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スウェーデンのホテルで雇用契約書にサインする【卒業旅行記#17スウェーデン】

雨の音がして、スウェーデンのホテルで目を覚ました。
今、何時だろう、とスマホを見ると「雇用契約書にサインをしてください」というメールが届いていた。内定先の企業からだった。

時刻は午前8時。日付は2023年、2月24日。
寝起きでぼんやりとした頭で、ああもうそんな時期か、と思う。

朝ごはん

朝ごはん会場

雇用契約書を見る前に、まずは朝ごはんを食べることにした。
数あるホテルからイェーテボリのこのホテルを選んだ理由は、ずばりBooking.comに掲載されていた朝ごはんの写真がおいしそうだったからである。Booking.comに載っていたキャロットケーキはあるかしら、わくわく。

足取り軽やかに朝ごはん会場へと行くも、キャロットケーキは、なかった。
物凄くベーシックなヨーロッパの朝ごはんが並べられていた。
パンと、ハムと、キュウリと、あとはオレンジなどのくだものがいくつか。

ちょっとしょんぼりとする。
まあ、仕方ない。比較的健康的なものを食べようとオレンジときゅうりをたくさんとって食べる。

また、コーヒーサーバーの横にクッキーを見つけた。
甘い。甘いって嬉しい。ちょっと元気が出る。

スウェーデンのホテルで雇用契約書にサインをする

部屋番号11、部屋の名前はオレガノ

朝ごはんを食べ終えると、雇用契約書に取り掛かることにした。
署名の期限は3月上旬だと記されていたが、こういうものはさっさと済ませるが吉である。

署名の方法はというと、電子署名の欄があるので、そこに名前を打ち込んで完了らしい。
便利な時代だ。紙の印刷すらしなくて良いだなんて。

署名をする前に、契約書をじっくりと読む。こういう癖がついたのは、法学部に入って良かった点かもしれない。

契約書を読みながら、四月からの自分を想像してみる。
そんなにうまくは想像できない。けど、しばらくは仕事にきちんと力を注ぎたい、と思っている。
自分がやりたいと望んでご縁が与えられた場においては、目の前の1つのことだけに真摯に誠実に向き合うのが一番良い、と経験上知っている。

でもきっと、思い通りにいかないことの方が多いんだろう。
それに対して歯を食いしばれる日も、上手く行かずに転げまわる日もあるだろう。

応援している、と、未来の私に念を送る。
大丈夫。これまでもなんとかやってこれたから、大丈夫。
でも、無理はしないで。自分の心の動きに、どうか正直でいて。

署名送信ボタンを、ぐっ、と力を込めて押す。

イェーテボリ駅散策

ホテルをチェックアウトして、電車の出るイェーテボリ駅へと向かった。
道中、パン屋さんを通りかかると、今朝ホテルでは出会えなかったキャロットケーキが売られているのを見つけて、思わずお店に入る。1つ、テイクアウトする。

キャロットケーキを携えて、駅に着く。
まず、電車の出るホームを確認する。よし、4番ホーム。
こういう手順を踏めるようになっていることに対し、旅慣れてきたなあと少し嬉しく感じる。

そのあと、まだ電車の発車には時間があったので駅構内を散策した。

女の子の像があった。
壁に寄りかかって泣いているように見える。
最近、全体的に気分が落ち込み気味なので、そういうときあるよねえ、と勝手にシンパシーを感じる。
北欧はなんだか、人の負の感情についても「そういうのあるよね」と受け入れて表現してくれる国土な気がしている。そのことに安心する。

続いて、コンビニで昨日買ったのと同じグミを買った。
レジで店員さんにスウェーデン語で話しかけられるも、多分「レシート入りますか?」だろうなと思って英語で聞き返すことはせずに首を振る。
「Tak(スウェーデン語でありがとう)」、と言ってレジを去る。少しだけでも、現地語が使えるのは嬉しい。

電車に揺られてストックホルムへ向かう

Flix trainという電車に乗った。

車体に「再エネ使用率100%」と書いてあって、しびれる。かっこよすぎる。

4時間ほど電車に揺られた。
お気に入りのプレイリストの音楽を聞きながら窓からの風景を眺める。
途中から景色に白が混じり始めた。雪だ。
北に来たんだな、と嬉しくなる。

車窓を眺めてぼんやりとしながら、物凄く精神が凪いでいるのを感じた。
明るい曲も、暗い曲も、今ならどちらでも聞ける。

そんなことをぼんやりと思いながら、キャロットケーキを口に運ぶ。

とても甘い。
考えていたことのすべてが「甘い」に上書きされるほどの、甘さ。
しばらく甘さに身をゆだねる。

ストックホルム駅到着

16時半頃、ストックホルム駅に着いた。
駅の外に出て、ホテルへと向かう。この瞬間、いつも少しだけ緊張する。無事ホテルまでたどり着けるかしら、と。 

緊張しながらも、可愛い街並みに心が躍る。
荷物を置いたらすぐに散歩に出かけなくっちゃ。
ホテルはガムラスタンの古い通りにあった。可愛い見た目に気分が上がる。
無事チェックインを済ませ、荷物を置いて外に出る。

夜の水辺散歩

まずは、ホテル近くのガムラスタンのあたりを歩く。かわいい。どこも絵になる。
建物の背を高く感じるのは、道幅が狭いからだろうか。
その後、港へと向かった。

白鳥

そのまま、水辺のまわりを散歩した。外はマイナス1度。
ひんやりとした空気に嬉しくなる。

色々と考え事をしながら、水辺の周りを歩く。
四月からの仕事のこと、これから会うフィンランドの友人たちのこと、もう会えない人たちのこと。

歩いていると、段々と頭がクリアになってくるのを感じる。留学中も、考えが煮詰まると凍った湖の周りをぐるぐると何周もしていた。最初はずんずんと歩き始めて、やがて思考が落ち着いてくると歩みは穏やかになる。

散歩中見かけた、落ち着いた顔のライオン像

2時間ほど歩いて、宿に戻った。
出発前、友人に「今回の旅行はあんまりお金もないし散歩が中心になりそう」と話していた。実際、その通りになっている。

4月から働き始めたとき、私は今の日々をどんなふうに捉えるだろう。
1か月も旅行だなんて羨ましい、とか思うんだろうか。
いや、長期間の旅行はそんなにいいものじゃないよ、と今の私は苦笑いをしてみせる。

全部は覚えていられないかもしれないけど、旅行の中で、いろんな心の機微があったことを覚えていられたらいいな、と思う


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