごはん会場へ行った。朝ごはんは、ヨーグルトと、コーンフレーク。ふつうにおいしい。ヨーグルトをいっぱい食べるのは健康に良さそうで心にもよい。
朝ごはんを食べた後、チェックアウト時間を調べると12時までと書いてあった。時刻はまだ10時20分。これ幸い、とまただらだらした。
だらだらしながら向かいのおうちの窓をちらと見やると、住人のおじさんが肩に白いものをのせているように見えた。「ん?」と思ってよく見ると、両肩に鳥を2匹載せていたので目を見開いた。肩に鳥をのせている!
部屋でだらだらしているだけでも、旅先だと何かしらの発見があるものだ。日本の自宅から窓の外を見ても、肩に白い鳥を二匹乗せたおじさんを見れる確率は2パーセントくらいな気がする。いや、10年住んでて1回も見てないからもっと低いかも。
旅、してみるもんだな、と妙なところで旅の良さを思い知る。
ポテチとの再会
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チェックアウト時間ギリギリの正午までだらだらとし、チェックアウトを済ませた後は荷物を預けて少し散歩に出かけた。
外は、晴れてはいなかったものの明るかった。曇りだったが、青空がほんの少しだけ覗いてみえた。
昼ご飯の調達でもするか、とスーパーマーケットへと向かう。
そこで、再会してしまった。
私が留学時代によく晩御飯にしていた、ポテトチップスに。
うわーーー!
これ、めちゃめちゃ好きだった。堅あげポテトをもう少し軽くしたような触感に、濃いめのサワークリームがかかってて、おいしいんだよなあ。
留学時代、夕方ごろにお腹がすいてくるとスーパーへと向かい、「まあ、ポテチってじゃがいもだし、1食分のカロリー摂取と考えたらそんなに量はないし?」と、めちゃくちゃな理論で晩御飯代わりによく食べていた。(不健康極まりない)
今ここでポテチを買おうか、どうしようか、と逡巡する。
いやでも、これ食べたら確実に太るし、来週からは友達に会うから、可愛い私でいたい……。
いや、でも、食べたい……。いや、でも……。
こういう時は1回スーパーから離れるのが良い。買い物は迷ったら買わないが鉄則。1度スーパーを出た。
港沿いの散歩
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スーパーを出て、港沿いを少し散歩することにした。
1時間ほど、明るい水辺を歩き回った。
歩きながら、はたと「私は今、ずっとやりたかったことをやっているんじゃないか」と気が付いた。
北欧を散歩をして、文章を書いて、眠って、また散歩をして。
ずっと恋焦がれていたのだ。北欧の空気の中での散歩に。
文章を書くこともそうだ。「ゆっくりと文章を書く時間を取る」というのが、やりたいことリストに、2年間くらい入りっぱなしだった。
私は夢を、叶えている。
じんわりと、嬉しいなと思った。
ポテチ購入
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ポテチは結局、買った。「やっぱ食べたいな?」の声が勝った。圧勝。
1回離れてみて買いたかったらその気持ちは本物である。
スーパーに戻って購入した。ほくほくした気持ちでスーパーを出た。
地下鉄アートをみにいく
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ポテチをもってホテルへと返り、「なんか理由は分かんないけどすごい居心地の良いホテルでした!」とフロントのお姉さんに告げてホテルを出た。
フェリーの出航場所へと向かうため、地下鉄に乗る。
地下鉄に乗ってから、そういえば、ストックホルムの地下鉄駅は駅自体がアートになっていることで有名だったことを思い出す。
「ストックホルム 地下鉄 アート」でグーグルで調べると、「ティーセントラーレン」という駅のものが綺麗らしい。は、と顔を上げると今丁度その駅だったが一瞬遅かった。無慈悲に地下鉄の扉が閉まるので、次の駅で1度引き返すことにする。
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重い荷物を引きずってみにいった。
洞窟みたいで、格好良かった。海の中に洞窟があったらこんな雰囲気かな。
毎朝ここ通れるの、テンション上がるだろうなあと思う。
フェリーに乗り込み、ムーミンと再会する
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アートに満足すると地下鉄に乗り直し、フェリー港へと向かった。
チェックインをサクサクと済ませる。機械上に、フェリーのチケットに印字されたQRコードをかざすだけで終わる。便利だ。
搭乗が始まった。ヘルシンキを意味するスウェーデン語「Helsingfors」の文字を見て、「私、フィンランドにまた行くんだ」とどうしようもなく嬉しくなる。
まずは自室に荷物を置きに行った。クルーズは16時から翌朝10時半までの長旅。一泊するのだ。
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お部屋は意外と広い!嬉しい。
しかし、窓はないし、あと、電波もない。
電波がないのは普通に困るので、電波のあるエリアに行くことにした。フェリーの搭乗階。
すると、そこにムーミンが居た。
「!」声にならない声を上げる。
フィンランドのムーミンを見るのは、2年前の夏にムーミンワールドで会った時以来だった。
そろりと近づくと、ムーミンはすぐにこちらに気が付いた。
そうして、ぎゅって抱きしめてくれた。ムーミンは柔らかくて、あたたかかった。
胸が、じんわりとあたたかくなった。
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そのあと、一緒にツーショット(ミイ入れたらスリーショットか)を撮ってもらった。
とても嬉しかった。
「23歳にもなってキャラクターとのグリーティングに喜んでるの、どうなの……?」という冷静な私もいないわけではないけど、でも、嬉しかった気持ちに嘘はない!わー!嬉しかった!!!
ほくほくとした気持ちでムーミンのもとを去る。
ああ、これから私はヘルシンキでいろんな人やいろんなものに再会するんだな、とふと思う。嬉しいことだ。ご縁があって、嬉しいことだ。
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電波が繋がる階の適当な椅子に腰を落ち着けると、ポテトチップスを開けた。
変わらない味がした。笑みがこぼれそうになる。
船はいつのまにか出港していて、窓の外ではスウェーデンの景色が流れはじめていた。またね、と思う。またくるからね。
ステージで踊り狂うムーミンを刮目して見る
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なんか、放送で「ムーミン」って言ってる気がする。まだ勉強を始めたばかりで一部の単語しか拾えないフィンランド語だが、「Muumi」って言ってる、絶対言ってる。
音のなる方へと向かうと、ムーミンが居た。
ステージ上でディスコ音楽で踊り狂っていた。
高熱でうなされたときに見る夢かと思った。非現実味がすごかった。
これは目に焼き付けなければいけない気がする、と刮目してみた。
すると、10年程前に流行ったオッパ・カンナムスタイルの音楽が流れ始めた。「オッパ・ムーミンスターイル」と聞こえてくるからさすがに笑ってしまう。
どんなムーミンでも、私は好きだぜ。
夢みたいな光景(字義通り)を見てるうちに、ほんとに眠くなってきた。
そろそろ、部屋に戻って眠ろうと思う。
久々にインターネットから切断される夜だ。
よく眠れますように。
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