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腐女子が読む呪術廻戦 本誌 261話 感想

注意:ネタバレを含みます。筆者は五条悟ファン、夏五派です


五条悟は2度死ぬ


 236話で真っ二つになった五条悟の死に様を見てからずっと、私はいつか必ず悟が復活すると信じてきた

 たとえどんなに絶望的な展開になっても、最終話までわずかな希望に縋り続けるつもりだった。

 しかし、261話を読んだ今、もはや一縷の望みもなく、悟は決して復活しないのだと思い知った
 

 私が悟復活を願う理由と根拠は236話の感想で述べたが、何より、大好きな五条悟に最後まで最強でいてほしいという願望と、悟の死を目の当たりにしても高専関係者が悲しみもせず淡々と戦闘を続けていく様子から、五条が死んでも蘇生するプランがあるのではないかという期待があった。

 だが、私の予想に反して、高専関係者に共有されていたのは起死回生の死者蘇生術ではなく、羂索の術式を使って乙骨が悟の死体を利用するいうとんでもない作戦だったのだ。
 
 宿儺を倒すためとはいえ、まさか主人公サイドが宿敵・羂索と同じことをするなんて…。

 しかも、どうして「宿儺に負けた」悟の体を乙骨が使ったら、「宿儺に勝てる」という発想になるのか? 自分の方が悟の体を上手に使えるとでも?
悟のこと馬鹿にしてる??

 私は今、夏油の体を乗っ取った羂索に対するミミナナと同じ気持ちだ。
 
 作者に対する怒りと憎悪で体の芯が燃え滾っている。

 羂索が夏油の肉体を乗っ取っても「夏油が復活した」ことにはならないように、こんなのは五条ファンが望んだ「復活」ではない。

 五条の体に乙骨の脳(魂?)が入ったことにより、五条が復活する道筋は完全に断たれた。

 そしてこの先、乙骨in五条が宿儺に勝つとも思えず、乙骨も五条ももう一度宿儺に殺されるか羂索の術式の限界が来て死ぬのではないだろうか。

 そうなれば、五条悟は2度死ぬことになる。
 
 これが作品屈指の人気を誇る主要キャラに対する扱いか。

 五条ファンである私もまた、一度ならず二度までも胸を抉られるような苦しみと悲しみを味わわされることになった。

五条悟は怪物なのか?


 261話で乙骨が、五条の死後その肉体を使って戦う計画を高専術師たちに反対され、「みんなオマエが大事なんだよ」という真希に対し、

「五条先生は!? 五条先生は大事じゃないの!?」

と言った時、ちゃんと悟を心配してくれる乙骨に私は「おお!」と感心したのだが、その後乙骨は

「僕たちはみんな!! ずっと怪物になることを五条先生に一人に押し付けて来たんじゃないか!」

と不可解なことを言い出す。

 は? 悟が怪物とは?
 
 敵だった伏黒甚爾に「化物」と呼ばれるのはわかる。

 でも、高専サイドにとって五条は「規格外」の「最強」ではあってもモンスターではなかったはず。

 なぜ突然乙骨は「怪物」などと言い出して

「五条先生がいなくなったら誰かが怪物にならなきゃいけない」
→「僕がなる!!」

というとんでもない発想に至ったのか。

 そもそも、五条も乙骨もほかの誰をも「怪物」なんかにしなくてすむ道を考えるべきではないのか。

 突如生えた「怪物」設定になぜか五条自身も疑問を抱かない。

「もう独りで、怪物になろうとしないでください」と訴える乙骨に、五条は≪そりゃ無理な話だよ≫と心の中で答える。
 
 悟は「独りで怪物になる」ってこと?
 夏油に追いつくために??

五条悟にとって夏油傑は


 悟が最後まで傑に拘っていたことにはぐっときた。

 公式ファンブックに、青春時代の五条は「夏油の判断を善悪の指針にしていた」と書いてあったけれど、結局夏油は五条にとって「生きる指針」であり続けたのだ。

 最強になった五条との間に埋めがたい溝を感じて夏油は孤独を深め、闇落ちした。
 
 五条に「追いつけない」と諦めて、別の生き方を選び去って行った夏油に対し、五条は「俺はあの時、置いていかれた。追いつかなきゃ」と考えている。
 
 親友でありながら(だからこそ)どうすることもできなかったこのすれ違いが、五条と夏油の関係性の魅力でもある。
 
 五条にとって夏油は永遠に「たった一人の親友」であり、唯一無二の「special」な存在だった。

 それにしても、悟の「追いつかなきゃ」は、≪傑のように≫信念を貫くためには両手を血で汚しても構わない、仲間に理解されず孤独になってもいい、ということなのか。

 五条には夏油が選んだ道の先にあるものがわかっているのにそれでもなお、追いつかなきゃと思うのか。

 最期の最後で、額の傷や死後肉体を利用されるところまでお揃いにならなくてもいいのに。


五条悟の夢


 新宿決戦前に呪術総監部の爺たちが惨殺された光景を目にした時、本当に五条がこんなことをやったのかと半信半疑だった。

 しかし、今回五条自らが手を下したことが確定してしまった。

 私はこんな汚い事を悟にしてほしくなかった。

 悟には、総監部の爺どもなんてその気になればいつでも殺せるけど殺さないでいて、表面上は命令に従いながらも実際には賢く狡く立ち回ることで呪術界を変えていってほしかった。

