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AMV/ゲーム/イラストのイメージとインターネット音楽 Part1

本シリーズでは「Future Funk」や「Lo-fi hiphop」,「EDM」,「Nightcore」,「Mumble rap」などの音楽ジャンルごとで使用されるAMV/ゲーム/イラストのイメージを用いた映像表現の違いについて着目し考察していく。

AMVとは

アニメ・ミュージック・ビデオ (Anime Music Video) とは、日本のアニメ映像に曲を合成、編集したミュージック・ビデオのことである。大抵の場合、AMVと略される(以下、AMVと表記する)。(Wikipedia「アニメ・ミュージック・ビデオ」より)

Future Funk

2010年代に登場したVaporwaveの派生ジャンルと知られるFuture Funkの大まかな特徴は以下の通りである。

・80年代の日本のシティポップを中心にサンプリング

・アップテンポでノリやすいダンスミュージックのようなリミックス

Future Funkの代表的な楽曲はNight tempoが2016年にアップロードした「Takeuchi Mariya - Plastic Love (Night Tempo 100% Pure Remastered)」だろう。

この楽曲は竹内まりやの『Plastic Love』をリミックスしており、2020年現在、1億1000万再生を超えている。

AMVのイメージとして、美少女戦士セーラームーンS 第27話 「嵐のち晴れ! ほたるに捧げる友情」で土萠ほたるが写真を撮られるワンシーンが約2秒ごとにループしている。

Future Funkで使用されるAMVの特徴は以下の通りである。

・80年代〜90年代に放送されたアニメが使用されている

・基本的にほぼ無加工な数秒間のワンシーンのループ

よく使われているアニメは「美少女戦士セーラームーン」や「きまぐれオレンジロード」,「超時空要塞マクロス」,「うる星やつら」などの80〜90年代のアニメが多く、切り抜かれるシーンは日本のネオン街や宇宙をモチーフにしたシーンやキャラクターのワンカットがメインで、基本的に数秒間の同じシーンが繰り返されており、楽曲の持つ時代性とイメージがマッチしていて、Vaporwave同様にどこかノスタルジーを感じさせる。

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Youtube動画「Future Funk Mega Mix」より抜粋

参考記事:VaporwaveやFuture Funkシーンで活躍!シティー・ポップブームの火付け役Night Tempoって?
参考記事:Future Funkでソウルから世界へ。Night Tempoインタビュー


Lo-fi hiphop

2018年頃からYoutubeのストリーミング配信やSpotifyをきっかけに流行し始めているLo-fi hiphopの大まかな特徴は以下の通りである。

・Jazzy hiphopが起源とされるchillでmellowなメロディにレイドバック気味のシンプルなドラム構成

・長時間の視聴を想定しておりコンピレーション的にYoutube上で配信や投稿され、作業用BGMや環境音楽として扱われる

Lo-fi hiphopの代表的なイメージと言えば、Youtube配信の
Chilledcow 「lofi hip hop radio - beats to relax/study to」だろう。

心地よいLo-fiのビートと共に、1995年公開のアニメ映画「耳をすませば」の主人公、月島雫が自宅で勉強しているワンシーンをトレースして改変した30秒程度のループが延々と流れている。人物の構図自体はほぼ同じであるものの背景は完全にオリジナルで、原作にはないノートのページをめくる動作や窓の外を見る動作も追加されているため、もはやオマージュの域に達している。

Lo-fi hiphopで使用されるAMVは基本的に数秒〜数十秒程度のシーンを何度もループしており、使用されるイメージは日本のアニメのワンシーンや、イラストの一部をアニメーション加工したループがよく見られる。

他のジャンルに比べてループアニメーションが長くて落ち着いたイメージが多いのは、Lo-fi hiphopのジャズテイストな曲調もさることながら、楽曲のほとんどがインストゥルメンタルであり、環境音楽や作業用BGMとして長時間の視聴を目的としているという点ももちろんあるが、

主にコンピレーションとして複数の楽曲を束ねているため、イメージループが長いことで曲調やBPMが変わっても違和感を感じにくくなるという要素もあるだろう。

Lo-Fi hiphopとアニメの結びつきについては、

Viceの2018年7月14日の記事「How 'Lofi Hip Hop Radio to Relax/Study to' Became a YouTube Phenomenon」において大手音楽系Youtubeチャンネル「R y a n C e l s i u s ° S o u n d s」オーナーのRyan Celsisfnmnlがアメリカのアニメプログラム『adult swim』の影響を示唆している。

