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2019年に読んで面白かった本(科学とノンフィクションを主に)

2019年に読んで面白かった本を、小説・漫画以外でまとめました。すべてKindle本です。ちなみに2018年はこちら

月に万単位で本を買いまくった2018年から一転して、2019年は節約につとめたため、数が減りました。

今年もまだ1週間くらいあるけど、予算の都合上、新しい本を買う予定がない(シリーズものの漫画の新刊予約でいっぱい)。そんなわけで早めに締め切ってこのnoteを公開してしまいましょう。

古屋晋一『ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム』

楽器が弾けない人間にも興味深い1冊。幼少時から長時間の練習を積むピアニストの脳は、一般人と異なる変化を遂げている。一方、それが故障の原因となることもあるらしい(過剰適応みたいなもんかな)

富田啓介『はじめて地理学』

地理学者が登場する小説を書くために「まず地理学を知るべし」と手にとった入門書(結局その小説は書けていないのだが)。中学の理科の教科書に出てきた内容も載っていて、義務教育の9年間で学ぶ内容ってかなり多いんだなと改めて実感する。

高野秀行『アヘン王国潜入記』

ソマリランドでおなじみの著者による有名なルポ。村人の誘いでアヘンを吸い始めて依存してしまうくだりも描かれる。アヘンを栽培する彼らにとってアヘンは売り物だから本当は吸っちゃいけないんだけど、ちょいちょい吸っちゃう人や、依存して働けなくなる人もいる模様。

清水克行『喧嘩両成敗の誕生』

高野秀行と何度か対談本を出した中世日本研究者が、一般向けに出した最初の本。喧嘩両成敗は、どちらが正しいかを裁きで決めるよりも、両者の損害をなるべく公平にすることに重きを置いていたのではないか、と(いわゆる痛み分け)

カレー沢薫『負ける技術』

思えば私がカレー沢薫という名前を知ったのは、Amazonで突然レコメンドに出てきたこの本がきっかけだった。「この頃はまだおとなしかったんだな」という印象を受けた。丁寧なんだか口が悪いんだかわからず、それなのに配慮が行き届いていてる独特の作風の兆しが見える。

ジェイムズ・リーバンクス『羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季』

湖水地方の羊飼いの家に生まれた著者。父と対立し、外の世界の価値観を知ったあとで再び先祖伝来の仕事に戻ってくる。

エリザベス・ドネリー・カーニー『アルシノエ二世 ヘレニズム世界の王族と結婚』

プトレマイオス王朝での兄弟姉妹婚の発端となったアルシノエ2世について。

矢島文夫『ギルガメシュ叙事詩』

原本の欠けている部分を空白のまま翻訳した1冊。解説のほうが長くて重要。元版は1965年で、PCが使えない時代の研究や出版の大変さが伝わってくる。60年代って歴史的にはごく最近だけど、体感的にはかなり昔なのでギャップがあって驚くね。あとがきに「ボールペンというものを手に入れた、めっちゃ便利」みたいなこと書いてあるんですよ……。

ヤニス・バルファキス『父が娘に語る、美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』

タイトルなげえよ!(原題は Talking to My Daughter about the Economy なので邦題が無駄に長すぎる)中身はいたって面白くて読みやすい。民主主義がどれだけ大きな意味合いを持っているか力説されているので、特定の国では出版できなさそうだと思った。

原武史、三浦しをん『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』

対談本。原さんの偏った知識と三浦さんのツッコミが見どころ。

中島恵『中国人エリートは日本をめざす なぜ東大は中国人だらけなのか?』

現代中国についての記事や書籍は、遠藤誉、福島香織が書いたものを愛読していた。そういえば中島恵の記事も面白かったよな、本も読んでみようと思い購入。中国もアメリカも競争が非常に激しい社会なので、中国人の中でも過酷な競争を好まない性格の人が日本を留学先に選んでいる印象だった。いわゆる日本スゴイ本ではない。