 その方が最強として超然とした五条悟にふさわしいやり方だと思っていた。

 そのために悟は「強く聡い仲間を作る」ことを望んでいたのではなかったのか。

 結局、五条が育てた「強く聡い仲間(乙骨たち)」は五条と≪共闘する≫のではなく、(五条の死体を利用してまでも)≪後を継ぐ≫という形で、五条の夢を叶えることになるのだろうか。
 

溢れ出す不満


 五条悟が死んで以来、予想通り物語の面白さは激減し、後付け設定と自己矛盾の目立つ駄作に成り下がった。

 それでも、もしかしたらの大どんでん返しを信じ、毎週「つまらないな」「どうしてこうなってしまったのだろう」と呆れながらも両目を瞑って我慢して読み続けてきた。

 しかし、悟復活の夢が潰えた今、めちゃくちゃな展開に怒りが溢れてきた。

 悟が命を懸けて戦っているのに、残りのメンバーは他人事のようにTV観戦を続け、悟がピンチになっても助けに行こうとするのは乙骨だけで日下部や秤はむしろ乙骨を止めようとした。
 
 五条の足手まといにならないように参戦しないという約束だったとしても、宿儺が式神を出して3対1とかダサい上に卑怯なことをしてきたのだから、乙骨の言う通りケースバイケースであそこで介入すればよかった。

 決戦前の1か月間何をしていたかをきちんと描かずに新宿決戦に突入し、後出し会議と回想、謎のインタビューを繰り返すからさらに理解不能な矛盾が生まれるばかりだ。

 五条が死んだらどうするかではなく、第一に五条を死なせない作戦を立てるべきではないのか。

 ご都合主義の縛りの乱用と後付けに後付けを重ねて完全に破綻した設定はもはや修正しようもない。

 五条より弱い鹿紫雲、日車、日下部、ラルゥ、ミゲルが参戦したところで無意味に戦闘を引き延ばすばかりで宿儺に勝てるわけもなく、そもそも期待すら持てなかった。

 初期メンバーである虎杖、真希、乙骨が協力して戦ったほうがずっと盛り上がった。

 はじめから高専メンバーが全員でかかれば、ブギウギとハートキャッチからの茈あるいは処刑剣で宿儺を倒せたわけだし、これほど犠牲を出さずに済む方法は確実にあった。

 宿儺を優勢にするために、高専側はわざと全力で戦わず、五条を見殺しにしたようにしか思えない。

 五条が負けて死んだ場合の作戦ばかり練っておいて、死んだら復活させるわけでもなく死体をもらう約束で、皆で笑いながら五条の背中を叩いて送り出すなんて怖すぎる。メンタルがおかしい。

 悟にしたって、夏油の死体を羂索が乗っ取った時あんなに怒っていたのに、自分はいいのか?

 登場人物に個別の思考や感情がなく、ただ作者の思い通りに動く操り人形になっていて心情描写をしないから、こんな矛盾だらけのおぞましい漫画が出来上がるのだ。

 あんな形で悟を死なせ、さらに死体を損壊するくらいなら、悟を獄門疆から出す前に釘崎を復活させて伏黒を宿儺から引きはがし、1年ズ3人で宿儺を撃破、その後羂索戦の途中辺りで悟を箱から出して羂索を倒し一億総呪霊阻止、悟に傑の肉体を弔わせれば綺麗に終われたのに。
 
 各キャラが魅力的で渋谷事変までは本当にストーリーが面白く「呪術廻戦」が大好きだったからこそ、許せない一線を越えてしまった現状が残念でならない。

「呪術廻戦」にさようなら


 アニメ1期で「呪術」ファンになり、単行本を揃え円盤を買い、本誌を発売日0時に読んで追いかけ続けてきたけれど、今日でお別れすると決めた。

 私にとっての呪術廻戦は236話で悟が死んだ時に終わっていたのだ。
 
 私は悟が死んだことではなく、宿儺のどのような攻撃によってそれまで優勢だった悟が敗北したのかがきちんと描写されなかったことと、空港で宿儺に対して「申し訳ない」などと悟に言わせたことが今でも納得できない。

 悟にはあの空港で今度こそ夏油に背中を押してもらって北行きの飛行機に一人で乗り、「新しい自分」になってほしかった。

 ただ、夏五派の腐女子である私にとって、傑の隣で幸せそうに笑う悟の姿を見られたのは救いだった。

 悟に「お前がいたら満足だったかもな」と言われて傑の眦に光った一粒の涙を見た時、私も泣いた。
 
 悟はこれからずっと傑と一緒にいられる。2人で失った青春の続きを楽しんでほしい。

 この感想を書いたら、私は261話以降の展開について思い悩むことはやめるつもりだ。
 本誌を買うのも今回で最後、単行本は26巻で終わり。

 さようなら「呪術廻戦」。
 それでも、私はこれからも悟と傑と、渋谷事変までの物語を愛し続けるよ。

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