詳細については以下の記事で詳しく書かれているので参照して頂きたい。

【コラム】ローファイヒップホップ現象を再考する

Lo-fi Hip Hop(ローファイ・ヒップホップ)はどうやって拡大したか


参考記事:【コラム】ローファイヒップホップ現象を再考する
参考記事:ローファイ・ヒップホップ(Lo-fi hip hop)の深い沼にタワレコ限定コンピ『Chillhop Radio』でハマる
参考記事:Lo-fi Hip Hop(ローファイ・ヒップホップ)はどうやって拡大したか


Nightcore

ナイトコア(英: Nightcore)とは、波形編集ソフトウェアを用いて、原曲のテンポを高速化させ、場合によっては意図的にピッチも上げて作られた、リミックスを指す音楽ジャンルである[1]。2002年にノルウェーのDJチーム・ナイトコアが、学校の課題として原曲のテンポ・ピッチを上げたリミックス・トラックCDを制作したことが発祥である[2]。(Wikipediaより)

Nightcoreについては実際の動画を見た方がイメージが湧きやすいと思う。

Nightcoreの主な映像表現の特徴としては以下の通りである。

・画面の揺れとオーディオビジュアライザーの多用

・女性キャラクターの一枚絵イラストを多用

・歌詞の英語字幕がついている

まず画面の揺れとオーディオビジュアライザーが多用されているのは以下のようなダンスミュージック系の動画でもよく見られる。

ダンスミュージックではキックが特に重要視されており、オーディオビジュアライザーや画面の揺れを用いることで、視覚的にノリを体現していると言えるだろう。

Nightcoreにおいてアニメやイラストの画像が使われることについて本家のDJチームであるNightcoreも意図していなかったことを「NIGHTCORE INTERVIEW | SUPERSUPER! Magazine」にて語っているが、

Nightcore has become really heavily associated with anime artwork. Was that part of your original image?
The anime pictures are as much of a mystery as how the music got uploaded. If you see our original logos and the cover of Energized, you can see that our original image was aliens! Maybe that is what people feel fits their own image of our music.

一枚絵イラストやアニメのイメージが大半を占めるNightcoreの中でも女性キャラクターが圧倒的に多いのはNightcoreの楽曲のBPMが160〜180程度にテンポアップされており、ピッチも女性の声域までピッチアップされているからだろう。

また他のダンスミュージック系動画よりも字幕が多いのは、Nightcoreがハウスやテクノなどのジャンルよりもテンポが早く聞き取りにくい部分があるのと、基本的に原曲のリミックスベースで制作されているので歌詞を入手しやすいからだと思われる。


ちなみにNightcoreにおけるAMVはそれほど多くない。

要因として二つ挙げられるだろう。

・静止画のイメージを使用する文化が根付いている

・原曲がポピュラー音楽のケースが多く、BPMが早いため楽曲のパートごとにイメージを変える必要があるのでAMVを制作する労力がかかる

この動画では楽曲のパートや歌詞に合わせて複数のアニメをトランジションさせているオーソドックスなAMVとなっているが、クオリティ的にもそれなりの時間と労力がかかっているだろう。

AMV編集の労力について、Trap系&Lo-fi系を扱う人気のYoutubeチャンネルの一つであるIkigaiを例に説明したい。

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IkigaiではSoundCloudから主にLo-fi インストゥルメントやTrap系をメインにアーティストをピックアップして、日本のアニメのワンシーンをループさせた映像を当てはめており、画面中央にチャンネルのロゴを表示させている。

Ikigaiの中で最もポピュラーな動画は「kudasai - the girl i haven't met」である。

アニメの詳細は不明だが、chillでMellowなインストゥルメンタルに約5秒間のループアニメーションが合わさった動画で、2020年現在で3600万再生を超えている。

Ikigaiでは1週間に5〜6本の動画をあげ続けているが、AMVの内容的にはワンシーンの切り抜きだけでほとんどの動画で特殊な加工は見られない。

こちらでも実際に「違法性」というチャンネルを開設して、実験的にIkigaiの手法でAdobe Premiere Pro 2020を使って、いくつか動画を制作してみたが動画1本を書き出すまでに15分もかからなかった。

参考記事:NIGHTCORE INTERVIEW | SUPERSUPER! Magazine

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