腐女子が見る呪術廻戦(懐玉・玉折編感想) アニメ2期が最高過ぎた
注意:筆者はボーイズラブ(BL)を愛好するいわゆる腐女子です。
「呪術廻戦」のネタバレを含みます。
呪術アニメ2期が凄過ぎる
私はアニメ1期を見て原作ファンとなり、今では毎週発売日0時にジャンプ本誌を読むほど「呪術廻戦」にハマっている。
アニメ2期ももちろん楽しみに待っていたのだが、初回から脚本、作画、演出のすべてが期待を遥かに上回る素晴らしさで毎回感動している。
中でも、昨夜放映された第4話(懐玉・肆)は別格の出来だった。
呪霊を使いこなす夏油と伏黒甚爾の戦闘シーンはスピード感に溢れ、アニメだからこそ表現できる迫力と臨場感があった。
背景を含めた作画が驚くほど細やかで美しく、一つ一つの場面の演出も見事だった。
圧巻だったのは悟VS甚爾の最終バトルだ。
かつてなくハイテンションの悟が、呪力の極意を掴んで辿り着いた神々しいまでの強さ、最強の呪術師が覚醒した証として怖いくらいの静寂の中で放った茈……、中村悠一さんの渾身の演技に圧倒されて震えた。
「呪術廻戦」は声優陣が豪華で、櫻井さん(夏油)も子安さん(甚爾)も言うまでもなく素晴らしいけれど、この回の中村さんには突き抜けたものを感じた。
音楽も最高で、OP曲「青のすみか」は五条サイド、ED曲「燈」は夏油サイドの、二度と戻れない青春と失った親友への複雑で切ない胸の内を余すところなく表現していて、聞く度に感動する。
テレビシリーズでこんなクオリティの高いアニメを、私はいまだかつて見たことがない。
私が子供の頃に見ていたものとはもはや別物と言えるほど、アニメは進化したのだなと改めて思った。
アニメ1期で「制作:MAPPA、脚本:瀬古浩司さん」であることを知った時から、間違いなく神レベルの作品になることはわかっていた。
原作に思い入れがあればあるほどアニメ化が怖くなる私なのだが、「BANANA FISH」のアニメを見て以来、MAPPAと瀬古浩司さんの作品を信頼している。
しかも、瀬古さんは私が愛してやまない「囀る鳥は羽ばたかない」の映画「The clouds gather」の脚本も担当された方なのだ。
瀬古さんは作品に対する理解がとても深く、原作ファンが絶対に変えてほしくないセリフやシーンを非常によく理解されていると思う。
昔、好きだった作品がアニメ化されて、原作と微妙にセリフが変わってしまった場面に遭遇する度に私はがっかりしたものだった。
「BANANA FISH」といい「呪術廻戦」といい、あれほどの長さの原作を見事に圧縮してまとめ上げ、それでいて大切なシーンやセリフはどれ一つとして外さない瀬古さんの構成力には感服するばかりだ。
完璧で究極、最強で無敵な五条先生とやんちゃ悟
作者の芥見先生曰く、「分かりやすい天井が欲しくて」誕生した現代最強術師の五条先生は、呪術界の名門御三家の一つである五条家に生まれ、六眼と無下限呪術を併せ持つ超エリートで国宝級の美貌の持ち主だ。
私は現代最強術師となった後の28歳の「五条先生」よりも、高専時代の「やんちゃ悟」(じゅじゅフェス2023において花澤香菜さんがこう呼んだ場面は本当に可愛かった)の方が好きだ。
高専時代の悟は、我儘で自分勝手で世間知らずなお坊ちゃんで、すでにめちゃくちゃ強いけれども、天与呪縛のフィジカルギフティッド伏黒甚爾との対決においては一度死にかけてしまう弱さがまだあった。
私は、もともと才能があって強い人がさらに強い敵と出会って命を懸けて必死で戦うのが好きなので、誰に対しても余裕のある五条先生よりも、もしかしたら負けてしまう隙のある悟の方がずっと応援しがいがあった。
伏黒甚爾との死闘を経て、悟は完璧で究極、最強で無敵の術師と成る。
だがそれは、唯一の友を失い、一人になることをも意味していた。
「呪術廻戦」で一番モテる男、夏油傑
細身ですらっとして、どちらかというと中性的な美しさの五条悟に対し、夏油傑には高専時代から男の色気がある。