鈴木智彦『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密猟ビジネス」を追う』

読みごたえあった。産地ロンダリングとかなんでもアリ。海産物は全部ブラックだな……。「もう魚介類を食べるのやめようかと思った」なんて感想を見かけたけど、そう思っちゃう気持ちもわかる。

野本響子『日本人は「やめる練習」がたりてない』

noteでもフォローしている野本さんが今年出した本。マレーシアでの育児をきっかけに気づいたさまざまな話。子どもの適性を見出して伸ばす方向にシフトしている海外の教育事情、日本が便利だけど生きづらい理由についての考察など。人によって向き不向きがあるし、日本の教育や制度が合わないならお試しで海外に出てみたらいいんじゃないか、と。

鈴木隆美『恋愛制度、束縛の2500年史 古代ギリシャ・ローマから現代日本まで』

興味深い指摘が満載だったので、いろんな人に読んでほしい。そして著者には今後、ロマンティックラブ・イデオロギーの世界化についての本を出していただきたい!

デイヴィッド・ライク『交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』

何年か前にスヴァンテ・ペーボ『ネアンデルタール人は私たちと交配した』を読んだけど、その後の最新事情をまとめてくれてる。今後、ゲノム解析は炭素同位体の計測と同様、研究に欠かせない技術となりそう。あと、ゲノム解析で明らかになったのは、「純血」の人間なんて存在しないし、人種差別には何の根拠もないってことだ。

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

もう何年も前に著者のブログを読みふけって以来、この人の著作には注目している。息子さんはとうとう中学生になり、経済的に困難な家庭の子どもが多い学校へ進学。その様子をつづったエッセイ。シンパシーとエンパシーのちがいを初めて知った……。これ読むと、一部のBL小説における「アジア人を露骨に差別するエリート校」はかなり時代錯誤なのだろうと感じる。そういえばホグワーツにも多様なルーツの子たちがいたね。

ジョナサン・B.ロソス『生命の歴史は繰り返すのか? 進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む』

スティーヴン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ』、ジョナサン・ワイナー『フィンチの嘴』を読んだ人には、きっと刺さる1冊。進化は数ヶ月、数年単位で発生するし、環境が似通えば進化の行き着く先は驚くほど似ている(収斂)。つまり進化はある程度くり返すらしいぞ?ってことが明らかに。進化が実験できるようになったという話も興味深い。

カレー沢薫『女って何だ?』

Web連載時に読んだ「バターケーキ女」の回が面白すぎて忘れられず、買ってしまった。女とは?なんて結論は出ない。出るわけがない。ネタ提供元となる担当編集者の面白さを、カレー沢薫が見逃さずツッコミを入れて調理し続けるエッセイでもある。

リサ・ランドール『ワープする宇宙 5次元宇宙の謎を解く』

2013年に買ったものの途中で挫折していた本。再び最初から読み始めて、今度は無事に読了。先に監訳者あとがきを読んだほうがわかりやすかった気がする。電子版なので、ヒッグス粒子の発見に関する特別付録あり。

節約も兼ねて昔買った本を読み返すことが多い1年だった。収納に困らないのが電子書籍のいいところ。おかげでKindleの蔵書は2400冊を超えた。「そんだけあったら新しい本買う必要ないやろ」と夫に言われたけど、残念ながら本はトイレットペーパーの買い置きのようにはいかない……。

あと最近、なろう小説を読みふける周期に入った。おかげで科学とか経済とか勉強になりそうな本をまったく読んでない。英語の本も中断してる。誘惑に弱い人間は易きに流れるのだ……。

(なろう小説を読むと「こうやって読者の願望に応えるのか!」「目がすべって読み飛ばしても問題のない構成になってる!」などの発見があって面白い。純粋に作品としても面白いんだけど、そのあたりも勉強になる。気が向いたらnoteに書こう)

来年も予算を調整しつつ、読書を楽しんでいきたい所存です。


追記:2020年版は下記。


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