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400年小便する小僧【Day1:ブリュッセル】

3月1日夜22:50羽田発。
食事をとってから飛行機に乗り込みたいと思い、
21時過ぎに空港で『つるとんたん』の鍋焼きうどんを食べる。

すると乗り込んだトルコ航空の飛行機でいきなり夕食が出てきた。
そんなばかな、夜の23時を越えているのに。
みんな、当たり前のように食事をとる。

「夜23時から夕ご飯を食べるのも、鍋焼きうどんを食べたあとに、機内食を食べるのも当たり前のことだ」と自分に言い聞かせながら、胃袋に詰め込んでいく。お腹が苦しいと思う前には爆睡していた。

ベルギーについて姪っ子の家に荷物をおろし、
首都ブリュッセルの中心地に向かう。

東京に比べて寒いが、青空が気持ちい。
「小便小僧」が有名と聞いていたが、いきなり「小便少女」に出会う。

なんというか・・・小便はやっぱり小僧のほうがいいなと思う。

甘いものはあまり食べないほうだが、
数少ない予備知識としての「ベルギーワッフル」を見つける。

こちらのワッフルは日本で食べるのとは違って、
サクサクしていてアツアツで美味しい。
いや、日本でもそういうお店はあるのかもしれないが。

いい旅のはじまりはまず、現地で美味いものを口にすることに尽きる。

自分を異国の地に少しずつ馴染ませていく。

そして、「グラン=プラス」という大きな広場に出てくる。その美しさに、その広さに、思わずワッと目を見開く。なんて素敵な場所なのだ。ヴィクトル・ユゴーが賛嘆したことでも知られるこの大広場は、世界で最も美しい広場のひとつといわれている。360度の大パノラマは写真ではフレーミングしきれない。あぁ、これを見るだけでも来た甲斐がある、そう思わせてくれる。

そして行列のできていたフリッツ(ポテトフライ)屋さんに並ぶ。

一人の兄ちゃんがもくもくとポテトを揚げては注文を受けて会計もやる。大忙しだ。というか行列の原因はワンオペのせいなんじゃないかと思えてくる。

僕は小さなフリッツにマヨネーズをつけてもらった。これが美味い、美味すぎた。ワッフルの思い出が一瞬で吹き飛ぶくらい美味い。「いい旅の始まりはまず現地で・・・」の台詞はこのタイミングで思いつくべきだった。

そして有名な「小便小僧」に出会う。

なんというか・・・驚くほどの感動が1ミリもない。
正直、みなさんがいま、この写真を見て「ふーん・・・」と思ったくらいの感情しか生まれない。

どうやらこれが世界のあまたある「小便小僧」の起源と言われているらしい。この子は400年もここで小便をしている。もはや小僧ではなくて、誰よりも高齢である。そして、とてつもない人だかりができている。みんな驚くほど感動していない。とりあえず写真は撮っておくかという空気感。

気を取り直してブリュッセル中央駅に戻り、「芸術の丘」という場所にくる。やはりヨーロッパの広場は気持ちがいい。

その後、王立美術館にいってマグリットの世界観に魅了される。影響を受けやすい僕は、なんとかして芸術家っぽい写真を撮りたいと思い街を徘徊しながらシャッターを切っていく。

そうこうしているうちに姪っ子が仕事を終えて、
グラン=プラスにやってくる。

「アー写を撮ってほしい」とお願いしたら、
「アーティストだったっけ?」と笑われる。

姪っ子のほうが構図がうまいことに嫉妬する。アーティストではなかったことに気づかされる。そして夜、彼女のおすすめする「LEON」というベルギー料理屋さんにいく。驚くほどナチュラルにフランス語で店員と会話する姪っ子に負けじと、

「ボンジュー」(こんばんは)
「サ シルブプレ」(これください)
「メルシ」(ありがとう)
「セボン」(美味しいね)
「ボンジョルネ(じゃあね!良い1日を!)

覚えたてのフランス語をこれでもかとばかりにナチュラルに言う。店員さんも普通に(あるいは気を遣って)ご機嫌に返してくれる。そして出てきたムール貝と小エビのサラダ。

今日一日、育ち盛りの柔道部員みたいに食べまくった僕のお腹でさえ、このベルギー料理はとても美味しく感じられた。そして何より嬉しかったのは、姪っ子といろいろな話ができたことだ。そうだ、もう彼女も大人になっていた。大人になったからこそ話せることはたくさんあるし、ベルギーだからこそ話せることもたくさんあるように思えた。

夜のグラン=プラスもまた美しかった。

年度末の繁忙期に旅をすることなんて今まで考えられなかった。もちろん仲間の存在もある。快く旅立ちを祝ってくれた友への感謝。でも、やっぱり、時には仲間に甘えて、自分がやりたいように旅をするのもいい。

当たり前のことだが、僕らはあの小便小僧みたいに400年も小便ばかりする必要はないのだ。時にもっと自由に、もっと人生を楽しむ権利があるのだ。

(Day2につづく)


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