一見怖そうなヤンキー姿だが、物腰やわらかで常識があり、周囲への気配りも欠かさない。
いい匂いの香水をつけていそうだし、恋人になったら、誕生日などの記念日には前々からレストランを予約してサプライズプレゼントをくれそうだ。
あと、セックスが丁寧で上手そう。(妄想です)
芥見先生が「呪術廻戦で一番モテる男は?」という質問に「夏油」とお答えになったことに心底納得している。(ファンブックより)
体術や呪術の強さ、賢さ、冷静さ、見た目の良さ、すべてにおいて五条と対等で、時に張り合いながらも二人は唯一無二の親友で「俺たちは最強」だった。
天内理子の事件が起きて、悟がただ一人の最強となり、夏油の中で呪術師として生きる目的が揺らぐまでは……。
夏油傑×五条悟
映画「呪術廻戦0」に関するインタビューで脚本の瀬古浩司さんが「夏油と五条の関係は『呪術廻戦』という物語のもう一つの軸」とおっしゃっていたと思う。(出典がわかったら追記します)
「呪術廻戦0」で断片的に描かれた二人の過去が明らかになったのが、今回アニメ化された懐玉・玉折編だ。
悟にとって、夏油は初めてかつ唯一の対等な友達だった。
芥見先生が
と言われたことには驚いた。
なんとなくは感じていたが、私の予想以上に悟は夏油のことを頼っていたようだ。
高専時代の悟はまだ精神的に未熟で子供な部分があって、より内面的に成熟していた夏油に甘えていたのだと思う。
そして、夏油はたぶん五条を必要以上に甘やかしていただろう。
日常生活でも精神的にも、わがままな悟の面倒を見ていたことは想像に難くない。
傑が「いいかい、悟」「あのなあ、悟」と諭すように名前を呼ぶときの親しみと愛情を込めた声のトーンがたまらない。
そんな二人の関係が変化していく契機となったのが、天内理子を巡る事件だった。
悟が単独で任務をこなすようになり、夏油は孤独の中で、悟と対等でいられなくなった寂しさと劣等感を深め、呪術師として終わりのない任務をこなすモチベーションが揺らいでいった。
もともとの性格もあると思うが、呪術界の名家で育ち、生まれながらにして呪術師として生きていく運命だった悟と、一般家庭で育ちスカウトで呪術高専に入った傑では根本的に呪術師に対する考え方が違ったことも影響していただろう。
夏油は次第に、「弱者」である非術師のために「強者」である術師が死ぬという不条理が受け入れられなくなった。
それを決定づけたのが、美々子と菜々子が住む村での出来事だった。
結局、夏油は非呪術師を皆殺しにして呪術師だけの世界を作ることに「意味」を見出し、五条悟とは袂を分かつ。
こう言い残して悟に背を向けた時、夏油は悟が自分を殺すならそれでもいいと思っていた気がする。
彼の背中からはその覚悟を感じる。
しかし、悟はこの時、新宿の雑踏の中に消えていく夏油を殺せなかった。
五条悟にとって夏油傑は、あまりにも特別な存在だったからだ。
愛ほど歪んだ呪いはない
「呪術廻戦0」において、五条先生は
という名言を残す。
この物語の本質に迫る、本当にすごいセリフだ。
「愛が呪い」だと五条先生に教えたのは誰なのだろう。
個人的には、愛が呪いとなることが一番ありそうなシチュエーションは「親から子への愛」ではないかと思うのだが、五条先生が生い立ちに闇を抱えていた様子はない。
芥見先生は「(五条は)恋人は欲しくないのですか?」という質問に
とお答えになっている。
原作中に五条先生にかつての恋人の影はない。
だったらやはり…と私は思う。
「愛が呪い」であることを五条悟に教えたのは夏油傑に他ならない。
夏油以外の一体誰が、この完璧で無敵で美貌の最強術師に愛を教えられるだろう。
さらに五条先生は「呪術廻戦0」の中で
と言って、乙骨を呪術高専に誘う。
最強の五条悟は孤独で孤高だ。
もう、傑は隣にいない。永遠に。
だから五条先生は一人の寂しさを知っている。
