すべては塩梅


お別れと関係性の変化

 先週、同棲中の彼氏とお別れした。積み重なる小さなすれ違い、それを繰り返しながら続いていく関係というプロセスが、二人の心を離す大きな溝になった。

大好きで大切な人。
愛している。私にとってかけがえのない存在。

お別れするのは本当に辛いし、悔やまれることだってたくさんある。あの時ああしていたら、あんなこと言わなければ、なんて。

 しかし、そんなことを言ってしても仕方のない話で。この先の具体的な動きを話し合い、お互いのボーナスが入り次第、二人とも今の家を出ることになった。そして、それまでの約三ヶ月間、仲良く過ごそうと約束した。なんだか不思議な状況なのは理解しているけれど、これが私たちの出した決断なのだから、後悔のないように過ごしたいと思っている。

 ところで彼とお別れする数日前、学生時代からの気の知れた友人と酌み交わした。
彼女は現在、五年付き合った彼とお別れしたものの交流は続いているという状況だ。
しかしその関係は付き合っていた時とは全く違ったものとなっているという。二人の関係性を気にしすぎて言いづらいというようなこともない、既に別れているので相手に期待することもない。

良い関係に落ち着けたなら良かった。だけど私たちはこう思った。

恋人として相手を認識した途端に、どうしてあんなにもすれ違いはじめるのだろう。

関係性が変わればお互いに対する見方が変わる。
その瞬間に、今まで許せなかったことが許せたり、言いづらかったことが言えたり。
それは良くも悪くも相手に対する関心がなくなった、或いは関心のベクトルが変わったことによるものだろうか。
きっと恋人に限らずなのだろうけれど。



途端に優しさが難しくなる


相手を恋人として見た瞬間に、相手のことを一人の人として尊重することが途端に困難になるような気がする。
それはきっと、好きが故に相手にこうあって欲しい、こうして欲しい、などの私的な期待があるから。それを押し付けるから、対立してしまう。改めて考えるとすごく単純だ。単純だが、これは本当にジレンマであり、簡単に解決できることではないことは、経験した人であればわかるはず。

彼が好き、優しくしたい。大切にしたい。ずっと一緒にいたい。そう思えば思うほど、彼に対する期待や理想は無意識的に増えていき、そのギャップに不満を募らせてしまう。
冷静に分析すればすごく自己中心的だし、彼からすればそんな期待や理想を押し付けられる謂れはない。

とはいえ、思いとは裏腹。期待や理想という思いが邪魔をして、大切にしたい人にほど優しさを向けるのが難しくなってしまうのだろうか。

残りの三ヶ月間

結末の決まった三ヶ月間に対して、さまざまな気持ちが湧き起こる。
ちゃんと気持ちの整理をつけられるだろうか。
もしかしたら気が変わってこのまま上手くやっていけるんじゃないかなんて期待がないわけではない。
本当に別れるのかって、現実味がなくなってしまうのが不安。
いろんな気持ちが混ざり合う。

だけど、数日経過してわかったことがひとつだけある。
確実に、以前の二人とは違う。
関係性が変化したことで、お互いを見る目が変わった。
未熟な私が、恋人だったときにできなかったこと。この期間、私は素直に彼に優しくしたいと思っている。

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