硝子は「私がいたろ。何が独りだ馬鹿野郎」と言うけれど(第220話)、やはり硝子では傑のように悟の孤独を埋めることはできなかったと思う。
夏油を失って悟は五条先生になった
「五条は夏油が呪詛師になった後、荒れたりしなかったのでしょうか?」という質問に芥見先生は「あの後の方がしっかりしてそう」と答えている。(ファンブックより)
悟は呪術の核心を掴み「最強」になった時に、メンタル面でも一段強くなっただろうけれど、彼を決定的に変えたのは夏油との別れだ。
常に側にいて甘やかし、面倒を見てくれる保護者のような夏油を失った悟は、嫌でも精神的に自立せざるを得なかった。
善悪の判断も、最強の呪術師としての力を何のために使っていくかも自分で考えなくてはならなくなった。
そして悟は、一人ではだめだと気づいた。
だから、教師になって、強く聡い仲間を育てようと考えた。
悟が今の「五条先生」になったのは、夏油との別れがあったからだ。
あのままずっと夏油と一緒にいられたならば、わがままで傍若無人な悟のままだったのかもしれない。
(それはそれで可愛いし、幸せだった可能性もある……)
「僕の親友だよ。たった一人のね」
すでにファンの間で考察され尽くしたとは思うが、五条先生は夏油にとどめを刺す前に何と言ったのだろうか。
芥見先生が「0巻に書いてます」とおっしゃるからには、
ではないかと思う。
実は、映画「呪術廻戦0」の台本にはちゃんと台詞が書いてあって、中村悠一さんはマイクの前で声に出して言ったそうだ。
(録音はされていないので、まさに幻のセリフとなった)
櫻井さん(夏油)はそれを聞いて「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」と答えるのだが、五条のセリフに「グッときた」とおっしゃっていた。
とても気になるけれど、このセリフはこの先も明かされないまま、読者の想像に委ねられていた方が楽しいと思う。
大人になった「五条先生」は、夏油を自らの手で殺すことができた。
おそらく夏油にとっても本望だったろうと思う。
しかし、この時遺体の処理を硝子にさせなかったことで、羂索に夏油の体を利用され、五条が獄門疆に封印されるという大ピンチを招くことになってしまった。
もしも、夏油傑が五条悟にとってこれほど特別な存在でなかったならば、渋谷事変で羂索が夏油の姿で現れた時に五条はあんなに動揺することもなく、獄門疆に封印される隙を与えることはなかっただろう。
目の前に夏油が現れた瞬間、五条悟の脳裏を駆け巡った青い春の思い出。
それは、五条にとって永遠に忘れがたい大切なものだった。
六眼に何が映し出されようとも、魂でこれは夏油ではないと否定した五条を見て、死後もなお、夏油傑が五条悟にとっていかにかけがえのない存在であるかが痛いほどわかった。
五条先生と呪術廻戦のこれから
2023年7月現在、本誌では佳境中の佳境、超クライマックスというべき五条先生VS宿儺の壮絶なバトルが繰り広げられている。
宿儺の方はまだまだ余力がありそうで、どう考えても五条先生が不利だけれど、とにかく死なないでほしい。
生き延びて、虎杖達の青春を見守り、導いていく使命が残っているはず。
宿儺の中に沈められた伏黒恵が覚醒して、五条先生(あるいは虎杖?)の力となってくれると信じている。
私は最近ようやく伏黒が魔虚羅を呼び出す時に唱える「布瑠部由良由良(ふるべゆらゆら)」の元ネタを知った。
もとは、死者蘇生の文言だという。
宿儺は伏黒を使って、蘇生という究極の呪術を使いたいのでは?とふと思ったが、まだ真相は謎に包まれている。
月曜日(日曜深夜)は本誌にハラハラ、木曜深夜はアニメ2期にドキドキ、キュンキュンで今年の夏は大忙しだ。
こんなにも夢中になれる作品に出会えて、本当に幸せだ。
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